稲の葉色による診断

   

自然農法では土壌の窒素分が少なくとも、慣行農法の稲より葉色は濃くなる。その理由を考えてみる。自然農法を続けている田んぼの土壌分析をすると、慣行農法の田んぼの半分くらいしか窒素分はない事が多いい。それが普通のことである。にもかかわらずなぜか稲の葉色は濃くなる。理由は綜合的なもので単純ではないのだろうが、自然農法の稲の根の吸収能力が大きいと見ることが一番ではないか。何故吸収力が違うかと言えば、微生物が土壌に豊かに存在するからである。土壌からの吸収には根圏微生物のかかわりが大きい。さらに田んぼでは水から様々な栄養分が供給される。田んぼ自体が窒素分を生産している場になっている。田んぼの中では草や藻や浮草が大量に発生する。そして様々生きものが生活をしてる。生まれては死んで分解される生物の循環的生産が起きている。自然農法の田んぼはいわば堆肥場のようになる。栄養分を作り続けながら、稲を育てている状態なのではなかろうか。

藻が生えればその藻は光合成をして成長を続ける。そしてそれは枯れて分解されたり、微生物の餌になったりしながら、土に戻る。光を受け取り養分を土に返す。田んぼでは生きものの循環が起きる。水生昆虫やオタマジャクシが大量に現れる。その餌となるミジンコや赤虫がいるからだ。さらに小さな微生物は莫大に存在する。それが大きな生産力になり、土壌分析的は半分程度の窒素分しかないにもかかわらず、田んぼが生きものの住処となり、窒素が供給され続けることになる。その為に、葉色は慣行農法よりも濃いことになる。この田んぼの世界を想像し、稲の生育を考える必要がある。この世界が分かれば、どの時期に何をどう加えればよいのかが見えてくる。葉色の緑が濃いだけではなく、稲の背丈も2割は必ず高い。一般の90㎝のサトジマンや喜寿糯が自然栽培では110㎝にはなる。それが普通である。茎の直径は2回りは太い。何故植物体が大きくなるのかと言えば、根の量を含めてすべてが活性化されているからだ。だから自然農法の方が収量も多くなるのが普通だ。25年間の稲作経験でそれを実感している。周囲の農家より収量が少なかった田んぼはここ10年一回も無い。

ただし、慣行農法より優れた農法だと主張はしない。手間暇がかかる。さらに自然を観察する力量が必要となる。自然の変化に対応した技術力が問われることになる。確かに国際競争力はない。しかし、自給的に行うと限定するなら、慣行農法より優れている事は確かだ。自給なら300キロのお米でいいだろう。5畝の田んぼでいい事になる。これなら手植え苗を作る方が良い。田植え機を購入し、年一回の為に整備をする。置いておくのも邪魔になる。こうなると手植えをする手間を考えて手植えの方が合理性があることになる。農の会自給の田んぼには田植え機はないが、2ヘクタール以上を手植えで行っている。もう一つ苗を何故作るかと言えば、5葉期の大苗を植えたいからである。草対策である。除草剤を使えば、田んぼの土壌の微生物は偏り貧弱なものになる。除草剤を使わないで草対策をするには、大苗で植えて深水で管理することが大切である。これは稲の生理にもあっている。

自然農法の稲は葉の色が濃く、背丈が高く、茎が太く、開帳型で、穂が大きく重い。そして葉色は、稲刈りの寸前まで止葉は緑色を保つ。出穂期以降徐々に緑の濃さは薄れては行くが、穂揃い後1か月は葉に緑が残っている。緑を保つているという事は、葉は光合成を続け、根が活動を続けているという事になる。これが穂を最後まで育てることに繋がる。以上のように、自然農法での稲作は葉色の推移は慣行農法とはかなり違う。その為に判断を誤らないようにしなければならない。一般的な葉色の判断に従うと、大きな誤りを犯すことになる。穂肥を与えるべきかどうかも、葉色の濃さだけでは判断ができない。田んぼの土壌や水が良い状態になっていれば、基本的には穂肥を与えなくとも、窒素の供給が行われる。大きな稲になるために、倒伏は起こりやすい。田んぼの土壌を固めることが大切になる。

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