小田原の農業の可能性は大きい

   

3月12日小田原有機の里づくり協議会主催の講演会を行った。東京青果の専務取締役の笹部さんの講演と小田原の青蜜柑ジュースとオリーブの取り組みの事例報告を行った。笹部さんからは今現在の日本の市場の流通はどうなっているのか。課題と展望がとても分かりやすくお話をいただけた。私が行ってきた小さな自分で配るというに過ぎない生産者にもとても参考になるお話だった。農業はこれからの産業として極めて有望なものだという事。生きている人間は薬は飲まないでも、食事はするという話は面白かった。様々なデーターが説明されたが、数字はもう忘れてしまったが、地域農業に希望はあるという思いを強く持った。まず、JAが中心にならなければならないこと。ところが政府はJAを消滅させる方向にあるという話。そして、農業者と行政が連携してゆかなければ、地域農業は守れないという事であった。これは耳の痛いことである。小田原では今回の講演会のチラシをJAで回覧してもらう事を、農政課からJAに依頼して、断られた。ここに深刻な壁がある。

いくら産業としての展望はあるとしても、足柄の地域農業が存亡の危機にある認識は共通のことだろう。農業者の老齢化、耕作放棄地、新規就農者の減少、農地の減少、人口の減少。全国共通の困難の中にある。政府の目指す、耕作地の集積ができない。大型機械化農業には不向きな地域が大半である。その結果産地としての競争力の低下。苦境にあるにもかかわらず、否、苦境であるからこそ、行政、農業者そしてJAの連携が取れない。具体的な展望を誰も持っていない為だと思われる。行政から足柄地域の農業の展望が示されたことはない。JAから足柄地域の農業の展望が示されたこともない。市会議員から足柄地域の農業の展望が語られたこともないだろう。地元選出の県会議、あるいは国会議員から足柄地域の農業の将来像を示されたこともない。何でも明確に語る河野洋平氏すら、この地域の農業の展望を示してはいない。

このブログに何度か、足柄地域だからこその農業の可能性を書いてきた。そのことは10年前描いた自然養鶏の本にも書いた。今も足柄地域ほどこれからの農業に向いている地域はないと考えている。私の描くあしがら農業の未来像は、今も生きたものと考えている。自給農業の地である。大型農家の営農としては成り立たない条件の地域である。農地の集積ができない。大規模な農地がない。傾斜地で機械化ができない。様々なものが混在した地域である。大型農業が不向きな場所で政府の方針に従う事に無理がある。これからはますます、農業分野に競争が要求されるだろう。日本国内のほかの地域と競争したとしても、足柄地域の条件は良くない。農業は経済地理的条件に左右されるものだ。私はこういう地域では有機農業が展望になると考えて取り組んできたが、既存農家の心理的壁の厚さに跳ね返されてきた。展開できなかった有機農業がこれから広がりうるとも思えない。

この地域での可能性は自給農業である。あるいは消費者が農地にやって来る農業である。生産された農産物を販売する必要のない農業である。笹部さんのお話を聞いてますますそのように思った。大都市近郊にある足柄地域。気候温暖、風光明媚。地元には観光地があ利宿泊施設が沢山ある。大都市への通勤する人の住宅地でもある。これらの有利点を生かした農地の利用は、自給的農業以外考えられない。行政が農地の利用形態別の地域指定を行う必要がある。自給農業地域指定。自給農業地域については、家庭菜園的な農地の利用を可能とする。駐車場や道路の整備を行う。旅館は農機具の貸し出しを行い、農地までの送迎を行う。農地に休憩設備を作る。居住して自給生活を送るものに対しては、住宅の整備斡旋を行う。農家が安心して、有利に農地を提供できる制度を作る。行政が一度借り上げて、市民は行政から菜園用地を借りる。もう10年も同じ主張を繰り返してきた。残念ながら一向に進まない。いまではどうでもいいような気分になっている。

 

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