2017年の稲作
今年は田んぼをやり尽くした感がある。生きてきて良かったというぐらいのやりつくし感である。どんなことでも、やり切ることができるという事はなかなかないものだ。今年は新しいメンバーの人達が特別頑張ってくれて、私自身余裕があった。そこで今までやれなかった、いくつかの課題まで試みることができた。良い仲間がいるからこそできたことだ。一人の農家であればやれない事ばかりだ。一年で多数の場所の田んぼを精査できるというのは、たくさんの仲間での共同作業の田んぼだからこそだ。農の会という組織の良さだ。こうした継続の結果、周辺農家よりも有機農業で多収の田んぼを実現している。有機農業は手間はかかるが、収量では慣行農法より優れているという証明がされている。今度このことを井上駿先生がまとめてくれて、有機農業学会で発表してくれることになっている。
いくつか今年新しく試みたことで、成果があったことを上げれば、まず1本植の実証実験が出来た。何本植えても稲の収量は変わらないという事が確認できた。1本から20本以上の分げつが取れる。その株を160株種籾として収穫した。15,5キロになった。つまり1本植1株で100グラムの収穫である。これは良い株を選んだものだから、そこまでは全体としては行かないかもしれないが、まずまずの出来であったことは間違いがない。3反の田んぼ全体では3万7千本植えられている。一株100グラムならば3700キロである。実際はその半分以下の収量の1600キロほどになった。良い一株を作るという事がいかに全体で重要になるかという事がわかる。悪い株はその半分くらいしか取れないものだ。もし、良い株だけの稲作になれば、3700キロという驚くべき収量になる。種籾を取るには1本植でなければならないという事もわかった。稲には遺伝的なばらつきがかなりあるようだ。その田んぼに適合する、よい形質を維持するという事の意味は大きい。
次に試したことは穂肥を与えるという事だ。有機農業では適期に肥料を与えるということが困難である。肥料はダラダラと効いてくる。そこで、分げつに効果のあるように、田植え2週間前にそばかす撒きをした。確かにその効果が見られた。むしろその肥料の残効が問題になる。そして、出穂3週間前にそば糠を撒いた。これによって穂が大きくなるかどうかである。確かに穂肥を使わなかった田んぼに比べて、穂が大きく粒張りが良くなった。また倒伏が起きないかも知りたかったのだが、倒伏とは関係がないようである。良い効果があったように見えた。出穂3週間前の追肥による倒伏は起きなかった。倒伏の起きた場所は、結局水が湧く乾かない場所だ。冬の間に、改善工事をしなければならない。
3つ目の実験は田んぼの水の分析が行えた。以前から田んぼに入る水はどんな水なのか。そして、出てゆく水はどんな水になっているのか、興味があった。調べたかったのだが調べられないできた。今年は長年懸案の水の調査を行う事が出来た。田んぼで生産が起きているという事が分かった。そして、稲の生育の段階で必要とする肥料が異なるという事も見えた。田んぼが発酵土壌になれば、田んぼ自体で生産されるもので、稲作は行える。これが東洋3000年の循環農業の姿だ。水の調査はこれからの継続課題である。土壌調査以上に興味がある。発酵土壌の生産性ということも水の調査で分かるかもしれない。田んぼの場合土壌分析だけでは正確な土壌環境は見えてくないのではないだろうか。
4つ目は苗作りである。今年はすべて苗代直蒔きである。苗の出来は実によかった。セルトレーに蒔いて居たころよりも作業の時間短縮が出来た。懸案だった苗取りの負担もだいぶ減った。良い5葉期の苗を作ることができた。そば糠の元肥を増やした。苗は滞りのない生育を目指した。まずまずの出来だったのではないか。来年は種の選別の塩水選をさらに厳しくして、良い苗を作ろうと考えている。
そして、それらの試みがみのり、畝取りが達成できた。有機農業は手間はかかるが収量では一般の農業より優れている。今年もこの証明が出来たことがうれしい。