物理学者、ゴミと闘う

   

「物理学者、ゴミと闘う」(講談社現代新書)は町田市のゼロウエスト運動の先頭で、活動されている、広瀬立成早稲田大学物理学教授が書かれた本である。先生は町田市でごみゼロ市民会議の代表をされている。町田市はの活動は大都市において、ゴミをどこまで削減できるかに挑戦している貴重な事例である。小田原で広瀬先生のお話が伺えると言うので、とても楽しみにしていた。何故物理学者がごみの事に。二つあると思う。一つはお住まいが小山田地区と言う、焼却炉のある地域にと言う事。もう一つがものは、燃やそうが埋めようが、水に流そうが、物質の総量は変わらない。1トンのごみは物質として、どんな変化を加えようとも1トンであること。これは当然であるようでイメージしにくい。ごみは燃やせば、かなり減るように見える。とくに溶融炉のように、高温で燃やせば、何十分の1に成るような気がしてしまう。所がこれが、変化しているだけで、1トンは1トンであると言う。それが物理の定理。

気体になり水に薄められ、一見消えたように見えるが、総量は変化しただけ。そして今度はその薄めれた物質は散らばり、生物濃縮と言う形で、最終的に人間の体内に入る。ごみの事を学んでゆくと、いわゆる環境問題と言われる、複雑な体系に到る。何が良いか、何が悪いのか、先生の言われる所の、「ごみオタク」の世界に入り込む。善玉が悪玉になり、温暖化さえ良いという人と悪いという人が現れる。そこに、環境で一儲けしようと言う、例えば溶融炉メーカーなど、経済問題が登場するから、全体が複雑化してゆく。広瀬先生は物理学者としての物の姿の専門家として、実にわかりやすく。ごみの事を教えてくれた。本質を捉えている人しか、判りやすくは説明できないものだ。半可通の話だと、簡単なことまで難しくなる。何しろ先生は、わかりやすくするために、講演の中で西田佐知子さんの歌まで熱唱された。

質問がとても印象的だった。一つは「何故ここに行政の人は来ていないのか。いるなら手を挙げて欲しい。」もう一つは「町田市の取り組みは、小田原では既に取り組まれていることだ。」さすがに、ごみオタクの世界だ。熱心な100人あまりの聴衆が時間目一杯質問をさせてもらった。当然、私もごみオタクの一人として、モグモグのアピールをさせてもらった。さらに興味深かったのは、これを主催した国府津海岸をきれいにする会と言う団体の方々だ。何しろ、海岸の清掃活動を熱心にされている。しかし、小田原のごみ処理の実態については、良く知らない。先生にいわれて調べてみたが良く判らなかったと、言われていた。たぶん広域化の検討や、生ごみの堆肥化が加藤市長のマニュフェストにあったことなども、ご存じないようだった。ともかくこれは大切そうなことだ。と言う事で開催されたらしい。

ごみを「燃やして埋める」は大間違いだ!ここに原点がある。間違いなのだから、最小限にするよう、工夫をしてゆこう。こうした市民の取り組みが、紹介された。「出前ごみ広場」この取り組みはおもしろい。イベントがあると、出かけていってごみの分別とその意味を、学んでもらう。学んだらトイレットペーパーがもらえるそうだ。軽トラにコンテナを積んで、お祭りに行く。毎週日曜日にスーパーの駐車場に、分別カーで出かけてゆく「出前ごみ広場」。こんな活動は現実的かもしれない。そこでダンボールコンポスト「モグモグ」も宣伝させてもらう。小田原と町田の違いは確かに、ほとんどない。違うのは指し示している方向。町田の行く先は希望。小田原の行く先は混沌。燃やすの整理がついていないところ。

 - 環境関連