習近平第3期政権と台湾

   



 習近平氏が党主席になった。2期までという慣例を破り3期目である。今の中国の状況を考えれば、当然すぎる判断だろう。現在の中国の経済成長は習近平氏の経済運営によって生まれた物である。国家資本主義による経済成長だ。経済成長という恩恵を中国の人達の大半は喜んで受け入れている。

 急激な経済成長は様々なひずみを生んでいるだろうが、貧困の克服が政府の一番の役割だとすれば、まだ十分とは言えないとしても、習近平政府の成果は大きなものがある。農村部の貧困の解消と共同富裕の課題は第3期習近平政権の課題となる位置づけのようだが、これからの重要課題である事は間違いない。

 今後の経済成長も続くとみて良いだろう。世界が経済停滞に入る中、経済成長がまだ継続される。日本では問題点の指摘ばかりがされているが、世界経済の中で見れば、比較で考えれば、中国はまだ増しな状況に置かれている。日本やヨーロッパの苦境はまだまだ続くだろう。

 さらに重要な課題として台湾統一が上げられている。これも当然の課題だろう。問題は統一の方法である。台湾の人々が喜んで統一を臨むような国に中国が成ることが一番良い方向だろう。民主的な統一は中国も主張するところである。嫌がる台湾を武力で統一すると言うことが最悪の事態になる。

 この点で、アメリカは台湾をアメリカ側に引き込むことに躍起になっている。当然その配下である日本でも台湾を守れという政府の宣伝が行われている。その主張はあくまでアメリカ自身の利益が目的である。国防もあるが、経済の競争と言うこともある。

 なにをおいても、重要なことは台湾の人々の意志である。日本がいくら台湾の人に仲間でいて欲しいと考えたとしても、あくまで台湾の人の選択である。国家という物はそこに暮らす住民の意思によって選択されるべきものである。

 あと10年先に中国がさらに豊かな経済大国になり、民主主義国家になっている可能性も無いとは言えない。中国人は優秀な民族だから、どこかで方向を変えてくれることを、私は期待している。国家統一は台湾人がどう考えるようになるかが問題になる。

 ロシアによるウクライナの侵略戦争も、前段階がある。当事者たるウクライナがどう考えるかが最も重要である。クリミヤがロシアに併合された段階で、クリミヤでの住民投票をきちっと評価すべきであった。私には当時のクリミヤの住民投票は客観性があると見えた。

 ヨーロッパでもアメリカでも、否定的な判断であったが、クリミヤがロシアに入りたいという判断をしたと私には見えたし、当時そのことは何度もこのブログにも書いた。所属を判断をするのは住民である。当事者の判断が重視されるのが、民主主義である。

 背景にあったものはウクライナ政府への、ウクライナ民族主義の台頭である。ウクライナ人のアイデンティテーである。長い間の露ビエト連邦に組み込まれて、ある意味支配されてきたが、ウクライナ人はウクライナ語を持つウクライナ人であると言う意識が高まった。

 当然、ロシア語を話すロシア系の人々は圧迫を受けることになる。ロシアに助けを求める心情が生まれた。ロシアと繋がる。その行き着いた先が特にロシア系住民の多かったクリミヤ半島である。問題が緊張する以前でも、ロシア帰属を求める人が半数は存在した場所である。

 いよいよ帰属の住民自身が選択できるという場面での、投票が行われる時点ではロシア帰属を希望する住民が多くなっていたのだ。背景にはやはり経済の問題があっただろうし、ウクライナで生まれた排他的な傾向のある民族主義政権にはついていけないというロシア系住民の判断ももっともなことだろう。
 
 いずれにして、ウクライナへのロシアの侵略戦争はこのクリミヤで起きたロシア編入問題が発端である。この問題への解決方法をNATOもアメリカもまちがったのだ。民族主義を強めたウクライナの政権を積極的に軍事的に支援して行くことになる。当然、NATO加盟も検討された。

 ロシアへの帰属を選択したクリミヤの住民は、不安を強めて行く。内戦状態が続いているウクラナイ東部4州という、ロシア帰属派の多い地域では徐々に将来への不安が高まって行く。そこでロシアは判断を誤る。ウクライナという独立国家へ軍事侵攻という最悪の選択から始めてしまう。

 東部4州の帰属だけの問題であればクリミヤと同様の問題があり、ロシア系住民の独立運動が内戦化していた。ロシアの支援も続けられている。しかし、ウクライナがNATOに加盟したならば、網東部4州のロシア編入はあり得ないことになると判断したのだろう。

 台湾の帰属問題を考えながら書いた。台湾は台湾人が帰属を決めれば良いことだ。独立する権利もあるし、中国へ編入する権利もある。そのことが冷静に検討され、決められる環境を作ることが重要なことであろう。アメリカのやり方はウクライナ同じである。

 日本はアメリカに従い、中国への軍事的圧力を強めようと言うことである。敵基地攻撃ミサイル基地を石垣
島に建設中である。この政策はウクライナ侵略戦争を誘発した、対立構図と同じことになる。極めて危うい政策を選択していることになる。

 よく、日本の軍事力優先派は、台湾が中国に帰属したならば、今度は沖縄を中国に帰属させようとするだろうと主張する。しかし、現状のまま対立を深めることはウクライナロシア侵攻の二の舞になることは間違いがない。その前に諦めないで、話し合いを求めることだ。

 もし沖縄の住民の3分の2以上が独立を望むのであれば、それも一つの選択である。民主主義はそういう物だろう。しかし、現状ではそれは極めて少ない選択だろう。中国が台湾侵攻を思いとどまるように、時間を稼ぐことが最善の選択である。時間が平和をもたらすこともある。

 10年経過すれば、中国も台湾も日本も状況が変わる。軍事侵攻など必要が無い状況が生まれている可能性もある。アメリカにいくら言われたとしても、日本には日本国平和憲法がある事を理由に、中国との平和的な交渉を模索すべきだ。

 平和への何の努力もしないことが一番悪い。ウクライナでも戦争を回避する機会は何度もあったのだ。戦争が良くないのは何も解決できない手段と言うことにある。ウクライナ侵攻の結果問題はさらに深刻化しただけのことだ。多くの人が無駄死にしているのだ。

 武力によって解決されることは、何一つないと言うことを肝に銘じておかなければならない。武力は恨みを残す。今後何世代にもわたって、ウクライナ人はロシア人を憎むことだろう。しかも、ロシアは世界から疎まれる国になった。

 - Peace Cafe