アベ内閣は何故支持されるのか。
特定秘密保護法、安保関連法、共謀罪などの相次ぐ強行採決で立法府が機能不全に陥りました。公文書の隠ぺい・改ざんでは行政府が致命的に劣化していることが暴露された。森友・加計問題では、権力者周辺が国富を私物化しているという前近代的な縁故政治の醜態をさらしている。外交でも朝鮮半島問題では完全に「蚊帳の外」に置かれ、卑屈なまでのトランプ大統領への服従にもかかわらず、基地問題でも、貿易問題でも、何一つ譲歩を引き出すことができなかった。ーー属国という現実から
アベ晋三氏の嘘が、バレた。首相案件とはよくできた官僚用語だ。大臣案件とか、議員案件というのもあるのだろうか。自民党は支持率を下げない。こんな事態がなぜ起きているのか。アベ内閣がうんぬんよりも、日本人というものがすでに危機的な状況に至っていると考えるほかない。先日テレビ番組で新聞は自分が権力であることを自覚しろと、叫んでいる女性自民党議員がいた。権力というものが何か、理解できない人間が国会議員をしている。という事は、たぶんそういう有権者も多いいと考えなければならない。権力というのは、法律や条例を作り、管理者であるという事だ。法律を行使することを権力という。だから議員は権力者である。また、行政職員も権力者である。裁判官も、検察も、警察も権力者である。だから、権力は憲法に従うように決められている。人に影響があるからと言って、テレビは権力だという事は全くない。権力がテレビを利用するという事はあるが、報道機関というものは、影響力はあるとしても、電通のような企業と別段変わりはない。
表に出るか、裏に存在するかは別にして、電通の方が朝日新聞よりも、国民世論に影響を与えているだろう。このじんわりと日本人を変えた力こそ、アベ内閣の鵺的存在である。これは権力が企業を利用している姿であり、電通が権力という訳ではない。アベ政権の鵺は明治日本の復活を願う勢力のように見えるが、どうもそうではなく、自信を失いつつある日本人の本音がアベ政権にしがみ付くという事のように見えてきた。アベ政権が作り出している、あたかも良き時代であったかとする明治日本帝国像の復権である。現状の日本という国の置かれた状況は国力にふさわしいところに落ち着こうとしていると考えるべきだ。ところが、戦後の高度成長からバブルまでの成功体験の感覚を持て余す日本人の感覚は、後れを取り始めたと焦りを感じているのではないか。私の子供のころまでの日本は明らかに、欧米先進国より遅れをとる、追い上げようとする後進国という意識が残っていた。フランスで暮らした、45年前はフランス人の意識の中には明らかに後進国日本という意識が存在していた。ところがその後日本が経済成長を重ね、まるで欧米先進国を追い抜いたかのような意識を持ってしまった。
この日本人の焦りが、未来の見えない不安感が、アベ政権のウソがバレて追い込まれる姿に重ね合され、支持率が上がるという奇妙なことが起こり始めたのではないか。野党を支持するという事は、現政権への批判である。野党の次の政治の在り方に期待するというより、現政権の腐敗や政策への批判が野党支持になる。だから野党に政権構想がないから、支持に値しないという批判は当たらない。当たらないのだが、有権者は幻想であるとしても、美しい日本像。瑞穂の国日本というような、言葉に縋りついているのだ。欧米のような政治状況であれば、野党も与党も同じ土俵の上に立ち、その政策の違いで選択をするという事になる。ところが日本では、憲法に対する立ち位置が野党と与党を分けている。与党は憲法を変えて軍隊が普通にある国にしたいという勢力である。野党は平和憲法を大切にして、軍事力ではない平和外交を目指そうという勢力である。この違いは国の運営にとって決定的な違いである。「高度プロフェッショナル制度」の強行採決云々などという事は、もう枝葉末節のようなことになる。
これが安倍内閣の支持率の落ちない原因のようだ。アベ内閣は確かにウソで塗り固められている。どうも特権階級政府のようだ。そうであるとしても、野党の主張する軍隊をやめるというのでは、さすがに困るのではないか。この不安が、未来像の喪失とともに有権者の中に湧き上がってくる。いよいよ安倍政権が危ういとなると、逆バネが働くのではないだろうか。とすると、野党勢力は平和国家というものが、どういうものであるか。武力を用いない平和外交というものはどういうものであるか。これこそ美しい日本である。瑞穂の国日本の本当の平和主義を示す必要がある。平和国家というものが一番安心できるやり方であるということを、具体性のある形を示し、主張を展開しなければならない。平和主義の安全保障政策を正面から取り組まなければならない。平和国家の具体像の構築を野党が怠ってはならない。この点が多くの日本人が破綻しかかったアベ政権に縋りつこうとする原因になっている。