第66期将棋名人戦
羽生挑戦者が4勝2敗で名人に返り咲き、19世永世名人の資格を得た。これで将棋界にある7タイトルの内、6タイトルの永世称号を得たことになった。残すところ、竜王を後一期とれば、資格者となり、初めての7タイトル全ての称号を得ることになる。その竜王戦の挑戦者への道も今期、決勝トーナメントの11名に残っている。羽生名人が中学1年生でプロの将棋界に登場して以来、注目をしてきた。ファーンだ。もちろん桁外れの将棋頭脳への興味もあったが、羽生名人の生き方がなかなかのものだからだ。例えば、チェスの名人が日本に亡命のような形で、滞在した時に日本政府は彼を不法滞在者として、国外退去を命じた。その時、在留のための嘆願書を名人は政府に出した。こうした姿勢は、あらゆる場面に現われている。脳の研究にも、協力している。将棋ソフトのコンピュータープログラム研究にも、開く姿勢を持っている。素人でも面白くないほどソフトが弱い間から、プロを凌駕する年月まで予告した。
普通の将棋指しとはまるで違う人間なのだ。将棋指しというと、坂田三吉位しか聞いたこともない人にしてみれば、どうでもいいことかもしれない。羽生名人はこの時代のひとつの典型のような、興味深い存在と考えている。子供の天才から始まり、ただの人になる場合もあるが、そのまま桁外れの成長を続ける。20歳で頂点に達して、その後も維持して、37歳の今に至る。勝率72.3%。当初は羽生マジックといわれる勝負術で、圧倒する。対戦相手がこの筋道は勝ちだと、考えているだろう道筋に、導く。当然勝ちだと考えるから、その道にはまる。所が最後の土壇場に、実は羽生勝ちの罠のような結論が用意されている。従来不利と思われていた場面を、勝利に結びつける構想を用意する。それがまるでマジックのようで、次々に発想の逆転を続けた。
周囲も研究に重ねて対抗する事になる。佐藤康光、森内俊之、を代表する同世代は学級肌といわれる研究熱心な棋風だ。佐藤康光氏とは今も棋聖戦を戦っているのだが、勝負というより、共同研究をしているようだ。とまで言われる。森内俊之は今回羽生名人に敗れるまで、名人位を4期連続して維持してきた。18世の永世名人資格者でもある。受けにおいて実に、手堅いが勝負強い指し手を連発し、確実に勝利する棋風だ。所が、今期の名人戦では、むしろ攻めにおいて、新手を出した。今期の羽生との名人戦にかけるものがあった。自分の真価を問おうとした。第5戦の自陣に飛車を引いて、角を取り合い、角をもう一度打ち込むてなど、森内永世名人に、いまだかつてない強さを感じた。所が今期の名人戦では、羽生は勝敗にかけていた。勝つための執念の将棋であって、新手を出すというより、勝つ為に引くような、控えるような、差し回しを選んでいた。
そこが、森内名人に肝心な所で何度も負けていた、羽生の頭脳の打倒森内名人の結論だった。13歳でプロの将棋指しになり、20歳で頂点に達し、その後さらに成長を続ける姿。今年になって、37歳になって、さらに強くなったといわれている。ファーンとしては、勝つことは嬉しいが、佐藤2冠との戦いでは、むしろその作り上げられた棋譜が、興味深い。勝負でありながら、勝負を超えたような、求道的な姿勢が、天才をさらに磨き上げてゆく。その努力のあり方や、日々の暮らし振りは実に興味深い。それほどの人材なら、数学とか、せめてゲームじゃないもので、その力を発揮して欲しいという考えもあるだろう。そうは思わない。ゲームも数学も、何も変わらない。名人伝ではないが、勝負を抜けた先に何があるのか。この四角い木切れは何をするものですか。と尋ねるような日が来るのか。
昨日の自給作業:畦の修復竹取り、1時間 累計時間:32時間