最後は金目でしょ。
下田の夕暮れ 10号 向かいの半島に建物が浮かんでいる。夕日で見えなくなるのだが、その消えかかった姿に、そこにある暮らしを思わせる。
石原伸輝環境大臣は記者からの質問に「説明会が終わったから今後の日程について話をした。最後は金目でしょ。(菅氏は)こちらが提示した(住民への補償の)金額については特に何も言っていなかった」と語った。よくぞここまで本音を出せるものだ。これは、迷惑施設を造る際の政府の意志をもろにあらわしている。別に私には誤解とも、失言とも思えない。当然の意識だと思う。こうして全国の迷惑施設が作られてきたのだ。小田原のある市会議員が、どんな家にもトイレは必要だと、ごみ焼却施設のことで発言したことがある。石原氏が発言した意味は、行政の交渉責任者として、最悪ということだけなのだろう。お金のことは表面化せず、この難題をこなすのが優秀な行政の交渉責任者であろう。少しでもお金でふるさとを売り渡すという、匂いを出してしまえば、交渉は難航する。お金のことが一番重要であるとしても、それは表面化せず、処理するのでなければ、話はまとまりにくい。
しかし、全国の原発関連施設は金目で解決してきたのだ。それが事実だ。ふるさとの維持を原発に伴う、補助金や仕事に期待したから、誘致までしてまで実現した。又現状でも誘致している人はある意味、その地域に置いては多数派である。だからそういう市長や町長が選挙で選ばれる。日本はそういう国ということだ。この現実を隠して通るのでなく、むしろ正面から向かい合うべきだ。原発事故が起これば、その被害は遠く小田原まで及んだ。お茶の出荷停止まで行われた。とするなら、原発の賛否はその地元だけのものではない。にもかかわらず、直接の原発設置市町村だけには多額の補助金が支払われる。そして、直接の地元自治体の賛成があれば、設置することができる。これでは金目は地元だけが恩恵をこうむり、その周辺200キロの被害想定地域には恩恵の金目はない。これでは不自然ではないか。というような議論を石原氏は引き出してくれたのではないか。原発の金目の範囲が狭すぎるのだ。だから、原発は安い電力だ等と今でも主張している。
自民党は国際競争力を金科玉条にしている。これはまさに、金目が全てという考えに貫かれている。石原氏も、安倍氏も大差はない。石原氏が交渉者として、うかつな人間だという批判なのだろう。今回出てきた、経済再生策はどれもこれも、金目ばかりで感心できない。上手く行くとは到底思えない。経済が良くなることは大切なことである。しかし、一番大切なことは「ものづくり日本」を高めてゆくというものであるべきだ。壁を乗り越えたと力説する安倍氏の壁は、カジノであり、株投資である。国が投資に加わる壁。この壁は守るべき壁。日本の大切な基礎を崩壊させるだろう。例えば、社会保険で集めた資金を株に投資するということを主張している。これは大量の資金が日本の株式市場に流入すると宣伝して、株価を上げようということだろう。カジノを始めようとしている。これも経済効果だと、安倍氏は強く主張している。美しい日本の大切な矜持を失っても、金目が大事だという国に成り下がっている。
日本は不労所得を期待するような国になってはならない。たまたま、石油が出るので国民所得が世界有数になったとしても、文化的に世界一になることはあり得ない。美しい日本は文化の高い国であってほしい。基本を物を作るという所に置いて、地道に文化を高める所に日本の方角がある。カジノが出来れば、暴力団が関与する可能性もある。もしかしたら、ラスベガスのギャングがそのノウハウを提供するのかもしれない。マネーロンダリングの手段にもなるのだろう。不労所得の金目で上手く行ったとしても、その負の見返りは極めて大きいはずだ。日本ではパチンコという身近なギャンブル場が無数にある。これがどれだけ悪い結果を残しているか。少しでも、こういうものを減らしてゆくのが政府の役割である。それを政府が率先してカジノでは、金目でこの国を壊してしまう。