トンネル事故と原発の解体
笹子トンネル事故は経年劣化による可能性が高まった。高度成長期作られた公共事業の建造物は経年劣化が深刻ことになっている。当時から材料や工法が杜撰ではないかということは言われていた。コンクリートに海砂が使われているから、塩分による腐植が起こると言われた。大きなコンクリート建造物は、作られた時から後の管理が重要になる。40年の間に様々な形で劣化が進むことは当然のことである。特に、水である。水が浸み込んでゆくようなトンネルや橋では、ひび割れを通して中の金属部分の腐植が進んでいる可能性が高い。それは鉄筋の公団アパートなどでも建物の老朽化と、住民の老齢化が進み、今後の再生に困難を極めている。一方、特に自民党は公共事業を選挙の目玉として、新幹線、高速道路、連絡橋、ダム、堤防、とさらに新しいものを作る方へと主張を展開している。それどころではないというのが、原発の事故が示したものではないか。
今まで高度成長期に作ってきたものを、一度立ち止まって、再点検することが今必要なこと。笹子トンネルの天井板崩落事故は、そのことを警告している。下り線においてもでつり金具のアンカーボルトの脱落やゆるみなど670カ所の不具合を確認した。建設国債を日銀に買い取らせて、新しいものを作るということどころではない状況だ。既に、国債を発行しても、修理点検すら十分に出来ない状況に来ている。毎年、修理費が増大して行くのは、40年を過ぎたコンクリート建造物の宿命である。このことはGNPに負の生産コストを入れなければならないという議論が、高度成長期にもあった。つまり、建造物を作るということは、廃棄処分する費用をマイナス資産として含んでおかなければならないという、当然のことである。ここにも政府が複式簿記で会計をしてこなかったバカバカしい程の怠りがある。その最たるものが、原子力発電である。安い安いと有頂天になって、出て来る核廃棄物の処理の、手当てが付かない。活断層の上に立てれば、どれほど無駄な投資なるかなど、考えてもいないでの杜撰な認可。
今中国で起きているむやみな建設ラッシュを笑っているが、日本はその愚をさんざんに犯し、今その付けを払わなければならない時が来ている。年金ではないが、未来の世代へそのつけを先延ばしにしておけばいいというのが、今生きて暮らしている、我々の卑怯な姿である。特に我々団塊の世代はその負の遺産の責任者という意識を持つ必要がある。にもかかわらず、国防軍である。この上、軍事予算が増加するのでは、この国はどこまで落ちぶれるだろうか。北朝鮮では人工衛星が上がった。つまり、いつでも日本に各弾道ミサイルを撃ち込める状態の準備が整ったということである。対抗して軍備を増強するなど、北朝鮮と同じように、国民生活を無視することになる。
まだ、選挙でこの国の方向は変えられる。これが軍事国家になった暁には、進路を変えるにはどれほどの、困難が待っているか思えば気が遠く成る。いま、国民はこの国の衰退におびえ、強い発言をする政党に、依存する気持ちが芽生えている。この国を立ち直らせるのは、国民一人一人である。一人ひとりの暮らしかたである。誰かがこの国を救ってくれるようなことは無い。当たり前のことしか政治にはない。幸い、この豊かな国土がある。放射能で一部汚されたとはいえ、多分、平均寿命がいくらか下がる程度であろう。大変なことではあるが、まだ十分にやりなおせる。まずは、我々団塊の世代が責任を取ることである。新たな公共工事は、修繕に集中する。原発の解体に集中する。核廃棄物の安全な処理に取り組む。何かを生み出す事ではないので、恩恵を受けた我々世代の年金を充当するくらいの気持ちで行うしかない。動ける間はひたすら、働いて生き延びるしかないだろう。