農業の抜本的改革
TPP加盟の前提として、「農業の抜本的改革をする。」このように管総理は発言している。農業関連の団体は、こぞって加盟反対の集会を行っている。いよいよ日本農業の正念場である。TPP加盟は、避けることが出来ない。せめて農業をどうするのか。真剣に討議してほしい。戸別補償で事足れりでは、話にならない。日本の農業は全農が主張するように崩壊するだろう。平均年齢が65歳を超えた産業分野である。今まで何とか農業が続いてきたのは、戦後の食糧難時代の農家の生き残りが頑張っているからだ。農地解放が行われ、食糧増産が叫ばれ、開拓、干拓がおこなわれた、農業の未来が明るかった、明るい農村世代の生き残りが、頑張っているからだ。TPPだけでなく深刻な事態は近付いている。今までの農業補助は既存農家を支援すればよかった。今も、農業団体が反対を叫んでいるから、政治的にはJAとの妥協策としては、既存農家への補助金を増やすことで済まされる可能性が高い。政治家は選挙以外は興味すらない。
戸別補償のような、既存農家保護の政策をいくら強化しても、農業者の減少は歯止めはかからない。今やらなければならないのは、農業をやろうという人間に対して、希望が持てる未来像を作れるかどうかにかかっている。いまある65歳以上の後期高齢者農家をいくら維持したとしても、お先真っ暗なのは当たり前だ。農業関係団体の声は一番高いだろうから、配慮はいる。と同時にその配慮の為に、農業がますます歪んだ産業分野になるのでは、抜本的改革どころではない。「農業人口が増加する政策。」ここに焦点を合わせるべきだ。自給率うんぬんなどどうでもいい。あらゆる角度から、どうすれば農地が拡大するかを目指すべきだ。企業であろうが、農業法人であろうが、専業の個人であろうが、兼業農家であろうが、ただの市民であろうが、農地を農地として維持できる体制を目指すことに尽きる。
戸別補償を倍にすれば、今の65歳の人が75歳になるまでは何とか農業をやるだろう。老齢年金のようなものだ。しかし、若い後継者がそれに続くことは考えられない。補償金だけでは展望が無いからである。職業を選ぶときに、生活保護を計算に入れる人はいない。国際競争力のある農業など、あり得ない。あり得ない理想論のごまかしはもういらない。生産は国外でというのは、今やどの分野でも当たり前になっている。労賃が違う以上、時給1000円と100円で競争しろということが、一次産業ではどう効率を上げても無理だ。農業を全く違う角度から、言葉通り抜本的に見直す必要がある。食糧は、人間が生きるもっとも基本的なものだ。これを他の生産物と全く一緒という発想が無理だ。しかし、食糧輸出国はそんなことは認めないだろう。そこで、TPPに加盟し、工業生産品の輸出で生きている日本としては、違う方策を立てる以外にない。
借りて農業をする人に対して、地代補償をする。やりたいと考える人には、地代なしでやってもらう。国が地代の補てんを行う。その前提として、市町村が遊休農地を強制力を持って借り上げる。農地は耕作したいという人に貸し出す。貸出先は誰であってもいい。市民であってもきちっと管理できる人には貸し出す。市民の自給である。自給には価格が無い。農の会の行う農業は、コスト計算したらバカバカしいようなコメ作りなのかもしれない。しかし、デズニーランドに行くより楽しく農業を行い、しかもお米が手に入るなら、是非ともやりたい。こうした人たちが、潜在的には相当数存在することが、ロシアやキューバの事例からもわかる。日本でも食糧生産の30%くらいまでは市民的自給で生産できるはずだ。またそういう国の方が、日本らしいではないか。その環境、状況を整えることが日本の農業政策の改革である。農地法の抜本的改革。全国どこにでも住める、産業の構造改革。通信手段の整備。情報の共有化。やることはたくさんある。