トランプ氏がアメリカ大統領に

アメリカの大統領選挙は残念な結果だった。トランプ氏の優勢が伝えられてはいたが、圧勝と言っても良い結果だった。トランプ氏をアメリカ国民が選んだことは、世界にとっても大きな影響が出てくることになるだろう。悪い影響になると考えざるえない。
何しろ、「移民はペットを食べている。」と言うようなデマを平気で口にする人間なのだ。普通の感覚であればそれだけで失格である。所が、そんな発言すら、十分計算された発言だったようだ。その方が、ある傾向の人達が待ち望んでいるからだ。
今回の選挙では、アメリカの貧困層の人達や、差別を受けていると感じている人達がより多くトランプ氏に投票したと書かれている。学歴の低い層とされる人達が、黒人やヒスパニック系の人達が、比率的にはトランプを選んだと言われている。民主党の副大統領だったハリス氏は少数派出身の女性大統領候補であったにもかかわらずである。
オバマ大統領が選ばれ時代のアメリカとは、大きな変化が起きている。その理由はもう一つ良く理解できないのだが、たぶん世界が資本主義末期の混乱の時代に入っている為がある。イスラエルの執拗な攻撃や、ロシアの侵略戦争が起きていることとも、関連しているのだろう。
アメリカは独善的な一国主義に成った方が特だ。という意思表示なのだろう。トランプは保守派と言うよりも、悪徳不動産屋だ。せんみつ屋だ。いかがわしいが、あこぎな商売が上手で、アメリカにずる賢く利益をもたらしてくれるだろうと考えているように見える。
豊かなはずのアメリカが病んでいる。豊かになることと、安寧な国になることとは違うようだ。えせ宗教のようにトランプ信仰が広がっている。富というものの欲望は、まるで病のようにとりつき、限りないものだ。どれだけ豊かになっても、さらに豊かになりたいという欲望にとりつかれてしまう。
アメリカは資本主義世界の競争に勝ち抜いてきた成功者である。その見にくい競争の中で、拝金病に病んでしまったようだ。拝金競争は人間をダメにするものだ。能力主義は差別主義なのだ。能力がある物は豊かになって良いという考え方は捨てなければならない。
アメリカ社会では格差が広がり、下層に位置するの50%の人達の富が2.5%にすぎない。そして上位10%の人達が、3分の2の富を締めている。この10%の富裕層がさらなる富を求めてあがいている。その代表のような人がトランプ氏だ。
そして一方で半分の貧困側の人達は、大統領に神の救いを期待している。能力主義で敗れた人達は、自力で成り上がることはもう不可能なことを自覚している。そして、大統領が救済してくれると言うことに期待したのではないのだろうか。そんなことはあり得ないにもかかわらず、トランプはデマを振りまいたのだ。
アメリカ社会が歪んだのだ。民主主議が後退し、敗北である。ハリス候補は正しい主張をした。平等な社会を目指そうとした。しかし、半分の下層に位置づけられた人達にしてみると、もう自助努力を期待されても、その希望が持てないのだ。社会が固定化され、這い上がれる人は希有な人だけなのだ。
資本主義世界の悪しき見本として、これからのアメリカを見ていなければならない。アメリカはアメリカの独善に進んで行くことだろう。アメリカ社会の格差がこうした、拝金病の原因である。上位一割の人間が富の3分の2を独占している。その拝金主義病の代表がトランプである。
この極端な格差社会は、人種などの出自の違いで生まれた、能力主義によって固定化されたのだ。能力があるものは富を得て良いという社会。能力の低いものは、貧困であって仕方がないという構造である。能力差別が蔓延してしまった社会の末期的な現象。
自分の力でどうなるものではないと言う諦めから、大統領に救いの神を見ていると言うことではないか。神頼みに応えるとトランプはデマを流し続けた。同時に、さらなる下層となる不法移民がさらに貧困層を追い込むと、叫んでいる。貧困層は不法移民と同等に扱われることを恐れた。
トランプは当然救いの神とはほど遠い人だ。犯罪も平気でやる、独善的で強欲な人だ。支持者をエセ教祖的に騙しているに過ぎない。これからの4年間、アメリカは厳しいことになるはずだ。富裕層はさらに富を増やし、貧困層はさらに増大して行くことだろう。
能力主義を全面的に受け入れているのだから、当然能力のあるものの絶対的な支配が起こる。能力が足りないものの不幸は自己責任という社会だ。ハリス氏に投票した人の中には善意の人が沢山いるはずだ。アメリカ人の中にある善良な心が、踏みにじられて行く4年間になることだろう。
日本は一日も早くアメリカと距離を取る必要がある。トランプは日本を利用する以外のことは考えていない。同盟国はアメリカにとって役に立つならば、配下として利用してはやるが、役に立たなければ金を出せと言うことになる。日米地位協定はさらにあこぎなものになりかねない。
自衛隊は米軍の先兵としての役割が押しつけられることだろう。自民党政権はそれをはねのける力もない。世界はアメリカと同盟と言うより、敵対せざる得なくなる。日本だけが何時までも隷属していれば、世界から日本が異端とされる可能性が出てくる。
ヨーロッパとの対立に於いて、トランプはナトウの同盟国として、頼りにしていては危険だと考えるはずだ。どうやってロシアと対抗して行くかを模索するだろう。同時にどういう形でロシアと妥協を出来るかを考えざる得なくなるのではないか。
ウクライナにしてみれば、大きな不満を持たざる得ないが、アメリカが武器援助から手を引く以上、戦いを続ける事が不可能なる。トランプの戦争をわらせるという策は、ウクライナを妥協させるという考えになる。侵略犯罪者のプーチンと同じような価値観を有するトランプである。
日本がどうするかである。東アジア版ナトウである。ただし、石破氏が考えるようなアメリカを中心にしたものではなく、中国やアメリカと等距離のものだ。軍事力で対抗するのではなく、平和国家の多数派形成を目指す。原爆保有国と対等に交渉が出来る場を、世界に作り出して行く。
これが世界平和の唯一の道である。不可能に見るほど、困難な道である。しかし、どれほど困難であるにしても、それ以外に世界が滅亡しないで済む道はないのだ。平和憲法を持つ日本はその中心になって、軍事力もちいない、対話によって、国際紛争の解決を目指仕組みを作る。
平和基金の構築ではないだろうか。物資や食料、そして資金を、世界で出し合い、問題解決のために使う。貧困から生まれる戦争も多い。平和を維持するためには莫大なお金が必要であろう。しかし、軍事費に回しているお金がすべて平和基金になるのであれば、世界平和も実現できるかも知れない。