日本農業の再生2
今後、日本経済の浮き沈みはあるにしても、大きな流れとしては、工業製品の輸出は出来なくなる。その理由はいくつかある。大きくは、後進国と呼ばれた国家が、日本と同じ経済レベルになる。中国、インドという、日本の10倍も人口がある国家が、工業製品の輸出の競争に名乗りを上げている。中国やインドでも先端技術者は、日本の10分の一のレベルの存在だとしても、日本と同じ数存在する事になる。日本人だけが優秀などと考えたら、間違う。その工業に少数の有能な人材が、きわめて安価な有り余る日本の10倍の労働力と、有り余る広大な土地を利用して、日本と競走を始めているのだ。遠からず、日本が優位である分野は限定される。今起きている100年一度といわれる経済転換の実態は、世界の新しい枠組みが生れて来ていることと考えるべきだ。日本人だけが頑張ってどうにかなるというような事ではない。まして、これから成長する国の方が、無闇に頑張る力が存在する。日本が高度成長期といわれた頃、公害を垂れ流しながら、必要悪と承知で頑張ってしまったのである。欲すると欲しないとに関わらず、工業製品の輸出は頭打ちになる。どの道かつての先進国は、同じ道を歩む事になる。
この過程で大企業、大資本は、日本という国家が企業として活動しにくい環境になれば、運命を共にする事はないだろう。より有利な条件を求めて、世界企業と変貌してゆく。既に、生産部門を労働力の安い地域に移動することは普通になっている。国が企業に対して、税制や労働条件、公共事業と有利な条件を作るといっても、日本という条件の限界が生れている。技術立国、先端技術と言うことが言われるが、日本人だけがずば抜けて優秀のはずもない。オリンピックを見ればよく分かる。頭脳においても各民族教育段階はあるにしても、最終的には同じことになる。
もう一つの要因は金融資本主義の登場である。国家予算を超えたような巨額な資金が、利益を求めて、世界中を投機的に巡っている。生産に伴う利益ではない。これが健全な生産という仕組みを、今後もゆがめてゆく。企業によっては、生産による利益より、投機による利益の方が大きいという事態が生じる。大学という教育機関が、巨額な投資で経営まで危うくするという、おかしなことが起きている。現代の資本主義はこの不健全を止めるすべをもたない。人類生存の基本的産物である、食糧までもが投機対象として、価格の操作が行われる。そのことによる世界の飢餓が増大している。利益だけを求めて、資本が動く。資本主義の末期的様相が表れ始めている。世界経済が未来永劫拡大再生産を続けられることはない。今、大不況を切り抜けつつあるというのが、大方の認識になり始めているが、何も根本が変わったわけではない。サブプライムローンと同じことが違った形で又繰り返され、より危機を深めるだろうと考えておいた方がいい。
地球環境の崩壊が進む。温暖化問題を見ても、経済を優先する現在高度成長を続ける国と、一定の成熟期を迎えている国家とでは、対応が違う。さらに食糧すら足りない国においては、環境問題どころでない。世界の合意が遅れる間に、環境の悪化は後戻りできない深刻な事態に進んでゆく。食糧生産に影響が生れるような、環境悪化も避けられない状況であろう。又、現代のくらしが自然から離れる方向で、あることも、工業化社会の危うい進み方を産んでいる。このままでは、原子力発電所が世界各国に無数に作られる状況が生れるだろう。管理能力がない国にも、作られることになる。こうしたリスクが高まることによっても、経済は衰退をする。衰退するというより、拡大一方の経済では立ち行かない、状況が近づきつつある。