規制緩和の現実
経済成長の鍵として言われるものに、規制緩和というものがあると、政府は言っている。私にはこれが一体どうい意味かが分からない。政府自身が必要だと考えて作った規則を、緩和すると経済が活性化する。これは具体的にはどういうことを意味するのだろう。例えば今言われているのが薬のネット販売である。薬には、1類、2類、3類とあって、現在建前として3類だけがネット販売の対象ということだ。ところが、最高裁判決でどの市販薬もネット販売してもかまわないという判決が出た。そこで政府は後追いで、規制を緩和するということだ。そもそも1類の薬というものは、薬剤師が口頭で服用法などを説明をしなければ、販売できないというものらしい。だから、ネットでの販売が制限されていた。しかし、現実にはそんな説明を聞いて薬局で購入したなどという人は珍しいらしい。ネットでも注意は出来るということになったらしい。ところがこの薬の規制解除を、経済対策の目玉にしようというのが、アベノミクスらしい。
薬がネットで販売可能という規制緩和で、何故経済が活性化するのかが分からない。買いやすくなるから薬が売れるというのはわかるが、だからと言って、1回2錠を3錠にするというものではない。いらない薬を買うということはあってはならない。すでにネット販売が行われていた、3類の健康薬品というようなものなら、確かに買いやすければ多く販売できるだろうが、すでに行われていたことだ。同じような規制緩和というものに、電力の自由化ということがある。誰でもどこでも発電会社を設立して、販売できるという仕組みであれば、電力に競争が起きて、合理化されるということはわかる。あるいは自然エネルギーの電力会社であるということを売りにして、販売を伸ばすということもあるかもしれない。しかし、だからと言って、電力を余計に使うようになるのだろうか。あるいは、電力を余計使うことは良いことなのだろうか。これも景気対策と規制緩和の関係が理解しにくい。
さらに、規制と言えば、原子力規制委員会である。この規制委員会が原子力発電をあれこれ規制するので、電力価格が高くなる。規制緩和をしてくれれば、電気が安くなるのではないか。そうすれば景気対策になる。これはわかるが、危険な規制緩和である。成功例なのか、世界の情勢からそうならざる得なかったのかが、電話会社である。昔は電電公社という政府直轄の組織が通信、電話事業を行っていた。しかし、通信も電話も事業そのものがIT化して様変わりする中で、誰でも事業を行えるようになった。似たようなものが、郵政公社の郵便事業や、専売公社のたばこや塩がある。こうして見ると、政府が直轄でやっていたことを、民間にも出来るようにするのが規制緩和なのか。そんなわけがない。24時間コンビニの銀行窓口設置など便利である。大型店舗の規制を解除しようと、と言われるうちに、通販が出来て山の中でも届けてくれるようになった。これも規制緩和の経済効果とは言えない。
農業分野の規制と言えば農地の所有は、農業者に限定している。これも規制緩和で企業が所有できるようにしたいとしているが、農協が反対に回るのが怖いのか、一向具体化できない。具体化したところで、所有した企業がどこまで耕作の責任を持つかである。どちらかと言えば、土地の先行投資として、農地所有はしたいと考える企業はあるだろう。これで農地価格が上がる可能性はある。小田原でも、眺めの良いミカン耕作地を、企業が持てるようにしたら、ずいぶん値上がりするだろう。それはあくまでミカンをやるからではなく、将来自由な利用が可能になるかもしれにという期待からである。農地の企業所有が農業の為になる規制緩和とは到底思えない。企業が農業をやりたいだけなら、借りてやればいいのだ。市街化調整区域の建築規制も緩和すれば、建築が盛んになって景気がよくなるなど、考えるのかもしれない。お金のためなら、国土の乱開発などやりたい放題やるべきだ。どうも、景気対策としての規制緩和は自由競争というより、制御放棄になりそうである。
昨日の自給作業:2時間大豆の土中緑化 田んぼの草刈り、草取り1時間 累計時間:3時間