万里の長城遭難事故

   

あのトムラウシ遭難事故と同じアミューズトラベルという会社の企画したツアーで、又遭難死亡事故が起きた。トムラウシの事故でも、ブログに書いたのだが、登山では計画を立てると言う事がもっとも大切である。計画次第で良い登山に成るか、苦しい危険な登山に成るかほぼ決まってしまう。メンバー、ガイドの心が一つに成っていなければならない。リーダーの立場は極めて重要である。それをツアー会社が促成でチームを募り、運営すると言う事自体に無理がある。中高年の登山愛好家が、そうした登山を手軽に利用すると言う事が問題ではないか。前回の事故の反省が全く生かされていない。前回の事故の時も随分謝罪はした。要するに口だけである。又行政の監督も生かされていない。生かされていないというより、登山と普通の旅行との違いが認識されていない。トムラウシ事故後8回も状況調査に入っていたが、問題点は見つからなかったということらしい。どんな調査をしていたのか、形式的なものに成っていたと思われる。

60を過ぎた人が、普通に海外にまで登山に行く時代である。多分トムラウシに登山に行くより、中国登山の方が安かったりするかもしれない。旅行会社の企画で旅行すると、安いのである。一人で正規ルートで航空券を購入し、ホテルを予約し、出掛けると言うのは割高になる。倍にもなるということも珍しくも無い。第一、自分で中国での登山を企画できると言う人は少ないだろう。山によく一緒に行った、友人の医師がパキスタンのヒマラヤ登山の医師として参加した。その時は降りてきてから赤痢を集団で発生させ、大変なことになった事があった。海外では何があるか分からない。よほどの準備と、覚悟が必要である。トムラウシ事故の時も、ガイドが地元の経験者ではなかった記憶がある。そのツアーの為に雇用された人だった。今回も、地元ガイドのことは全く把握していない。登山経験者というより、通訳なのではないか。増して、この旅行社ではガイドに現地の事前確認もさせていない。

前回のトムラウシ事故では51日の業務停止処分を受けた。しかし、何故事業登録の取り消しが行えなかったのか。観光庁は再発防止策を策定し、ガイドラインの徹底とマニュアル作成を指示した。当事者である、アミューズメント社に、そのガイドラインは守られていたという事に成る。それがなぜ今回のように杜撰なツアーが組まれていることに成るのか。これはツアー会社の責任以上に、監督官庁の責任も問われなければならない。一定のレベル以上の登山ツアーには、特別の条件が必要なのだ。1、現地の状況の把握と下見。2、ガイドの登山経験と資格。3、参加者のミーティング。4、参加者の健康診断。5、登山装備品の義務化と点検。6、コースの申請と緊急時の対応計画の提出。この程度は最低限必要なことである。

本来であれば、登山は各地にある山岳協会等に所属して行うべきである。旅行会社が企画するのは特別のことと考えなくてはならない。どういうレベルの、どういう参加者がいるか分からないまま、登山を行うということは、良いことではない。山岳協会では、そのレベルに応じた企画が行われる。人間関係がすでにある中で、リーダー、サブリーダーが決められチームが組まれる事が普通だろう。旅行業者がもし行いたいのであれば、地元の山岳協会との協力が必要である。登山をすることの良さは、チームを作り、支え合いながら、一つのことを成し遂げるという経験である。参加者誰にも役割があると言う事の自覚。安易であるという事が、ツアー参加なのだろうが、それでは老人登山者がさらに増え、事故はまた起こることに成る。

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