畑の生き物調査
小田原有機の里作り協議会の「畑の生き物調査」が行われた。地球博物館の館長であった、青木淳一先生の指導を戴いた。有機農業を続けてきた畑と、慣行農法の畑において、生き物の状態がどのように違うか、数値的に比較してみようという試みである。耕作していると、その違いは土の柔らかさとか、しっとり感とか、体感的には分かっているが、土壌中の生き物がどのように違うのかは、とても難しい。どのように調べればいいのかもさえも、見当が付かなかった。田んぼの生き物調査はよく行われているが、畑と成ると、有機農業の世界でも未知の分野と言ってもいいだろう。今回の小田原有機の試みは、先駆的なデーターに成ると思う。結論から書けば、「39:10」であった。このデーターを作った青木先生の指導は、まさに目からうろこの画期的な手法であった。
青木先生は見えると、挨拶もしないまま、講義室から先ず外に出て、土の採取をする必要があるというので、全員外へ出た。早速、地上部5センチほどの土壌を採取し、ツルグレン装置にセットした。ツルグレン装置は面白いもので、2ミリ以下の土壌生物を採取する装置である。虫が乾燥によって下にもぐる性質を利用して、下にセットした採取ビンに落ちるように出来ている。先生はダニの専門家。450種のダニの新種をこうして発見したのだそうだ。特にササラダニという種を研究されてきたそうだ。ササラダニの研究が何かに役立つと思ってされた訳ではないそうだが、それが環境の指標生物として、役立つことになった。指標生物といっても、綺麗な水には〇〇がいるというような指標ではなく。どんな所にでもいて、それの密度を調べる事で、その環境が判断できるという、環境アセスなどでも使える指標という意味である。そこに住んでいるササラダニの種類を調べれば、その環境がどれだけ自然に近い状態であるか分かる。
もうひとつのやりかたが、今回教えていただいた。土壌動物全体を指標とした環境評価で、ミミズやワラジムシなどに1点から5点までの点数をつけて、見つけたらその点数を足していく。こちらが環境アセスで使われることが多いいそうだ。曽我丘陵の上の方にある、有機農法で20年栽培しているキューイ畑を先ず調査する。表土や枯れ草を5メートル四方から、5箇所採取する。ゴミ袋に3分の1ぐらい。4人一組だから、20人。これを白い布の上で、ふるいにかけてゆく。落ちた虫を丹念に拾って、アルコールを入れた小さなビンに入れてゆく。同じ種類のものは1つでいい。熱中してしまい、1時間ぐらいでは足りない感じだった。次に、慣行農法のキューイ畑に移動して土壌採取。これは持ち帰って虫の採取。その5組の平均点が「39:10」であった。これは大雑把なものだし、素人がやったものだ。虫を集めるのは、専門家なら、もう少し点が高く成ると思う。それは、同じ虫なら、一つで良いというので、ムカデを1つにしていたら、指標ではムカデは3種類あった。
この40点程度は自然環境という意味では人工林の杉林などと同じようなものらしい。まさにキュウイ畑は人工の単一林だ。ところが、10というのは相当に悪い状態ではないだろうか。悪いというのは生物の多様性が失われていると言う意味になる。都会のビル街の広場ような状態らしい。畑が広がっていても、農薬が使われると言う事は、コンクリートジャングルと同じかと思うと、ちょっと哀しくなる。先生は都市公園で落ち葉を履くことが、環境破壊だといわれていた。落ち葉こそ環境を多様にする、素材である。落ち葉を掃き清め、農薬で虫を退治する、公園。これでは憩いの場とはとてもいえないだろう。ダニの方の比較は先生が持ち帰って、調べてくださるそうだ。こうした畑の生き物調査は、データーが増えてこそ意味がある。全国の畑でやってみる価値がある。
昨日の自給作業:キャベツの植え付けなど1時間 累計時間:1時間