スリットドラムの箱について 7
スリットドラム13号の箱。楠無垢一枚板25ミリ厚の箱。底板も同じ材。一番木魚に近い音が出る。箱の作り方も天板への影響は強いようだ。
スリットドラムの箱は音の好みによっても変わると考えている。私はがっちりした箱で、重みのある音が出るものが好みだ。つまり、木鼓の名前のように原始の森を思わせる音が好きだ。板の厚さは25ミリは必要。板の材料は楠を使っている。底板については、天板と同じものを使うのが、一つの考えかと思う。天板がパドゥクであるなら、底板もパドゥクが良いのだと思う。パドック底板の箱を小さなもので作ってみたが、音が甲高くなった。楠の良さ、ケヤキの良さもあるようだ。音に底板が答えるのだと思う。箱の大きさは天板の音が届くことが条件なのだと思う。天板によって大きな音が鳴るものであれば、箱の深さは深くなってゆく。一般には天板の横幅より少し深いぐらいが良いかと思う。最大の大きさを考えると、1200×550×600というような大きさではないだろうか。あまり重くなってしまうと動かすこともできないので、持ち運ばないという事で、このぐらいのサイズではなかろうか。
小さいものでは、230×120×200ぐらいのものを作った。コンパクトなサイズで、歩きながら敲けるというような良さがある。踊りながら敲くというような感じだろうか。小型のものの場合はローズウッドの天板の方が音が出やすい。黒檀もいいのだと思う。小型タイプで花梨で作ってみたものもある。箱は杉板の10ミリで作った。底板はケヤキ。花梨は音が軽くポコポコしている。リズム楽器のような感じにはいいのかもしれない。軽くて携行するにはよい。但し小さいものは小さいものの音しか出ない。音をさらに追及するには、箱の中の構造である。これはまだよく分からない。例えば箱の中にマリンバのような共鳴の筒を吊るすとか、あるいは板で仕切りを入れる方法が考えられる。これらの方法は区切られ、出てこない音を作ることの方が主目的になるのだろう。どのような区切り板の入れ方は試行錯誤して自分の音を探すという事になるだろう。筒も同じくやってみなければわからない。
箱の深さを変えるという方法がある。ザイロホンではそうなのだが、箱を、高音部では浅く。低音部では深くする。しかし、スリットドラムでは音階が分かれるわけではないから、箱の深さを変えるなら、天板の音の出る位置も箱の位置に合わせるように変えなければならない。これでは面白くない。木琴に使づける位なら、木琴にすればいい。私のスリットドラムから出る音を求める方向は、樹木の響きをどう表現するかに尽きる。樹木の出す音と自分の気持ちがつながってゆくことが面白い。敲くことに関して全く素人で下手なのだが、そんなことは関係がなく、樹木の出す音に反応してしまう。ただただ敲いて面白い。その意味では箱の深さは天板の出す音が届く深さという事のようだ。底板に音が跳ね返るためには、天板の音の量で深さが決まる。大きな音の出る天板であれば、より深い箱を伴うことができる。今のところ、45センチの箱が一番深いが、これは柔らかい集積材の箱の場合である。楠の場合は30から40センチ程度が適当なようだ。
今後の課題として、天板をどの位厚いものでも可能かという事と、箱を浅くしてよい音が出るのかの実験もしてみたい。例えば、5センチくらいの深さの場合どうなるかである。天板をパドゥクで、箱を8センチのブラックウオールナット材のものを作ってみている。これはダメだった。オニグルミ材の10センチの箱は上下花梨の天板。こちらはそれなりの結果ともいえるが、音の深さを考えると15センチ以下の箱では期待できない。浅い箱は高音が響くはずなのだが、高音もさして響かない。箱を硬い材にしたことが良くなかったかもしれない。浅い箱ならなおさら柔らかい木で側面を作る必要があったかもしれない。
天板を指で触れただけでも音が出ること。強くたたくと、山の向こうまで音が届くこと。音の印象が深く、余韻に味わいがあること。