不法移民の強制送還

   



 アメリカでは2023年27万人の不法移民が強制送還されたそうだ。そしてトランプ氏は大統領になり、軍隊を動員して数百万人を強制送還するとしている。不法移民排斥がトランプが支持された一因である。世界全体では何億人もの移民が、海外生活をしているという。

 主たる理由は2つ。国内が内戦状態で政情不安になった国。世界に広がって行く経済格差が起していると言える。資本主義は終末期に突入し、格差社会を作り出している。格差は国家間の格差でもあり、貧困国からの逃げ出す人々が不法移民になる。

 「世界の上位1%の超富裕層の資産は2021年、世界全体の個人資産の37.8%を占め、下位50%の資産は全体の2%にとどまった。」「アメリカでは移民の影響で労働者の取り分は3%減少する一方、企業の取り分は3%増加している。」ーーー日経新聞。

 労働者の間では、不法移民や外国人労働者の影響は低所得者の打撃が大きい反面、高所得者はメリットを享受する。 日本が外国人労働者を入れる政策に転換したのは、企業の経営のためである。外国人労働者で労働不足を補う考えは、一般労働者にはマイナスが大きい。トランプが登場した理由の一つだ。

 減少してゆく労働者数で効率のよい仕事をしてゆくように、企業のあり方を転換してゆくほかない。あるいは仕事を縮小する。バス会社が運転手不足で路線を減らすというのはよく聞く話だ。この先さらに労働人口の減少が進むことは決まっている。

 外国人労働者で補うのではなく、企業の人減らし改善を行うべきなのだ。外国人労働者で労働者不足を補うことが出来なければ、企業活動は停止するか、縮小するしかない。石垣島でも設備が出来たが、働く人が十分に集められないで、開業できないホテルがあると新聞に出ていた。

 牧場などでは外国人労働者が雇用されている。いつも絵をかきに行く場所で草刈りをしていたので、話を聞いたことがある。ベトナムの地方から来たので、都会での仕事は合わないので、石垣島なら田舎と同じだと思い来た。自分には合っているとニコニコして働いていた。

 農業などの肉体労働や、3K職場はやりたがない日本人である。企業的な職場では社会的な問題があっても、外国人労働者を受け入れる事を進めている。これは社会に差別の原因を作り、ゆがみを増長していることになる。草刈りロボットのようなものを開発するか、AIに依存するほかないのだろう。

 世界に広がっている外国人排除の空気は、実にいやなものである。50年旧植民地からの旧植民地からの外国人労働者が多かったが、ひどい場面をよく目撃した。これが帝国主義の後始末かと思った。しかしアメリカでもヨーロッパでも、もう受け入れの限界を超えたという人たちが多数派になっている。

 日本という国は普通の暮らしのゆがみが年々広がっている。それは世界中がそうなのだと想像できる。これは何度でも書くことだが、資本主義の終末的状況から来ている。拝金主議と能力主義の蔓延である。それが貧困層を生み出している。この2つが克服されなければ、人間の普通の暮らしが戻ることはない。外国人労働者の問題ではないのだ。

 肉体労働が知能労働に較べて差別されている。何故農業を、あるいは一次産業を避ける風潮が生まれたのだろうか。農業で働くことは誰にでも楽しいはずだ。問題は農業では食べていけないことだ。肉体労働を低賃金にしていることが悪い社会を作っている。知能労働を行う経営者の存在だろう。自らは肉体労働をせず、資本を動かすことで対価を得る。

 資本家が肉体労働者を能力差別している結果経済格差は生まれたものだ。自らの肉体で働くことが、人間が生きる上で健全であり、健康である。そうした農業者が作った食料を、適正な価格で買おうとしないのはなぜなのだろう。こうして日本の農業は取り返しのつかない結果が、すでに起こっている。

 産業革命で急激に人間の数が増加した。産業革命の恩恵で、人間の暮らしは格段に豊かになった。巨大都市が出現し、一次産業で暮らす人達が地方の暮らしを捨てて、都市労働者になって行く。その流れが世界中で起きて、人口集中がさらに効率の良い生産を実現させてきた。

 資産を持たない都市移住者は、労働力になり資本家に支配される。その差別構造を固定化するために、資本家は知能労働者を別枠にして上層階層に受け入れた。知能労働者が肉体労働者を支配し、監督する構造を作り出した。それは教育に特化され、かなり堅固な学歴社会が世界中に出来上がった。

 能力主義の階級構造は、学歴や職種によって階層化された社会を作り出した。当然外国人労働者はその最下層に位置づけられ、日本では社会構造から受け入れ拒否をされた前提で、導入されている。日本人最下層のさらに下の階層を作り出した。これは地獄社会ではないか。

 自国民だけではなく、海外からの労働力を下層階級として利用することで、世界での競争に勝てることになる。その筆頭がアメリカだったのだろう。不法移民という身分のない、最下層を作り出した。ヒスパニック系が急速に増加して、すでに白人系が半分を割るところまで来ている。

 
アメリカの経済成長の要因は海外からの労働力の流入にあった。農業分野でも、不法移民労働によってアメリカの優位が確立された。農業分野では労働力が季節によって偏るために、不法移民や季節労働者ビザという形で受け入れることで、優位性が生まれた。

 親戚の人にも、サクラメントの日本人移民のかたへ花嫁で行った人が居る。昭和35年一度日本に戻ってきた。メリーさんと言われた娘さんは優秀な方でハワイ大学の教授になられた。戦時中強制収容所に入ったが、戻ったら近所の友人のアメリカ人が、農場を守ってくれていた。アメリカ人にも良い人は居ると話していた。

 その方のことを知ってから、移民と言うことをよく考えるようになった。そして日本の移民は実は「棄民」だったとのだと言うことを知った。日本政府は人口増加に対応する国内政策を放棄して、移民という棄民政策を始めたのだ。それは植民地の獲得から、満州国の建国という、日本の歴史に汚点を残すことになった。

 日本には外国人労働者が増加している。企業経営のためである。外国人労働者でなければやれない、労働が増えてきている。夏の炎天下の石垣島で、一日中草刈りが出来るだろうか。ベトナムから来た若い人が、そのような草刈り仕事をしてくれている。彼らは暑さに耐える体力がある。

 たぶんアメリカでも、農場経営者は自分は肉体労働をしないで、経営をしているのだろう。そして、海外から来る季節労働者に働いて貰っているのではないだろうか。アメリカ農業の26%は海外労働者だという。アメリカから、移民の人達がいなくなってアメリカという国は維持できるのだろうか。アメリカの労働団体のなかには移民の強制送還に反対しているところもある。

 日本は増えたとは言えまだ外国人労働者の数の少ない、日本ですら外国人労働者が帰ってしまえば成り立たない分野は数多くあるはずだ。それでも今の外国人労働者の受け入れの仕組みは、日本の社会を分断してゆくだろう。まず日本人が移民を受け入れるのかどうかを十分に議論しなければならない。

 世界では多くの国が移民への対応で国が割れている。それが極右組織を生み出す要因になっている。日本の右翼は外国人労働者排斥は主張していないようだが、移民ということになれば、話は違ってくるだろう。政府が検討なしに、移民ではなく受け入れた労働者はどういうことになるのだろうか。

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