アベ木偶人形一座

   

一座の座長が首相役だ。舞台正面に仁王立ちになる。ーーー日本の領土、領海、領空を守り抜く決意を強調した上で、最前線で「極度の緊張感に耐えながら、強い責任感と誇りを持って任務を全うする」海上保安官や警察官、自衛隊員に「今この場所から、心からの敬意を表そう」と、議場の日当で集めた議員役に拍手するよう促したのである。首相の呼びかけに応じたのだろう。議員役が一斉に立ち上がって拍手し続け、衆議院議長役が着席を促し、ようやく収まった格好である。演目は静かなヒットラー登場の一段である。

現今アベ政権一座は巷で評判の木偶人形一座である。北方領土返還を次の選挙の、演目に掲げてビラを配っている。どんな脚本家によって筋書きが書かれているのだろうか。黒子の人形遣いが恐ろしい。演目が恥げもないのは、頭が桐の空洞で作られているからで、木偶人形はただ振り回されて踊るだけだから大胆だ。そして、北朝鮮と同じで、今や観客は総立ちの投げ銭である。日本の困るのは、観客が自ら演目を盛り上げているところだ。最近のフィリピンではアメリカへの罵倒を続けることで、90%の支持という人気者になった大統領がいる。世界の顰蹙を買う事で国民的な人気者になっているのがロシア・プーチン大統領である。アメリカのトランプ大統領候補は合法的節税の何が悪いのだと息まいている。世界の空気は変わり始めている。過剰演出のリーダーが選挙で支持を集め始めている。理知的で冷静な指導者は影を潜め始めた。

沖縄の基地問題では、アメリカが自国の利益を譲らない姿勢を強めている。アベ政権はロシアとの経済協力で対抗しようとして、危険な外交を始めた。戦争で獲得した便利な基地を、自由に使うのは当然のことだとアメリカは考えている。しかも、守ってやるのだから、日本が費用も全額持てという事だ。それが嫌なら日本も核武装して、勝手にやればいいという事だ。政府は自衛隊基地を沖縄に各地に広げてゆき、アメリカが無償で自由に共同利用できるようにしようとしている。これが沖縄の米軍基地軽減の実態だ。日本政府は中国との緊張を高めることで、国内をまとめようという思惑を持っている。中国も同様に緊張を高めて国内の不満を抑えている。日本を叩けば中国政府への支持は広がる。アベ政権は国内の打開できない財政破綻問題、経済の行き詰まりから眼を逸らせようとしている。第3の矢の立ち消えである。TTPに経済界は期待をしているが、これによって日本は日本でなくなることだろう。

アベ一座が興行が大入り続きなのは、観客の質の低下である。観客はいつの時代も迎合的なものなのかもしれない。筋書きの単純な仇討ち劇やら、お涙頂戴の田舎芝居で大受けしてしまう。領土が帰れば、何でも了解というような観客を前提で芝居台本が作られるのでは、領土返還の結果さえあれば喝さいを浴びるという事になる。その背景にある日本の負担増や、国際的な立場には一考だにしない。アメリカを罵倒すれば、湧き上がる北朝鮮とフィリピンと同じことだ。自らの力で作り出す社会に希望を見出せないからだ。日本でも中国や朝鮮を罵倒演目を売りにする一座が興行している。竹島や尖閣の領土欲が背景のお家騒動のあらすじである。日本という国が誇りを持てるためには、日本人の良質な魂である。瑞穂の国の民として、勤勉に生きてきた姿である。アベ一座の誘導から、何とか目を覚ましてもらいたい。領土など人間に比べれば大したものではない。大切なことは日本人の健全な姿である。

 

 - Peace Cafe