安倍自民党総裁の保守主義

   

今回の自民党の総裁候補5名はこぞって、以前より保守的な発言をしていた。民主党が一応リベラル派と言う事に成っているから、それに対抗するには、保守色を鮮明にしなければならないという事なのであろう。特に尖閣問題でナショナリストが増加したこともあるだろう。石原都知事が党利党略で最悪の時期に、手を付けた戦略である。それは立ちあがれ党有利のつもりであったのだろう。しかし、立ち上がれ党もびっくりのような、自民党の右傾化を起こした。領土問題をてこにナショナリズムを焚きつければ、選挙で目立つと考えたに違いない。問題はすでにそんな所を通り越し、一気に深刻な所まで進んだ。中国に起きている事を読み違えた。日本のナショナリズムは、経済には弱い。自分の会社の利益の為なら、領土などどうでもいいという本音がある。経済の前にナショナリズムはいつの間にか後退することに成る。

自民党は保守主義と言う判断ミスから、政権を奪回できないことに成る。本来のナショナリズムと企業の国際化とは、相反することだからである。尖閣の実効支配の強化や靖国参拝。村山談話や河野談話の撤回など、世界情勢が分かる人間にはできる訳が無い。多分安倍氏の総裁選の発言も、次の総選挙では忽ちに曖昧なことに成るだろう。自民党の原子力政策を見てみると良い。何が何やら全く理解できない事が書いてある。野党になった自民党は何も学んでいない。尖閣に港を作るなど主張する安倍氏はどうせ今だけである。前回だって安倍氏は世界から顰蹙をかい、歴史認識を曲げた。安倍氏が慰安婦に対する強制性を否定する発言をしたことが、米下院や欧州議会からの日本政府に対する謝罪要求決議になり、日本政府は行き詰ったのをもう忘れたのだろうか。河野談話や村山談話は、基本的な歴史認識を表明した国際的な謝罪なのである。これによって、何とか進路を訂正しながら、日本の外交の基盤をかたちづくってきた文章だ。

アジア各国の目から見れば、日本の戦争責任の回避は、ナチスを再評価する事と同じ事に成る。これを自民党が「見直す」などと言い出すことには、深刻な方向転換である。経団連をはじめ自民党を支える組織はどう考えるのだろうか。日本は世界の孤児に成る覚悟があるのかである。日本経済の失速はさらに深刻なことに成る。民主党どころでない、経済の停滞を招くことは明らかである。経済はナショナルを捨てている。尖閣も、竹島も、北方4島すら失いかねない。それでも保守主義を貫くと言うほど安倍氏の保守主義は、根性の入ったものとは思われない。前回靖国参拝をしなかったことを悔しがって発言していた。今度こそ参拝すると発言している。もし本気だとすれば、中国がどう出るかを分かっての発言か。中国と国交を断絶しても構わない覚悟が自民党の保守主義にはあるのだろうか。

「地場・旬・自給」を目指している。これこそ地域主義である。ナショナリズムと言う考えは全くないが、今いるその場で生きようと言う事を考えているのだ。鎖国をしろと言っている訳ではないが、それでも日本列島と言う土地で、人間は充分に生きていけると主張している。経済の為に日本の方角を誤るなと言いたい。その意味で、福島と言う故郷を捨てさせられたことは、国家の方針が地域の暮らしを崩壊させた犯罪である。自民党はこの方針を計画し、推進してきた責任がある。本来なら、その責任について国民に謝罪する義務がある。本当の保守主義者なら、国土を汚した責任を感じているはずだ。安倍氏は日本と言うものが、人間が生活する土地であるという意味を自覚していない。根のない国家主義者だ。これは帝国主義に連なりかねない危険をはらんでいる。自民党の総裁選の御蔭で、民主党が無様であるとはいえ、自民党よりは大分良かったという事を思い出した。

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