有機農業推進法シンポジューム3
有機農業推進法は昨年12月全会一致で制定された。しかし、まだ認知度は低い。農業関係の行政職員でも、この法律を知らない人が少なくない。この法では、地方公共団体は推進計画を立てることになっている。是非、そうしたことを知ってもらう。シンポジュームの第1の目的。地元のツルネンマルティン参議院議員に基調報告をお願いした。足柄地域で有機農業によって、実際に農業を行っている4団体に報告をお願いした。「ジョイファーム」では長谷川功氏。「報徳農場」では田嶋亨氏。「有機農業小田原」では石綿敏久氏。「あしがら農の会」では代表の相原海氏。今まで団体間の交流は無かった。この機会に連絡が取れる関係になりたい。これが第2の目的。
行政の関係者にできる限り出席をお願いした。それは、実情を知ってもらいたい、と言う事につきる。有機農業なんて出来るわけない。こう考えている農政関係者が普通なのだ。しかし、消費者が変われば、つまり、冬でもトマト、果物は甘いほどいい。肉は柔らかければおいしい。こうした考えを食べる人が捨てれば、有機農業も可能なる。
シンポジューム後の活動こそ大切だと考えている。速記録から報告書を作った。この報告書を届けながら、今後の事を少しでも話せればと思っている。あしがら農の会では12月22日の収穫祭で、今後の取り組みについて、話し合う事になっている。ここに他の3団体の方もお呼びたい。もうだいぶ前になるが、横浜の安田節子氏から、一緒に県の方に働きかける活動をしようと誘われていた。そのとき思ったのは、有機農業の生産者が、各々の地域で、この法をきっかけに自分たちの存在を示すことが大切ではないかと考えた。この法が出来た経過のように、又内容が示しているように、実際の農業者がかかわるには、まだ距離がある。農業者が主体となり、自分達の有機農業の為に、どんな推進計画を持てばいいかは、主張しなくてはならない。自分達の活動の見える、地域で始めなくては意味がない。
それぞれに、この地域の農業の現状を話した。「この地域の農業は、この先大変なことになる。」「住宅が混在する。平場の農地が少ない。規模拡大できるような農地はない。」この地域の環境そのものが、どうなるのか、大変展望が暗い。「この有機農業推進法を、上手く利用して、運用して、何とかこの地域の農業が維持される。その方法が、見えないか。」これが共通の論点だった。
悲観的な内容にもかかわらず、きわめて活力に満ちた皆さんだった。こういう方達がこの地域を支えてきたんだ。そのことを思うと胸が熱くなった。それぞれに、道なき道を切り開き、不利条件のなか、全国でも注目されるべき形の4団体が、小田原に存在した。都市近郊という地域の特性をいかし「市民参加型の新しい農業の模索をしよう。ここに活路があるかもしれない」という提案だった。特に、傾斜地農業があしがら地域の宿命であり、特徴である。この不利条件が、有利条件になる可能性が市民参加の有機農業にある。きわめて風光がいい。この素晴しい自然景観を生かす為には、傾斜地が有利に働く。ここに、いくらかの行政の手立てがくわわれば、何か可能性が見えてくる。
市民が、家庭菜園レベルで、農作物を作るためには、コスト計算はいらない。充分有機農業で行ける。適地適作。それなら、放棄が進んでいる、傾斜地を市民参加型の農園の地域指定をする。環境保全のための農業地域として、有機農業に限定した、地域保全策を取る事は出来ないだろうか。この法では、国が推進地域として認定する事もできることになっている。そうなれば、それなりの補助が加わり、市民が参加できる、環境整備、基盤整備も可能になるかもしれない。ともかく皆さんが、バイタリティーに満ちている。難しい事でも、可能になるかもしれないという、希望が湧いてきた。