スリットドラムの製作方法 8
縁台で柿渋を塗っているところ。
スリットドラムを様々作っている。楽器制作は本格的には初めてのことである。ユーチューブ以外でスリットドラムは見たことがない。むしろ見たらだめだと思っている。見ればそのやり方に引っ張られる。自分の望むものに近づくためには、自分を突き詰める方が良い。ユーチューブに出ているスリットドラムの音をあれこれ聞いて大体わかった。参考にはなるが、私が望む音とは少し違うような気がした。そこで自分で作り始めた。前有る物という近道を進むと純粋に自分の求める音から遠退いてゆく。道を見失い、有りがちなところで満足してしまうものではないかと思っている。あえて、思いつくでままに作ってみる。それで自分なりにだめな箇所に気づいて、改善してゆく。その改善の過程では、良い指摘をしてくれるその道の同行者に話を伺う事が一番である。
スリットドラム14号 天板の板が32ミリ厚。硬いパドック。ほぼ完成品。
田んぼののやり方でも同じだった。別段そう決めてやっているわけではないがそうなる。田んぼの抑草方法でが、良いと言われている方法を順番に試した。そして自分の「ソバカス抑草法」という方法にたどり着いた。やってみる抑草の方法が田んぼによって違う結果になった。結局のところ田んぼごとに抑草法は違うものだったのだ。人から学ぶ事が出来るのは、自分の目的にするところが明確になってからである。何故遠回りのような、無駄を積み上げる方法を採るかと言えば、それが一番自然の摂理に近づける方法だと考えているからだ。自然を知るという事こそ、自分らしいものを確認し、発見する方法でもあるからだ。田んぼを通して、そのかかわり方から自分の何たるかを見たいのだ。自分らしい絵を描くなどという事はほとんど不可能に思えるほどの難しい。つまり自分の探求という事は難しいものだ。何もしないというこで自分に至る道もあれば、やりつくして自分を探す道もある。
一番大きなスリットドラム15号。やはり大きいものは良い音がする。
自分が求めている音。これはなかなか明確にならない。手探りの試行錯誤である。ここに魅力を感じる。何を自分が良いと考えているのかの探検である。自分の心地よいと考える音は存在する。だからきりがなく面白い。木だから、天候によって音がわずかに違う。むしろわずかに違うという事を、スリットドラムが教えてくれた。環境の変化にこれほど敏感な楽器はないのではないか。そこが良いではないか。音を出してその日を知ることができる。これがお寺の鳴らし物なのかと気付いた。先日十幾つある全てに柿渋を塗った。バイオリンはニスが大切だと言う話を聞いている。それなら、木の太鼓なら柿渋で行ってみようと考えていた。天板まですべて塗ってみた。それほど音が変わるとも思っていなかったのだが、これが変わったのだ。探っている音にわずかに近づいた。自然の呼び声のような響き。海の底から聞こえるような響き。
現在、3つ制作中である。その意図は天板の厚さの変化で音がどう変わるかである。どこまで厚いもので音が響くか。32ミリ厚の板で作っている。パドックでも、ローズウッド的な硬い材質のものがあったのでこれで作っている。箱も45センチの深さのある楠の一枚板にした。これが予想通りの高い澄んだ音になった。この厚い板が、指先で触れただけで鳴り出すのだ。少し制作の方向が見えた気がしている。逆に12ミリ厚の柔らかいパドゥクの天板も作っている。すでに天板は出来上がっていて、今まで作った天板で一番美しい図になっている。20枚くらい天板を作ったが、すべてその場で発想した図である。これは箱は杉板の軽めのものにして、響きの軽い音を求めてみようと考えている。底板はまだ迷っている。たぶんそこも杉板にしてみようかと思っている。もう一つは天板では中央付近だけにスリットを入れた場合どうなるかを試している。天板の周辺の大きさが音にどんな影響を与えるかである。これは底板もパドックで作ってみる。これは最大の箱の大きさになる。