健康長寿の農業者
農村では主力がお年寄りである。農業者の平均年齢が70歳を超えている。私は68歳になったが、まだ中堅というところか。農業は年寄りでも役立つ仕事である。長年の蓄積した知恵と技が生きる。畑や田んぼで働いている人を村で見かけると、80歳を超えた人の方が多い。早稲田大学では農村のお年寄りは元気で長生きなのではないかととの調査が行った。嬉しいことにその通りの結果が出た。引退から死亡までの年数は、農業者の男性は約八年、女性は約十一年で、それ以外の人と比べて男性は約二年、女性が約八年短かった。働けなくなるのが遅いのだ。死因も、農業者はそれ以外の職種の人よりも老衰の割合が高かった。調査では六十五歳以上で農業をしている人には入院の経験がない人が多いことも判明した。調べなくともそうだろうと思える結果ばかりだ。私もお陰様で入院の経験がない。手術をしなければならないような大病の経験もない。これほど幸運なことはないである。当面、70歳までは自給農業を続けたいと考えている。
健康長寿が農業のお陰だとすれば、農業は医療費の削減にもなる。日本が美しい瑞穂の国である由縁はこうしたところにも現れている。歳をとればとるほど身体を動かすという事は大切になる。家にこもりがちになれば、身体はたちまち衰える。1週間寝込むと、日常生活に戻るには1週間かかるというのが年寄りの身体だ。毎日身体を無理のない範囲で動かすことが大切になる。特に私のように座って、屈んで、絵を描いて居るものは意識して身体を動かす必要がある。自分の身体の維持の為も含めて、自給農業をやっている。先日、畑仕事は運動にはならないという説を強調する人がいた。運動というのはどうもマラソンをしたり、ウオーキングをしたりすることと強調していた。農業をやるべき人の主張だけにびっくりした。健康情報の一人歩きだの結果の気がする。自分で健康的な農業を考えることが大切なのだ。もし、農業をすることが運動にならないとすれば、それは農業のやり方がおかしいのだ。身体の扱いが悪いのだ。健康になるような農業のやり方を見つけ出す必要がある。
歩くことが健康維持に良いといわれる。それなら、歩く農業を行えばいい。私は毎日一時間は田んぼを歩いている。田んぼの周りをグルグル回る。田んぼを見るのが好きだから、一日2,3回は必ず行く。もちろん畑も見回る。畑を眺めて歩くのも実に面白いからだ。頼まれてもいないのに、人の田んぼや畑も観に行く。テレビを見るより面白いからだ。毎日面白い発見がある。不思議な見たこともない虫を見つけたりする。作物は毎日実りに向って変化をしている。それを見ているだけで尽きない面白さがある。そして、少しぐらいは作業もする。時にはかなりきつい作業もする。運動の為ではない。その結果否応なく毎日1時間以上歩き、力仕事も1回ぐらいは行う事になる。田んぼや畑は斜面にある。だから足元の悪ところを上り下りする。見回りをしながら、ちょっとしたことを行う。水漏れを直す。土のうを運ぶ。ヒエを見つければ入って取る。これは自分の所だけだが。
一番の運動は頭の体操である。身体の体操など知れたものだ。どれほど元気でもボケてしまえばどうにもならない。健康長寿に一番必要なことは、未来を予測して行動することだ。今日何時から雨が来るか。では田んぼの水はどう入れようか。その時期時期で、稲の状態でやることが違う。常に新しい課題に出会っている。これ予測し対応する。失敗もして、大いに残念にな事も多いい。悔しがり、来年こそ頑張ろうが、農業である。明日はどうなるのだろうと楽しみにして世話をする。その実りを美味しくいただく。この喜びこそ脳を活性化させる。それが自給農業であれば、自分への挑戦にもなる。どうすればいいのかを自分で考えてみる。だから毎年、前年以上の収穫を目指し続ける。どれだけ労働時間を減らせるかも課題にしている。理想の合理的自給農の在り方を模索する。