有機農業モデルタウン計画
1 地区の立地条件(自然的条件(気象・土壌等)、社会的・経済的条件)
① 自然的条件(気象・土壌等)
・ 気象は、表日本気候区に区分され、年平均気温は、16℃前後、年間降水量は2000mm前後、日照時間は比較的多く、冬季は降雨が少なく黒潮の流れる相模湾に面しているため比較的温暖である。冬季積雪はない。
・ 土壌は、水田土壌は沖積土壌が、畑土壌は火山灰土壌が中心であり、比較的生産力は高い。
・ 小田原市は、神奈川県の西部に位置し、市全体の面積は114平方Kmのうち、4割が箱根の外輪山と曽我丘陵の山林となっているが、すくなくともその50%は以前は畑として耕作されていた。2割が酒匂川のもたらした、沖積平野であり、肥沃な農地である。市の中心部を貫流する酒匂川流域に広がる水田地帯の稲作と、箱根山麓から伊豆半島にかけての蜜柑。東部の曽我丘陵の梅を主体とした果樹に大別される
・ 富士・丹沢・箱根に源を発する酒匂川、狩川、早川の3つの川が流れ、湧水は自噴井をはじめ到る所に存在する。水資源の豊かな地域である。
② 社会的・経済的条件
・ 小田原市は、新田開発など農を中心に殖産興業の指導者として有名な二宮尊徳を輩出した土地で、北条氏の城下町として古くから栄え、神奈川県では耕地面積は2番目の広さを持つ。
・ 人口は、約20万人(平成20年現在、県内の約3%)であり、神奈川西部の中核的な都市のひとつとして、大企業の工場や研究施設や地場産業も多く、小田原港から水揚げされる新鮮な魚を利用した伝統的なかまぼこなどの食品加工産業もあり、農林水産業と各種産業による安定した就業先も多いい。
・ 交通においても新幹線、JR東海道線、小田急線、大雄山線などの電車網が整い、東名高速道路、小田原厚木道路など自動車網で首都圏や中京・関西圏へのアクセスも良好である。通勤や首都圏市場への流通面でも恵まれた環境にある。
・ 地域内に多数の都会的消費者が存在する。地場産業としての有機農業の展開が期待される条件がある。
・ 箱根・熱海と言う国際的観光と隣接し、近年郊外型レストランの展開も進んでいる。有機農産物等の差別化食材への、要望度は高い。
・ 自然農法が昭和30年代から取り組まれ、有機農業技術の蓄積が存在する。JAS認証も果樹においては最初の認定を受けている。養鶏においても、地域の食品残さを利用した発酵利用の自然養鶏が存在する。
事業の実施方針
1、地区の現状と課題
①地域の環境保全上の課題
・ 農地と住宅の混住化がすすんでいるため、化学肥料や農薬を使用する農業による、地下水や河川、大気の汚染の低減が、居住者より求められるようになっている。
・ 急傾斜地の果樹園が耕作放棄され、傾斜地の崩壊が、住居地域に危険を及ぼすことが危惧されている。
・ 農業の衰退により、北原白秋によって日本一美しい丘陵と呼ばれ、童謡「みかんの丘」が作詞された丘陵地帯。茶木茂によって荻窪用水を取材して「メダカの学校」の作詞がされた。その日本一と言われた里地里山環境の保全が危うくなってきている。
②地域の農業振興上の課題
・ この西湘地域は、かつて温州みかんの主産地であったが、輸入果樹や国内産地との競合による価格の低迷、国内消費の減退等の影響により年々産地は衰退し、農業者の高齢化、過疎化が進行するとともに、耕作地放棄地が増加している。
・ 平坦地では住宅地と農地の混在により、農地の集積による大規模農業化が難しい現状である。
・ 周辺丘陵地では急傾斜地が多く、農道の未整備地区も多く、大型農業機械の導入が困難である。
・ 少数の自然農法による化学肥料農薬を使用しない栽培方法に取り組む農家が昭和30年代から存在した。その技術が一般化せず、個々の農家のワザとして潜在化してしまっている。
③地域を活性化する上での課題
・ 地元に多くの都会的消費者がいるにもかかわらずので、地元のニーズに対する適切な供給流通体制を整備がおくれているため、課題となっている。
・ 箱根・熱海と言う国際的観光地を、隣接地域に持ち、差別化した食材の要望が高いにもかかわらず、情報の整理ができないため、流通につながっていない。
・ 専業農家の減少で遊休農地の増加、里山の荒廃が進んでいる。有機農業者の高齢化、後継者不足も現実の問題になってきている。
・ 現在小田原市には市内に約234haの遊休農地があり、内90%以上がみかん畑からの遊休農地となっているが、遊休農地は一方から見ると、日本のリベリア呼ばれるほど景観が良く。都会からの摘み取り園的転換が出来れば、大変有望な地域である。駐車場整備や、地域全体での統一的取り組みが期待されるところである。
2、有機農業を核とした地区の農業振興の方針
① 小田原市の方針である、食品残渣や剪定クズの堆肥化を共に推進して、土壌の回復に努める。
② 新規就農者への情報提供を行ってゆく。農地の紹介、有機農業技術の指導、農業者住宅の斡旋などをおこなう。
③ 地域住民に対する、宅配システムの確立。地元スーパーマーケットに於ける、有機農産物の販売コーナーの設置。学校給食への納入。JA西湘との協力してファーマーズマーケットに於ける販売。などを通して、地産地消を推進する。
④ 箱根・熱海の旅館組合、レストランのシェフの会などと商談会を行い、流通のシステムの構築を行う。
⑤ 神奈川県農業総合研究所と連携をとり、歴史ある自然農法技術を、誰でも取り組める農業技術として確立する。その為に作物ごとに、実施農家の農場を実証圃場として設定し、詳細なデーターを蓄積する。
⑥ 広く行われている、各団体の消費者啓蒙活動を、より効果が上がるように連携協力体制を作って行く。
⑦ シンポジウムやセミナーを開催し、広く地域の住民に有機農業の啓発を行う。
⑧ 県の地球博物館の協力をいただき、畑・田んぼの生き物調査をおこない。有機農業の生物多様性に対する基礎的データーを蓄積する。
⑨ ホームページを使った情報の提供を行い。消費者や新規就農者と直接連絡を取れる体制を作る。
⑩ 市民参加型の農業を、有機農業者がリードし、地域全体での農業への理解を高めてゆく。
⑪ 景観の良い遊休農地を、摘み取り園として総合的見直しを行い、必要な道路整備、駐車場整備を行う。
⑫ 県条例に基づく、美しい久野里地里山事業と、連携をとり、久野地域に有機農業の集積を行う。
昨日の自給作業:田んぼの苗床への堆肥まき。 累計時間:16時間