築地市場移転問題
築地市場が老朽化し、生ものを扱う現代の衛生管理で考えれば外れている。日本中の食肉処理場が、衛生管理の為に統廃合している中、最大の築地市場の近代化が出来ないのは問題である。小池都知事が延期を決めたのには驚きである。選挙における、公約が影響しているのだろうが、延期は間違っていたと言えないところに、人気取り政治の限界がある。都議会の闇を暴く政治をやろうというのが、小池氏の主張だったから、つい築地市場の豊洲移転を延期せざる得なくなったのだろう。土壌汚染、地下水汚染をうんぬんしているが、それは単なる理由付けに過ぎない。きちっとした市場設備を作れば、改良された土壌で十分安全である。現在の築地市場のように野外の常温の床の上に生ものが置かれるという、前近代的なやり方の方が問題だ。豊洲市場も全体構想が悪いという事が移転反対派から盛んに出ているが、誠にばかばかしい議論だ。おかしいなら直せばいいだけのことで、移転反対とは別問題だろう。
築地市場の移転延期で浮かび上がるのは、政治の劣化である。東京都知事は、石原、猪瀬、舛添と問題を起こしては辞めていった。新銀行東京問題、5000万円猫糞問題、公私混同のケチジ。なぜこうなるかと言えば選挙の人気投票化である。注目を浴びるだけのような選挙が、まともな知事を作ることを妨げている。それが、都議会の闇を作り出しているのだろう。問題なのは、都議会だけでない、全国の議会が無意味化し、号泣議員でも十分やれる世界である。都知事選は大統領選挙のようなものになっている。それが1か月にも満たない間に決めなければならない。小池都知事の選挙戦略は確かに優れていた。自民党をぶっこわせ的成功である。厚化粧発言の石原親父。息子は小池支持者は自民党除名と宣言した。親子で小池氏を当選させたわけだ。受け狙いの発言が裏目裏目に出た。受けを狙うのが今の選挙なのだ。
築地市場は今となっては移転せざる得ない。と同時に日本の市場の仕組みの整理が必要なのだ。それは大田市場を含めたものにする必要がある。大田市場を野菜の市場にして、豊洲を魚の市場に分離しなければならない。市場関係者のだれもが気付いていることだ。ところが、築地市場の利用者の利便性から、豊洲にも野菜の市場を作ることになる。つまり、レストランが築地で魚を仕入れて、ついでに野菜も仕入れる。それが習慣化していて利便性があるという事になる。逆に大田市場にも言えることで、大田市場にも魚の市場がある。たぶん昔からの既得権益があり、あちこち立てなければならない事情なのだろう。合理性から言えばあちこち矛盾だらけという結果になる。この既得権益と政治が結ぶつく。テレビもおもしろおかしく、豊洲市場のダメな設計をあげつらって入るが、既得権益にかかわるところの調査報道はない。
このように大きな流通の混乱の中、実は市場を通さない流通が動き始めている。市場が混乱すればするほど、生産者と販売者が新しい流通を作り始めることになる。全国的に見れば卸売市場は取扱量が年々減少している。築地移転に見られるような旧態依然とした体質が、新しい流通に対応能力不足に繋がっている。そこに劣化した政治がちゃちゃを入れる。若狭氏を厳重注意しにして、自民党の公認候補にするというのでは、自民党が闇だ。一体自民党は政党としてまともなのだろうか。小池氏を支持したら自民党を除名するとまで騒いでおいて、小池氏が当選したら、小池氏も自民党であるし、小池氏を熱烈支持した若狭氏も自民党の候補だ。政権政党がこんな無原則な対応をしているから、小池氏は豊洲移転を延期など、後で撤回するに決まっているような、無意味な方針を主張できるのだ。何を言っても人気者は許されるとのぼせ上がっている。こういう状態を作ったのは、選挙民である。