プロ野球・ドラフト会議
岩手・花巻東高の大谷翔平投手。193センチの長身から投げ込む最速160キロの快速球が持ち味の本格派右腕。高校生で160キロを投げた選手は初めてである。ドラフト会議直前にして、大リーグ入団を表明した。その志が素晴らしい。青年よ荒野を目指せ。内向き志向をぶっ飛ばせ。しかし、ドラフト会議で日本ハムが一位指名していた。直前のため、変更が効かなかったという事もあるだろう。日本ハムが北海道の球団で、岩手出身のピッチャーに関心があるのは、当然のことである。指名があったドラフト会議後のインタビューでは、日本ハムと事前の接触があったことを思わせる部分もあった。アメリカに行くことを明確に表明している。日本では交渉権を獲得したチームが、契約金の上限1億5千万円がある。しかし、巨人軍で6名の選手に上限を越えた何10億円を支払をしていたという事が、朝日新聞では掲載された。
抜け道が色々あり、交渉の背景は複雑化している。例えば、1年目に成績が悪くても2年目以降10億円払うという約束をしても、ルール違反ではないらしい。5年契約をして、二年目以降1試合も出場しないで、莫大な給与をもらった選手もいるらしい。ドラフト会議と言うものが、新人選手の獲得にあまりお金がかからないようにと言う、抑制効果を期待したものであった。抑制効果が実は裏交渉の巧みさの争いとなるようだ。今度は大リーグの入団交渉と言う、新しい方向が出てきた。大リーグでは100億円を越える契約金を獲得した選手もいるらしい。つまり、新人選手にしてみたら、自分をどのように売り込むのが一番よいのか、複雑に考えるのも当然のことである。表面に出てこない、様々な交渉が背景にあるだろうと言う事が想像される。お父さんが日本に残って欲しいというのも、泣けるような話も、つい勘ぐってしまう。
スポーツ選手と言うものが、さわやかで純粋なものである。そう言う選手を眺めたいと言うのは、見る側の勝手な思い込みである。社会をそのまま反映して、クーベルタンのいうアマチア主義とはかけ離れたものに成っている。選手とは別に専門家が交渉に当たるべきだという意見もある。アメリカはすべての交渉を代理人が行う。日本では選手の交渉は代理人は禁止されているが、新人の場合はそうでもないようだ。まだ選手ではない上に、未成年が直接交渉することの方が不自然である。弁護士が交渉を担当し、紛糾したことがあったと思う。ドラフト制度でも、代理人交渉でも、球団側の都合のよい仕組みである。それなら、アメリカに行くという選手が登場するのも不思議ではない。大リーグのスカウトは地方大会まで見に来ている。そして当然、条件の提示もしているだろう。日本の交渉期間が終わった後、アメリカのチームと交渉することに成る。
ドラフト会議と言うものが、いかにも日本的な不思議な制度に変貌した。建前としては、ドラフト会議で交渉権を限定し、契約金の上限内で選手と交渉する。それではアメリカの条件と比べて納得がいかない場合、どうするかである。チームの力量を平均化しようというと言う意味は日米共通である。しかし、話が大リーグとの比較になるから、契約金以外の交渉が主になっている。表面は実にさわやかないスポーツ選手と言う建前、そして背景では泥沼の交渉が起こりかねない。ドラフト会議を見ていると、経団連を彷彿とさせられる。空気が似ているのだ。建前では日本の為、しかし、実は実は自分が勝者に成るため。そう言う事を日本人の多くが感じているにもかかわらず、建前の方で行こうと言うのがドラフト会議に成っている。スポーツ選手にだけきれいごとを期待するという訳ではない。もちろん大谷選手がどうこう言うことは全くない。