「農地争奪」

   

新興国を中心に途上国を舞台にした農業投資の動きが広まっている。これを世界のメディアが「農地争奪」という表現で伝えている。主な投資国は中国、韓国、UAE、サウジアラビアなど。日本も「食料安全保障のための海外投資促進に関する指針」をとりまとめた。逆に主な被投資国はアフリカやアジアに集中している。例えば中国はコンゴ(旧ザイール)において農地280万ヘクタールを利用したパーム油栽培の権利を確保している。これは日本の農地面積の約60%に当たる。中国は農地の確保とともに、アフリカに数百万人規模の農業労働者を送り出す構え。またサウジアラビアは「サウジアラビア農業海外投資基金」を約53億ドルで設立。インドネシア(160万ヘクタール)やスーダン(1万ヘクタール)などの農地貸借権を確保している。国際食料政策研究所(IFPR)の推計では、2006年から今年までに主な投資国(中国、韓国、UAEなど)が取得した土地は1500万~2000万ヘクタールにも及ぶという。これは日本の農地面積の3~4倍にあたる規模だ。

日本で耕作放棄地が広がっている間に、世界では食糧危機を予測した、新しい農業形態の模索が、新植民地主義のような形で広がっている。今起きている現実を、考えてみても日本のここ10年の農業政策の方向、「国際競争力のある農業生産物」と言う考え方がいかに間違っていたかが分かる。今世界は基本的な食料の確保という、基本に戻ろうとしている。現在のWTOの協議も食糧不足の場面においては、全く違った事になるだろう。食糧の自由貿易ではなく、足りない食糧をどう供給を割り当てるかと言う、協議になってゆく。食糧不足を見通して、起きているのが農地の独占的使用の「農地争奪」である。民主党の言う、農家の戸別補償の考え方が、具体的になった時私の家では何かが起こるのか、あるいは起こらないのかが、よくわからないが。この遠からず起こる世界の食糧事情の変化は、おさえておいて貰わないとならない。

先日の小川町の見学で、大豆を1キロ500円で地元の渡辺豆腐店に独占的に、販売していると言う話だった。私が大豆を作った体験では1キロ1000円でないと経営が成り立たない。その理由を知りたかったのだが、様々な助成金、補助金を受けているからこの値段で、販売できると言う事らしい。これが、北海道の有機大豆と成ると、1キロ400円とかになる。それでも補助金があるから経営できる。こう言う公平でない仕組みが良くない。補助金を上手く獲得できる農家が生き延びる。私のようにボケーとしている農家は追い込まれる。大豆用のコンバインも補助金で買えたそうだ。しかし大半の農家は私同様で、どうしたらいいのか分からないままだろう。国の助成金を貰うには、膨大な書類がいるらしい。普通の農家に出来る訳がない。農業がボケーとしていてもやれるような方式にする必要がある。堆肥場を作りたいと思うが、補助があるらしいがこれが見えない。これも小川町では上手く進めたらしい。

農業者が普通に農業をしていれば、暮してゆける状態を作り出す。農業は文化であって、経済ではない。同時に大儲けなど農業では出来ないようにする。農業をになう事は、一種の公務員的役割である。水を作る、水道局と同じことである。昔なら必要な水のある所でくらした。食べ物は誰もが自分で作るしかなかった。手分けしてやるにしても、暮してゆく最小限のものは、国がきちっと確保する必要がある。それが主要作物であろう。米、小麦、大豆、現状お米を食べなくなって作り過ぎの問題がある。米は作れるだけ作る必要がある。田んぼにはそれだけの環境調整能力がある。お米は足りない国にあげればよい。日本の国際貢献は全て食糧で行う。食糧生産が出来る土地は世界中では、既に足りていない。憲法に基づく平和的貢献は食糧援助を基本に考える。世界での飢餓は広がる中、食糧援助は急激に減少している。せめて10年先を見据えて、考えたい。

 - Peace Cafe