本当の中国
ノーベル平和賞に中国で反政府活動を行ったとして、刑務所に収監されている劉暁波氏が決まった。妻、劉霞さんは、朝日新聞の電話取材を受け、「劉暁波とすべての国内と海外の民主活動家たちの努力が無駄にならなかったことを大変うれしく思う。劉暁波が受賞を知ったら、とてもうれしく感じ、ほっとするだろう」と語った。 その後9日になると消息が分からないという。中国の独裁体制に対する批判が世界中で起きている。天安門事件の全貌は分からないし、当時の多数の死者、逮捕あるいは亡命した人。どうしているのだろうと思った。日本でも尖閣諸島の中国魚船衝突事件以来、反中国の空気が高まっている。実に危険な、気おつけないとならない状況である。追い込んでなにも良いことが無い。中国の実像は、どうも誤解されている。日本だって核武装論者の佐藤栄作氏が平和賞をもらった。30年前にソビエト時代のロシアを2週間ほど旅行したことがある。レニングラードと当時は言われていた、サンクトペテルブルクのエルミタージュ美術館に絵を見に行った。
そのころのロシアでは強い人権の抑圧をいたるところで感じた。どこに行くのも必ずソビエト人の通訳の人がつくのが条件だった。ポーランドから入ったのだが、国境での検査では、ロシアの土に埋めたいという遺体が出てきて、大騒ぎになって下された。一緒に居たポーランド人のロシア人に対する恐れ方が尋常でなかった。一体、「さらばモスクワ愚連隊」はどこの国の話なのかと思った。東ドイツもさらに深刻な独裁国家の空気だった。中国には20年数年前と、最近と行っているが。まるでそれとは違う社会だ。独裁国家の空気は無い。暮らしている人の様子でそのあたりのことは分かるつもりだ。中国人にはとても優秀な人がいる。但し人間の能力格差は大きい。ある意味この能力差を踏まえて、国力の成長を急激に行わうためには、今の中国政府のやり方は理にかなっている。もちろん人権とか、個人の財産権とか、深刻な問題があるのは事実だ。しかし、そうしたやり方だから、急成長できた現実がある。
中国批判をするのは必要なことだろうが、誤解してはならない。中国の諸問題は中国人は十分承知している。奥行きの深い国である。北朝鮮やかつての共産国家と同列に論じるようなことは、日本の大失敗につながる。多くの中国人は日本への関心が強いし、日本の評価も十分している。何が中国の問題かも自覚している。もちろん誇り高い人たちだから、日本人を蔑むような視線も常にあるのは事実だ。ここは平明に、冷静に見なくてはならない。尖閣問題でも日本の主張は十分理解している中国人が存在するということだ。日本の企業は2万社中国に進出しているという。農業分野でも多数の日本人が、本気で中国農業のために頑張っている。その積み重ねている実績も大きなものがある。中国政府には反省してもらわなくてはならないが、中国国内の制御できない、あらゆる分野で綱渡り状態であるということも考えておく必要がある。
中国とともに日本は東アジアの運営をしなくてはならない。競争関係でもあるし、協働関係でもある。こうした摩擦も踏まえ、新しい次元に向かわなくてはならない。今回の摩擦は日本の誰かが意図的に起こしたことだ。両国間の暗黙の了解をもしかしたら、政府間の秘密了解事項を、日本政府が破った。少なくとも中国はそう感じて、最大限の強硬策をとった。それは中国自身にも大きなリスクのある、冒険的方法であったが、そこまでせざる得ない追い込まれたものが、中国自身にあるからだ。日本はそうした中国の国情まで考えて、余裕のある対応をとらなければならない。また、こうした下らないことで両国の関係が一気に冷え切ることのないように、日常的な交流を深め。普通に暮らす庶民のレベルの交流を、粘り強く作り出してゆくことだ。それが、日本が行った侵略行為で作った、中国人の怨念を乗り越える道だと思う。