劇的改造劇・ビフォーアフター

   

リホームを家庭の問題としてとらえたテレビ番組のことである。2002年から放送され、現在第2弾が放映されている。「家族の問題を、リフォームで解決しませんか。」という呼びかけに応じた様々な改造が行われる。毎週200通にも及ぶ、改造希望が寄せられるそうだ。それは、比較的安価に改造が行えるからだろう。テレビだから、格安にできるというイメージがある。材料のレベルなどは、映像ではわからないが、テレビ企画としては、良いアイデアの番組だ。そこそこの視聴率を取っている長寿分組だ。何千万という価格を家作りにかける施主さんがいる。工務店は宣伝のつもりで、切り詰めて仕事を受ける。手抜きのない仕事をする。デザイナーは売名価格で無料に違いない。所さんとゲストの出演料ぐらいで、格安に作れる番組ではないだろうか。改造劇という、よいコンセプトが、家族の問題を引き出す発想が成功の理由だろう。

私の住んでいる家は、まさに改造に改装を重ねた家だ。越して来た時にご近所の皆さんから、この家は常に直していたんだと言われた。確かに、どこを見ても直しに直している。その上に、越して来た私も直しに直している不思議な家である。がけ崩れのために行ったコンクリートの土留め工事以来、まだ工事が続いている。土の流れ込んだ物置は取り壊さざる得なかった。崖の工事のために、作業場だった部分を取り壊さざる得なかった。浄化槽も直すことになった。直さなければ住んでいられないの繰り返し。雨漏りがしたので、屋根を変えた。そうしたら腐っている部分が見つかり、そこも直した。しかし、どんどん直して実に済みやすくなった。絵の倉庫も一番乾く場所に移した。2階である。2階は一部屋だが、倉庫にした。物置には土砂が流れ込み、絵の置き場は湿気るので、除湿機をかけ続けていた。結局湿気る家なので、畳がダメになった。いまさら畳を変えるより、板の間にすることにした。

2つの場所に置かれていた荷物をどこかに収納せざる得なくなった。それは、まさに劇的改造劇・ビフォーアフターでやっていた、古民家の改造を思い起こすものだった。一つの古民家とその隣に作った新しい家、をどうつなぐかであった。ただ違うのは、2つのアトリエをどうつなぐのかというのが、課題である。作品の制作の問題を、リフォームで解決しませんか。ということになる。古民家の方には、作品のギャラリーと絵のアトリエがある。新しい家と、その駐車場のようなスペースが、彫刻のアトリエになっている。寝室は工場の仮眠室。居間は工場脇の更衣室兼食堂ぐらいの感じか。この際、ずいぶんのものを捨てた。一番つらかったのが、木工をやるつもりで取っておいた、材料の山である。チサージュの材料も捨てた。大きな絵の木枠やパネルもほとんど捨てた。

一度書いたことだが、昔の絵のかなりの部分を捨てた。アトリエも変えた。すべては残りの時間を絵に集中しようということである。もし自分という人間に絵を描ける何かがあるとすれば、この先の20年くらいだろう。この後の絵を描くために、今まで生きてきたようなものだ。絵描きには老年型と、若年型がある。20歳そこそこで死んですごい絵を残す村山塊多のような人もいる。コローのように80過ぎて良くなるという人もいる。大抵の人は、60歳を過ぎると衰える。自分の絵の模写を続けて死んでゆく。私の場合はっきりしていることは、今まで大したものではないので、この先にかけるしかない。何もないところから出発するしかないと考えている。それが出来れば大したものなのだが、絵を描く罠のようなものがあり、前やったことをやっている。ともかく、環境を変える。これだけでもやりたくなった。そして最後の仕事に入ろうと思っている。

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