二大政党制の失敗
アメリカでは、議会の様子がおかしい。2大政党制が機能していない。日本が目指したはずの2大政党制が、実は機能しないらしいということが、アメリカ議会で明らかになってきている。下院では共和党が多数党で、オバマ大統領の医療制度改革に反対している。どのような政策でも、全員一致などあり得ないのだから、そこは話し合いによって、両者不満のある妥協案で進めるのが民主主義である。その民主主義が最もうまく機能すると言われたのが、2大政党制の議会制度ということになっていた。ところが、国の財政が破たんするまで揉めてしまい。話が付かないという事態に立ち至っている。デフォルトといえば、ギリシャとアメリカが同じということになる。アメリカが世界一の経済大国であることは明らかなのだから、両党の議員の国民向けのパフォーマンスが、引くに引けなくなっているに過ぎない。民主主義政治の基本である、妥協することが出来ない。オバマ氏が登場した頃指し示した方向が、すっかり輝きを失っている。
日本も2大政党制に向けて、小選挙区制に変更した。そして期待を集め民主党が政権をとった。しかし未熟な政党であったために、2大政党制の悪い面だけを引き出し、決断力が失われた。その結果、今後30年くらいは、自民党政権が肥大化したまま続きそうな気配だ。これは55年体制の逆戻りであり、実態としてはさらにひどい事態になってしまった。悪いものと、もっと悪いものは入れ替わることはあるのだろうか。それでも中選挙区制であれば、同じ自民党内でも、意見の違う議員の存在がある程度可能であった。農業系議員と、土木系議員が同じ選挙区内にいる場合が多かった。加えて、鳩派とか呼ばれる民主的議員も自民党内に存在が許された。ところが、小泉劇場の頃から、党内の異分子排除になった。自民党長期政権への絶望感のようなものが、国民に次第に政治への期待感を減じていった。
2大政党制こそ可能性のある政治形態だと言うことになった。選挙制度改悪が行われ、小選挙区制となる。これが民主党政権への期待感を抱かすものとなり、能力があるなしではなく、チェンジ、チェンジでともかく変わることの方が、重要ということになってしまった。民主党政権は能力がなかった。特に官僚から見放され、経済政策で行き詰まる。当分、自民党から政権が変わることはないと考えた方がいい。今の選挙制度の中で、能力のある野党が育つとは思われない。様々な野党が、少数勢力として分散して存在はするが、政権を担当するような能力は育ちようがない。自民党政権がさらに強化されてゆくことだろう。その自民党自体が、小選挙区制により、新陳代謝を失い、世襲制党の性格をさらに強めてゆくことになる。腐敗の権力構造が待っている。こうして、日本の政治の劣化がさらに進むと予測される。これは中選挙区制によって出来た、過去の自民党政権とは本質的に異なる事態なのだ。ある意味独裁的政権に育つ可能性がある。
そんな分析をしていてもはじまらないことで、どうこの事態を解きほぐすかである。一番は自民党の中に、日本のことを本当に心配している善良な部分があり、自浄作業を開始し、小選挙区制をやめさせることが出来るかではないか。自民党内の多様性の確保こそ、現実の日本政治においては、期待されるところではないだろうか。中選挙区制の3人区があり、2人が自民党で、一人が野党であったとしても、今の状態よりは良いはずだ。自民党では小泉元首相が一人、脱原発への政策転換を主張している。これに対して、政府の態度が鼻でせせら笑うような、不愉快な発言である。まっとうな議論を嫌えば、民主主義は成立しない。自民党内にも存在するはずの脱原発派は発言で応ずることが出来ない。脱原発議論をすれば、干されることが目に見えているからだ。こんな政党のままで国が良くなる訳がない。諸悪の根源は小選挙区制である。