何故イスラム国が出来たか。
後藤さんの事が去来して、落ち着いて眠る事が出来ない。後藤さんは調べれば調べるほど素晴らしい人だ。どうも、シリアに入っても自分なら大丈夫だという意識があったようだ。残念ながら、その事は間違いだった。凶暴なテロリストには、後藤さんの愛の精神も通じなかった。何故、こうも中東地域で紛争が激化するかである。イスラム国を名乗るために、まるでイスラム教と言うものの中に過激思想があるかのように、見えてしまうが、全くそういう事ではない。歴史的にキリスト教世界とイスラム教世界との対立がある。それは、何百年にも及ぶ歴史的背景がある。それゆえに、どこかキリスト教社会にはイスラム世界を軽んずる傾向がある。勿論それは、アジア世界に対しても、指導、教化しなければならないというような勝手な、思いあがった指導性を発揮してきたわけだ。しかし、中東には石油と言う富が存在し、経済的な圧力に屈しないで存在できる。隷属せず、国家として独立性を保てる。
ここ10数年強まる、イスラムの過激派の信じがたいような暴虐の背景には、アメリカの正義の戦いが存在する。アメリカの行動があまりに、愚かで、配慮が足らないものだから対立が激化している。その事を考える前に、今回の事件が爆発する原因を、安倍氏が誘引してしまった、という事を確認して起きた。安倍氏は2人の日本人がイスラム国に捕まったことを認識していた。当然その事はイスラム国も知っていただろう。イスラム国は事件が表面化する前の段階で、後藤さん家族に二十億円の身代金を要求したらしい。そして、安倍氏は中東訪問をする。そして、エジプト、ヨルダン、イスラエルと歴訪する。イスラエルでは、ナチの資料館に訪れる。そしてイスラエルの国旗を前にして行った記者会見では、イスラム国に対抗する諸国に二億ドルを提供すると発表する。同時にホルムズ海峡に基地を恒久的に置く事も宣言する。安倍氏の言動によって、イスラム国にチャンスを与えたのだ。イスラエルで声明を出す、安倍氏がイスラム圏をどう見えるかが反映している。
イラクの独裁者フセインはクウェートを侵略する。サウジアラビアは米国に支援を要請。米軍がサウジに駐留する。多国籍軍が組織されフセインのイラクは崩壊する。ウサマ・ビンラディンは、アフガニスタンに移り、「アルカイダ」を組織し、2001年9月、米同時多発テロを引き起こすことになる。怒り狂ったアメリカはテロとの戦いを宣言し、徹底した掃討作戦を行う。テロ組織に向けて激しい空爆を繰り返す。多くの住民画アメリカ軍の空爆の、巻き添えになっている。戦争というものはそういうものだろう。後藤さんの視点はそのあたりにあったと思う。住民にとっては、フセインの独裁が望ましいものではなかっただろうが、アメリカ軍も嫌いだった。イラクから来た人たちが、悪い者と、さらに悪い者とを比較はできない。どちらも悪いのだと言っていた。こうしてテロとの戦いが、テロを助長して行く結果になっている。暴力の連鎖である
アメリカは自分達の正義を無理やり主張して、他所の国で空爆をする。その結果イスラム国が産まれることになった。結局は力で抑えつけようというアメリカの正義の戦略が、暴力の連鎖を産む事になった。暴力によって問題はより悪化している。確かに、平和的手段と言うものが、いかにも効果が無く、人間性を失った暴力主義者を前にして、風前のともしびである。この事に気付かない訳ではない。しかし、暴力主義者に対して、暴力で抑え込もうと言う事が、より暴力をエスカレートしている事は確かだ。後藤氏を殺害した暴力を許さないという気持ちは私にもある。許さないからと言って、暴力で仕返しをするような事は、問題をさらに悪化させることになる。しのびがたきをしのび、この悪い状況をさらに悪くしない事しか。いまできることはないのではないのか。今の事態をしっかり見届けることだと、後藤さんなら、きっとそう主張するだろう。