焼き印

   

タングドラムに押した焼き印

タングドラムに焼き印を押した。一時間ぐらいで20のタングドラムに焼き印は押せた。初めて焼き印というものを使ってみたが、案外簡単なものだ。鎌倉にあるタイガー刻印製作所で作ってもらった焼き印である。長年作りたいと思いながら実現しなかったのだが、ついに作ってした。 子供の頃たぶんお滝のお祭りか、世田谷のぼろ市だったか、焼き印を買ったことがある。それは丸に出という文字が入った焼き印だった。どこから持ってきたのか、寅さんのような人が様々な焼き印を売っていたのだ。〇に「出」は出荷とかいう印として、箱に押したのではないかと思った。〇に出の屋号に使うというようなものかもしれない。どこから出たものか不思議なものだったが、たまたま出という字があるのを見て思わず買ってしまった。それは鉄でできていた。たぶん鋳造という事だろう。どこかで出荷というような印をリンゴ箱にでも押したのかもしれない。昔は段ボール箱などなかった。木で出来た箱に荷札をつけて送った。工場から箱が出るときでも、出荷のしるしで出などという焼き印を作った可能性が高い。あるいは、鍬や鎌などの柄に屋号の焼き印を押すような習慣があったのだろうか。それで田舎の農村を廻って歩く人がいたような気もする。

原稿である。三角を重ねた出である。絵に使っているサインと同じものである。サインは最初は「SASAMURA」と入れて、次には「IZURU」と入れていた。それでも落ち着かないで「出」と入れるようになった。水彩画になってからはその出も三角を重ねたものに変えた。だからサインで描いた時代がわかる。ローマ字では自分のサインのような気がしない。なぜ日本の洋画はいつまでもローマ字表記なのだろう。パスポートのサインでさえローマ字の人も居る。普段使っている文字をサインにする。それが私絵画では普通のことだと思う。それで漢字にしたのだが、漢字だといかにも文人画風になって、これは嫌味を感じてしまう。それでいろいろ考えた末に、記号でいいのだから、△を重ねた。出という字を記号化したものだ。出来る限り、シンプルで嫌みのない形にした。

鉄で出来た焼き印というのは、炭の中などに入れておいて、捺したのではないだろうか。真鍮の場合はそんなことをしたら溶けてしまうだろう。真鍮の場合はもっと細かなことができるのだろう。然し私の焼き印はシンプルなものだ。タングラムに押して分かったのは、杉と樟では調子が違うがどちらも美しい焼き印になる。ローズウッドとか黒檀だと、樹脂が解けるような感じになる。あまりきれいには押せない。発揮し捺そうとすると、周りまで焦げてくる。こういう時は濡れたタオルで人付記してから押すといいという事だが、これは案外に難しい。

焼き印を熱するのはガスバーナーである。良くあるカセットボンベを下に付けた、簡単なバーナーである。台所のガスバーナーでもいいのだが、捺す物の方に移動して作業するには、これが便利だ。4,5分熱すると、うまく木が焦げる熱さになる。余り熱くすると溶けてしまうの注意書きがあったので、徐々に熱してみた。一度熱くなれば、2回目からは20秒ほど熱して又押せばいい。木によって少し感じが違うがなかなか良いものだ。今度あれこれ農機具に押してみようと思う。鍬鎌、鉈、木製品なら何でもいいだろう。

 

 

 - 楽器