農地法の改正
農地法改定が行われる。17年の大きな改定の方向を具体化するもののようだ。
▽所有から利用促進に転換する 。
▽一般企業にも貸借可能になる。
▽貸借期間を20年以内から50年以内に延長する。
▽違反転用への罰則強化、違反法人は1億円以下の罰金。
▽農業法人への出資規制緩和、農商工連携は50%未満まで。
農地法の改定の主眼は、食糧自給体制の構築にある。平成17年に、企業参入が可能になる改定を行った。ワタミなどが参入した。残念ながら、結果としては耕作放棄地が減少し、食糧自給率が向上するような変化はなかった。さらに、企業参入に期待した方式を推進しようとしている。効果があるとは思えない。
農業に企業が参入しても、経営は無理である。一般、肉体労働並みの賃金を払い、企業が収益を上げるようなことは不可能な産業である。可能であるとしてもそれは、限定された一部の農作物である。農業全体に企業参入が起こるようなことは、あり得ない。農業は日本では、成立しない産業である。原因は、輸出を基幹とした産業構造にある。もし企業が農業進出を考えるなら、ベトナムとか、中国とかに農場を作るであろう。安い土地で、安い労働力で、気候に適合した農産物が生産できる。もし、日本で農地を取得すると言う考えを持つなら、当面農産物の生産からの直接の利益を目的としたものではないだろう。補助金目的である。土地の集積による資産的投機目的である。余剰労働力の有効利用。土木機械の有効利用。色々考えられるが、日本で農業を行い、農産物から純粋に利益を上げることは不可能である。米が生産調整をやめたらば、半値に成るという試算が出た。他の農産物は生産調整をしていない。半値になっている状態。
企業が参入した結果、どう言う事が予測できるか考えておく。一応は農業をやると言う事で、農地を取得するが。倒産する。撤退する。そうなれば良いだが、その前に資本の考える利潤に基づく発想。企業は利益目的である。起こりそうな事
(1)農地を堆肥と称する廃棄物の投入場所にする。
(2)農業地帯が殺風景な工場地帯のようなところになる。
(3)利益追求のあまり農業公害の多発。
(4)化石燃料の膨大な使用。食糧以外の生産地の可能性。
(5)農産物に更なる低価格競争が起こる。
(6)手のつけられない、企業所有の塩漬けの農地。
(7)利益の出ている有望作物だけが、虫食いにされる。
企業が国際競争力のある、農業を行い。食糧自給率を挙げるような農業の先例を作れないことは、3年間の試行で理解しなければならない。農地法の改定はほとんど無意味なことになる。
日本には日本独自の伝統的農業が存在する。利益を追求するための農業ではなく、暮してゆく為の農業。大多数の国民が農民であった時代。半工半農である。炭も作る。油も作る。衣服も作る。家も作る。道普請もする。が、食糧は自給する。エネルギーから、食糧まで、専業的でなく。それぞれの生業の中で、重なり合いながら、折り合いを付ける暮らし。自給自足的な経済に戻れというのでなく、自給自足的な食糧生産の方式を、最先端の工業社会に融合させる必要がある。
IT環境・医療・教育・福祉・行政機能。日本国中同等のレベルを作り出す。地方格差を存在させない。都市機能を下げる。集中させない。そうした全体の改変の中でしか、農業の復権はない。輸出企業を推進していながら、農業も守ると言う都合のいい論理は、そもそも無理なことなのだ。