田んぼの水管理
田植えが終われば、水管理である。「稲は水で作る。」と昔からいうようです。確かに、稲は水から直接の肥料吸収をしているようだ。特に穂ばらみ期以降の玄米への吸収は水根からの吸収が大切になる。この事を基本にして、稲の水管理を考えている。特に私がやっている、舟原も、欠ノ上も、棚田で、順番に水を回してゆく管理である。舟原田んぼは単純に、上段の田んぼの排水が、中段に行き、さらに下段に落ちる。そして下段では、基本排水をしない。上段の入水口には溜池を作り、そこで水を迂回させながら、水温の上昇をはかる。今年の場合は、溜池でセシュウムの沈殿吸着も狙う。溜池には、水が迂回するように、もみ殻をタマネギネットに入れて、並べてある。水路と考えれば、30メートルあったが、これは他の人に直されてしまった。ゆっくり流れながら田んぼに入ることになる。この溜池には水草があった方がいい。やはり、セシュームの吸着を水草にさせる。家に、クワいがあるから、クワイを植えておくのも良いかと思う。稲を植えることになった。
溜池の効果は子ノガミ田んぼでは、強く表れたと思われる。そこで、欠ノ上田んぼでも溜池を2か所設けている。田んぼでは、田植え直後から、8センチ以上の深水を行う。これはヒエ対策である。8センチを超えた水位があれば、ヒエは発芽しない。しかし、逆に深水はコナギを増やす結果になることがある。想像では、酸素不足成り、コナギの発芽を促進するのかもしれないと考えている。そこで、代かきを軽く行う事と、流し水管理を基本としてきた。つまり、これは縦にも横にも水が動いていて、酸素が補充されることで発芽を抑えようという想定である。余り成功はしていないが、淀んだ所にコナギは出やすい。同時に深水で狙うのは、トロトロ層の形成である。トロトロ層がどうすれば、上手く厚く、形成できるのかはまだよく分からないが、生き物の増加が、重要なことは確かである。その為には、常に水が十分にあるということは悪くないはずである。又水温が高くなるという事も、効果がある。
最後の水尻で排水をしないという事を、今年の水管理にしたい。これも水の総使用量が半減すれば、セシュームの吸着も半減するという考えである。干しを強くするという事を今年は行う。今まで干しは出来る限りしない方針であった。水を切ることも稲刈りの1週前位であった。稲刈りは遅い方なので、随分長いこと水を入れていたことになる。今年干しを強くする狙いは、上根を張らさないという考えである。上値が、玄米を作ると思われる。だから、今までは上根がトロトロ層の中に、膨大な量広がることが狙いであった。しかし、この上根は水根である。水から直性養分を集めて、玄米に移行させる。これがセシュウームの吸着を行う。そこで、干しを早めにきつく行うことで、トロトロ層を固めてしまい、水根をはびこらせない栽培にする。良いお米を作る技術から言えば、逆行しているようなものだが、今年はすべて、セシュームの削減を目的とする。セシューム対策としては、その他、穂ばらみ期以降入水口にゼオライトを投入しゼオライトをすべての水が通過するようにする。
放射能対策で土壌に直接ゼオライトを入れる考えは、土壌自体に1000ベクレルを越えるような田んぼでの手法である。移行計数から言って本来、1ベクレルも玄米には移行しないはずの、土壌が100ベクレルであっても、玄米には水から集積する。これを抑えるには、水自体の削減を計る以外に方法はない。以上の方法で水管理をした上で、棚田毎のお米の測定をする。想定では水口から離れるほど、低くなるはずである。水口の溜池には、実験用の稲を植える。多分この稲は実らないが、稲本体の測定をして比べることもできる。今年の水管理は、すべてが放射能対策のようなものである。まことに空しいものだ。しかし、これも一つの役割だと思い頑張るしかない。こういう努力を東電の人など、全く気付きもしないのであろう。もう一つの試みは、下の田んぼで藁堆肥を大量に使ったことだ。これがどういう結果になるか興味深い。