日本と中国の食糧自給
日本の食料自給率は40%を切っている。政策として増加を目指したが、本気ではなかったのだろう。今後TPPが妥結して、食料自給はさらに下がると言う事になる。世界人口は増加している。世界の環境は農地の拡大で悪化している。気候変動などが加わるので、食糧生産は困難さを増してゆくとみられている。食糧自給率をなんとか高く維持しながら、国の経営を行う事は可能なのかという事である。中国は世界最大の人口の国であり、食料自給率は85%を保っているらしい。当然農業負担は年々増加している。この事がいよいよ日本の食糧自給に影響を与える段階に来たと考えなければならない。先進工業国では食糧生産に補助金を投入しない限り、自給率を高く保つことは不可能である。そこに各国の考え方が反映する。日本は食糧は輸入する方が効率が良いという考え方で、国内農業を交代させている。その先を行くのが韓国である。当面の経済を考えての政策いう事であろう。
中国は数年前に世界最大の食糧輸入国になった。その最大の原因は生産コストの上昇である。中国の農家の耕作面積は小さい。畑は日本以上に細分化されている。村ごとの企業的農業が奨励されているようだが、共産国の建前のなかで、農家の資産である農地という土地所有制度の矛盾に対して、手だてが無い。さすがに政府が勝手に動かす事は出来ないようだ。実際には日本の農村の状況と変わらない様子である。その大型化出来ない状況で、労賃の上昇が極端である。近隣諸国から不法就労の労働者が中国に入る状態である。それに加えて現在の都市部への人口集中が限界に達している以上、何らかの手立てで農村に農民をとどまらせなければならない。そこで、農業補助金の増大が始まっている。そうして何とか、85%の食料自給率の目標を維持している。これは経済だけで見れば明らかに負担の増加である。日本がたどった様な40%自給の食糧輸入国への転落をするのだろうか。
世界の食糧事情の先行き考えると、世界経済の競争の先鋭化に伴い、食糧生産は補助金なしには国際競争が出来なくなるという事が見えてくる。つまり、人口増加は相変わらず未開発国で続き、低賃金の労働力が生まれるが、自らの国家の食糧生産さえ賄えない途上国が増加している。加えて工業化した国では、工業の賃金に見合う農業の賃金の維持が出来ない。農業者が老齢化し、減少する。そこで、農業の工業化が目指される。機械が、大型化。農業人口の減少。資本主義経済の競争の中で日本農業が生き残るには、確かに一つの方法である。しかし、それを可能とする地域と、大半の不可能な地域との格差が広がり、さらなる農地の減少になっている。自然環境や、経済地理的な条件が地域には必然としてある。世界競争に対抗できるつまり、農業競争に勝ち抜ける気候条件や、地理的条件が備わっているという事である。日本でサトウキビを作って世界競争に勝てる訳が無い。
そのもう一つの道として、日中両国にある伝統的自給的農業がある。中国でも家庭菜園はとても盛んである。自分が食べる食料を自給することで経済性だけでない要素を農業に取り入れることだ。これは国際競争の為に、補助金を入れざる得ない補助金を考えれば、はるかに安価にできることだ。つまり、農地を大型化企業的農業の地域と、自給的な農業地域とに明確に区分けすることだ。その上で、自給的農業地域の整備に国は力を入れなければならない。自給的な暮らしを可能とする法律の改正が必要である。土地制度や住宅の許可制度を地域性に合わせて行う必要がある。基本的な地域機能の整備。地方の自給的インフラの整備。教育でも中央集権型ではなく、各地域の教育というものを育てなければならない。いずれ中国の食糧不足は明確になって来る。そのときに日本に食糧生産能力が無ければ、国の安定が崩れる。