幼穂形成期からの水管理

   

 

冬水田んぼが一番生育が遅れている。

自然農法の稲作では一般に中干はやらない。慣行農法とは生育が違うので中干は出来れば止めた方が良い。稲作の情報としては、慣行農法の中干をやる理由が、あれこれ書かれているので混乱をする。しかし、中干をやるかやらないかはイネが倒れるかどうかだけの問題である。自然農法では倒れないのであれば、中干はやらない方がいい。田植え以降8センチ以上の水を張り続ける。深くできるのであれば、20センチの深水でも良い。水が深いと分げつをしないという人もいるが、私の観察記録では深さと分げつ数とは関係がない。水圧で分げつが減るというのは、想像の意見だと思う。水深の深い方が、太い茎の株になることは確かだ。そして、背丈も高くなるのも確実である。今年の欠ノ上田んぼの生育調査ではサトジマンで幼穂形成期7月21日で70㎝~90㎝になっている。分げつ数で19本から25本。倒れる瀬戸際に来ている。幼穂形成期以降は田んぼの土を固めなければならない。但しイネとしてはこの時期は水を必要とするので、田んぼのひび割れるほどの干しはやらないで、何とか土壌を固める方向に進めたい。

11番田んぼ。冬季湛水の田んぼ。走り穂が出始めている。

間断灌水である。間断灌水とは水を入れたり止めたりすることだ。川の河岸であれば、徐々に水が減少してゆく合図である。自然のイネは大河の河岸に生育していた。大河は季節で水位が変化して、水が減少してくる時期になると稲は実を付けた。水の減少がイネの生理にとっては穂を付けなければならない合図になる。それまでの深水をここで徐々に上下に変化をさせて、時には水のない日も作る。間断灌水は雨や台風を予想しながらの水のかけ引きになる。徐々に水を辛くしてゆき、最後は水を切る。イネの実り方や、倒れ方を見ながら、の臨機応変の判断になる。田んぼによっては水がなかなか乾かないところもある。欠ノ上田んぼで言えば、4番。10番。11番。水が地下から染み出てくる。こうしたところがあれば、いくら乾かしても、簡単には乾かない。このあたりも配慮しながらの管理をしなければならない。10番については中干をすでに行った。乾かしやすい田んぼなので、すでに乾かした。今日あたりから、11番も乾かしてみたい。4番については乾かすことができない田んぼだ。5番には4番からしか水が行かない為である。田んぼはさまざまであるから、状況に応じた水管理が必要になる。

種取り田んぼの10番。ここだけ3日間の中干しを入れた。

上から写すと、水がないことがわかる。左が2本植。右が1本植。ほぼ変わらなくなっている。

幼穂形成期の判断は、株を切って確認をすることになっているが、私は中央の一番大きな茎の根元が膨らんだ時を幼穂形成期と判断している。これから、実る稲の穂を切ることは私には可哀想でできない。欠ノ上田んぼでは1本植と2本植の苗を28センチ角植えにしている。この場合、幼穂形成期は中央の一番背の高い茎の根元が、扁平から丸く円柱になった時期と決めている。この時期まだ新しい最後の分げつが出来てくる。22本だった分げつが稲刈りの頃には24本の穂の数になる。その最後の分げつにも穂を実らせたい。その為にはすでに中央の株の根元にはそれなりの1センチほどの幼保が出来て、茎を膨らませ始めている。自然栽培のイネの姿はかなり、成育にバラツキがあるという言ことになる。

中央の9番田んぼは全て1本植であるが、他の田んぼと変わらない生育である。色が黄色い田んぼは岡本さんの田んぼ。一番奥の色の濃いのが峰の雪糯。色がかなり濃い。イネは品種によってこれほど色が違う。だから葉色で穂肥を一般的判断をすることは不可能だ。

中央の株の根元が円柱になったならば、穂肥を与える。こう決めておいた方がまだわかりやすい。13,5葉期ほどの頃だ。だから、イネには油性ペンで葉の数を書いておく。おおよそ、種まき13週目で13葉期になるはずだ。天候によって、4,5日外れるだろう。穂肥は自然農法でも与えた方が良い。お米一粒まで十分に実らせるためには穂肥が必要である。一斉に穂が揃わないのが自然栽培だから、最後まで十分に実らせる栽培が必要になる。穂肥はソバカスで与える。1反あたり、90キロくらいである。窒素分で言えば、1反2キロと言われているが、1キロぐらいでいい。ぼかし肥を与えても良い。この時期の田んぼ土壌は腐植質の分解が最高期になり、土壌からの窒素の供給が高まっている。微生物の活動も活発なのだろう。そこにソバカスが投入されれば、一気に分解されることになる。1週間の間に効果が期待できる。

イネは最後の仕上げである。どこまで倒さず、収穫期を迎えられるか。今後の水管理にかかっている。

 

 

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