「陰謀論」の時代
米非営利団体「ポリティファクト」によると、トランプ氏は1月の就任から7月までの約半年間で、虚偽を含む発言や投稿を少なくとも33回繰り返した。戦略対話研究所は「公的な人物が裏付けのない主張を流布したり、信頼できる報道機関をおとしめたりすることが、社会の『不信の空気』に拍車をかけている」と指摘。「陰謀論は暴力行為の正当化などにつながり、社会の混乱や分断を助長しかねない」と警鐘を鳴らす。
2021年の現代思想の5月号の特殊に「陰謀論の時代」と言うものがある。そして、兵庫県知事選挙では、陰謀論を利用した選挙運動が成功して、犯罪者である知事が再選されてしまった。今では自民党支持者も斉藤兵庫県知事を支持している。そのことは、参議院選挙にも参政党を中心に継続され、ますます政治が陰謀論で動いて行く様相である。
嘘でも主張した方が勝ちと言うことになっている。つまり、多くの人が正しい判断を失っていると言うことだ。理性が失われつつある。とくに、若い人たちが陰謀論の影響を受けているのは、知性ではない物で動かされている。と言って良いのだろう。知識偏重の教育の結果、自ら考える力が育っていないのではないか。
これは農法についても同じことを感じる。参政党は有機農業の推進が党の方針であるらしい。その農法は正しい科学性のある有機農業では無いはずだ。実践に基づく農業では無く、いわば陰謀論による農法である。最近、肥料をやらない方が正しいというような、農法が広がっていることを感じる。
若い農業を目指す人が、そういう思い込みを語る。そういう思い込みによって農業を始めれば、すぐに挫折する。結果が出ない以上、自給農業であれば食べるものが手に入らず、餓死するほかない。農業経営であれば、すぐに倒産になる。ネット情報に従い科学的な思考方法を失っている。農業の陰謀論が汚染を広げている。
もちろん餓死はしない。それほど命がけの物では無いからだ。40年前に自給農業を始めるときに、5年間で実現できなかったら飢え死にするという覚悟で始めた。回峰行のつもりであった。鶏を飼うことで、肥料を手に入れていた。自給農業に鶏を取り入れることは素晴らしいことになる。
無肥料こそ優れた農法であると何故考えるのであろうか。優れた農法であれば、沢山の収穫物があるはずだ。毎日1時間働いて、食糧自給が出来ないのであれば、どこか間違っていると考えなければならない。無肥料で作物は取れるはエセ科学だ。たとえ無肥料に見える農法があるしても、何らかの肥料が再生産される仕組みがあるのだ。
ネット情報に踊らされている。例えば、「核兵器が一番安上がりな安全保障だ。」こう言う主張を参政党の議員が主張している。すると、単純にそうだと思い込むのだろう。何故核兵器が安上がりなのかの根拠は示されない。核兵器に関する様々なマイナス要因を想像できれば、安上がりとばかりは言えないと気づくはずだ。
参政党は有機農業を推進を政策に掲げている。有機農業と核兵器がどこでつながるのだろうか。有機農業はその背景にあるものは、プランテーション農業批判である。安全な食料の地域主義を含んでいる。食のSOGsである。ただ農薬を使わない、化学肥料を使わない。と言うだけでは有機農業の思想ではない。
参政党の登場は、資本主義社会の限界が来ているためである。競争社会の限界と行っても言い。正当な競争が行われていない為に、努力が報われないという座説感がある。これが陰謀論を信じたいという人が増えているためだろう。悪いことの原因を自分では無く、他に求める弱い人間の姿でもある。
世界が、グローバリゼイションから、国家主義に歴史が逆行している。自分の国が問題があるのでは無く、余所の国が悪いために危機に陥っていると考える人たち。トランプ主義がその最たるもので、世界の人の富を盗み撮りする悪い奴らを関税で取り締まってやる。と思い込んでいる。
少しずつは良くなると思っていた世界が、日に日に悪くなっているという現実が突きつけられている。時代が経過して行けば、迷信から人間は抜け出せると子供の頃は想像していた。ところが、時代は進化するのでは無く、後退を始めている。人間が徐々に衰えている。
陰謀論が広がる世界の原因を考えなければならない。人間にとって重要な物は、科学的な思考法である。正しい論理で思考する能力を高め、客観性のある思考を持つ人間に成長でき無い世界になりつつある。それが自給農を人力だけで行った私の結論であった。正しい自給農の実践によって、科学的な思考が身についたと言える。
正しい倫理が通用しない世界。正しく生きることだけでは、下層に生きることになる世界。普通の生き方が評価されない世界。ずるがしこい奴が、勝利者になる世界。人を押しのけ、貶める人間がのし上がる世界。それは拝金主義、不労所得を奨励する政府の結果である。
一番わかりやすい事例が、トランプの「選挙が盗まれた」という、陰謀論の主張である。普通の心理状態の人ならば、まさかと思うだけだが、多くの人がその陰謀論を信じてしまい、暴動を起こし国会へ侵入した。この暴動で死亡者まで出たのだ。
トランプは選挙に負けて、何時までも敗北を認めることが出来なかった。負けを認める勇気が無かった。自己本位の化け物のような性格のために、悔し紛れに選挙が盗まれたと、叫んだのだと思う。問題は安易にそれを信じてしまう人の登場である。
選挙が盗まれたと、本当のことだと信じてしまう人が多数居て、トランプはそれを利用し始めたのだ。計算高い、トランプは陰謀論を巧みに操作する。どんな悪辣なことでも、勝つためには手段を択ばない。勝てば正しいという価値観の登場。
そして、次の選挙では陰謀論を振りまいて勝利してしまう。暴動を起こした責任者が大統領に再選されるという、前代未聞のことがアメリカでは起きたのだ。トランプは再選されるために、様々な陰謀論を利用した。
コロナ陰謀論。ワクチン陰謀論。外国人労働者陰謀論。まるで魔女狩りの時代を思い出す様相である。多くのアメリカ国民が、誰かを悪者にして血祭りにしなければいられない心境に追い込まれて行く。アメリカは必ず敗北する。アメリカとの同盟関係は日本一国になるのかもしれない。
日本が自立できない理由は、80年アメリカの占領下にいたためである。アメリカの占領下で要領よく立ち回ることで、日本は経済大国になれた。ところが、この成功体験が、日本を自立できない国にしてしまった。それをアメリカの原爆の傘に依存しているということにしているが、本当はそれだけでは無い。
アメリカのまねだけをしている内に、アメリカのやることを正義なのだと思い込む国になってしまった。その結果訳の分からない戦争に参加してしまうような、自らの考える正義が判らない、自立心の無い国になった。今も、トランプ関税を間違っていると言えない国である。
アメリカが中国を覇権主義国家だと決めれば、オウム返しで中国を仮想敵国にしてしまう。そして、沖縄をアメリカの防人の島にして恥じることが無い。平和外交など全く行おうともしない。尖閣諸島問題を解決しようとしないばかりか、つまらない先入観から抜け出せず、対立の材料にしている。
陰謀論から抜け出すためには、正直な自給農業を目指すことだ。行動して、生まれる結果を直視することだ。正しい科学性が無ければ、食料自給など出来ないと言うことに気づかなければならない。実践し、科学的検証をする。この繰り返ししか真理に到達する道は無い。
のぼたん農園では、自給農業の実践をしている。ひこばえ農法、アカウキクサ農法を探求している。つまり1時間働けば食糧自給が出来る形の模索である。どのような方法でもかまわないが、結果がすべてである。正しい科学性をもって、思考する力を身に付ける活動である。