米が高くなった本当の理由

3番田んぼの畦の畑。
米価格が上がった。もう少し上がれば、補助金なしに米農家の経営が可能になる。こんなことを書けば、食料品の値上がりで、食事を減らさなければならない人もいるのに、怒られそうだ。しかし、お米の価格が初めて、需要と供給の関係で価格が決まりかけている。
結論から言えば、お米も普通の食料品になったと言うことになる。野菜と同じに価格は動く。高くなれば生産する人が増えるし、安くなれば生産が減少する。お米は保存が利くから、相場的な商品になる。政府が関わらなければ価格は操作される。政府は重い腰を上げて備蓄米の放出を決めた。
これからの備蓄米の放出は困難を極めるはずだ。どのぐらいの米価が適正なのかが、決まっていない。備蓄米の出し入れで、米価格を政府が決めると言うことが出来るのかどうかである。多分難しいはずだ。米相場のようなもので、流通も政府の動きを見越して、出荷調整をするはずだ。
米は安すぎた。それは政府が戦争中に作られた食管法でお米を管理してきたからだ。食管法は1995年廃止はされたが、その後の30年かかり、やっとお米の価格が自由競争で決められるところまで来た。この30年政府は農家の顔色を見たり、消費者の顔色を見たり、何の方向性のないままここまで来てしまった。
それは瑞穂の国日本の幻想との戦いだったのかもしれない。確かに食糧自給率38%の国では、どうにも不安でならない。この状況で米が足りないとなれば、米価格は当然上がる。米はまだ他の食品に比べれば安い。何しろ作況指数が100程度が続いていて、つまり冷害や高温障害でなく、米は生産量が減少している。
主食米の生産量は1967年が1425万トンあった。その後減少を続けて、半減した。2022年727万トン、2023年661万トン、2024年で669万トン。ということになる。お米を昔の半分しか食べなくなったので、消費量が減少した。
いよいよ、昨年はお米が足りなくなったのだ。その理由には問題がある。考えてみる。外食が増えたかもしれない。海外からの観光客の増加もわずかは影響しているだろう。丼物がふえた。弁当やおにぎりやお寿司を購入することが多くなった。中食の増加で、ご飯のたくさん入った弁当などを買う方がまだ安いと言うことがある。
スーパーに遅く行って、値引きされた弁当を買って、2食分にするという話を聞いた。確かにスーパーや弁当屋の弁当は500円で、私ならば2食分の量がある。最近の弁当屋のお米は半値のアメリカからの輸入米を混ぜて使うという話である。食費が上がり、米食が復活しているかもしれない。
食料品の全体の値上がりで、高くなったとはいえまだ安いお米の需要が増えたと言うことが考えられる。日本食はブームである。インバウンド丼やお寿司などという、ご飯ものを沢山食べてくれる。この消費も外食産業の米の購入に、いくらかは影響している気はする。
外食産業は稲作農業法人と契約栽培を増やすだろう。直接地方の稲作農家から米の集荷をする人が現われていいる。トラックで小田原あたりでも農家に回ってくるという話を聞く。こうなると売り惜しむ農家も出てくる。お米が相場商品になりかかっていると思われる。
農協などの集荷業者の集荷量が21万トン減少したから、政府は21万トンを来月半ばに放出することにしたという。言い方が素人いやお役人様のようだ。相手は相場師と考えなければ。価格が安定するまで放出を続ける。と言えばいいのだ。量など決めたとしても黙っていた方が価格が落ち着く。
なぜここまでお米の生産量が減ったのかと言えば、飼料米に対して政府が奨励し補助金を入れているからだ。飼料米は適当に作れる。石垣でもずいぶんひどい作り方をしている田んぼが飼料米である。作りぱなしでほったらかしだから、補助金が出なかったなど言われた田んぼもあった。
飼料米への転換は減反政策の延長のようなものである。いざというときにまた主食米に戻れるという所が狙いだったわけだ。しかし、田んぼの中に草だらけの手抜き田んぼが交ざってくると言うのでは、あまり良き影響ではない。むしろ、大豆小麦の輪作奨励の方がいい。
米、小麦、大豆、空けて、また米と回せるのではないか。水稲-麦-大豆-麦の2年4作体系 というのもある。うまく回して2年に一回水田化して作れば、土壌にも悪くないし、除草剤の使用量も減らせる。しかし、これには高い農業技術が必要になる。捨て作りというわけにはいかない。
大規模農家に輪作技術を習得してもらい、奨励してゆくのが、望ましい農業政策ではないだろうか。大規模農家は機械化が出来る。大型自動運転の機械に補助金を充てることも必要だろう。輪作の難しい技術体系も企業的農家ならば、可能である。農薬も化学肥料もかなり節約できるから、価格高騰への耐久力も上がる。
大型農家であれば、米の価格変動にも直売方式の契約販売で、安定した価格で販売が出来る。飲食店などの購入側にもメリットが出てくる。これからお米は消費量との関係で価格変動してくる。政府の統制する商品ではなくなった。それは野菜などと同じに、やっとなったということにすぎな
い。
い。
飼料米の補助金を大幅に減らした方がいい。小さな農家が飼料米を作り、補助金を狙う。こういう形で存続してゆくことは望ましくない。稲作農家は地域全体で動いている。飼料米をやるということは、主食米を作る全体の稲作農家への影響も出てくる気がする。
米価格の高騰は、農林水産省の米価格に対する考えの甘さが一番の原因である。米価格の値上がりは小さな農家を救うと政府が考えたに違いない。小さな農家が農協の一番の構成員である。農協の圧力に政府が負けたと言うこともある。
備蓄米の適切な放出で、価格を安定させなければならない。昨年夏お米が急騰を始めたときにすぐに放出すれば、緩やかな上昇で収まっていたはずだ。そして今年の作付けが増えるように、飼料米の補助金をすぐにでも減らさなければならなかったのだ。
同時に輪作農業を企業的農家に奨励していくことだ。正しい農業政策をしていれば、今回のような異常な高騰はあり得ない。政府の主食に対する考えが足りなかったのだ。適正な米価格でなければならないことも考える必要がある。正しい米価格は企業的農家が補助金なしに、世界と対等に経営できる価格である。
その意味では小さな農家の生き残るための米価格は考えない方がいい。そして小さな農家の農地が大規模企業農家に、自然な形で移行してゆくことを進めなければならない。そして小さな農家は特殊解を求めるほかない。棚田米とか、有機米とか、自然米とか、求める消費者を自ら掘り起こす農業である。
農協は大規模農家にとっては不要な組織になる。農協は小さな農家の特殊解を手助けしてゆく組織に生まれ変わる必要がある。機械の貸し出しや、ファーマーズマーケットの経営。新規就農者の支援と指導。純粋に農業者を支援する協同組合になるべきだ。
日本のエンゲル係数はこのところぐんぐん下がっている。戦後すぐは66.4%だった。お米を沢山食べた時代だ。1970年代には30%程度だった。その後改善して23%ぐらいになった。ところが2024年には28.3%にまた上昇している。韓国はなんと17%。
日本がしみじみ中堅国になったと実感できる。エンゲル係数の高い理由を異常気象のためなどと説明する向きもあるが、とんでもない。長かった地獄のアベ政権の間違った農業政策の結果である。企業農業優先の政策の中、主食農業をどうするかという政策がなかったのだ。