農業用水

   

あしがら地域でも、農業用水の取水量は、年々減少している。計算上は取水しているように記録されている、農業用水路でも、実際には管理されなくなっているところも増えている。田んぼの耕作が減少していることが、一番の要因である。農作物の中でも、稲作ほど水を必要とするものはない。2004年度、日本の河川や地下水からの年間取水量で最も多いのは農業用水557億㎥で、次いで生活用水161億㎥、工業用水が121億㎥であるが、製造工程での必要水は、533億㎥で、工業用水のかなりの量が再利用水と言う事になる。全体に加えては、地下水という形で124億㎥の利用と成っている。日本全体で利用可能な水の量は、計算上では、降水量6500億㎥のうち、4200億㎥という。利用可能と言っても、それだけ雨が降ると言う事で、一度も使わない水が、海に流れ出る事はない。というほど使った場合の事だ。数字的結論としては、降った雨の4分の1使う。

日本農業の豊かさの基本は雨の多さだ。中国の農地を見て、いかに水に苦労しているかがわかった。舟原にもいくつもの用水が流れている。しかも年間通水となっている。これはどんなにありがたいことか。このあり難さは、苗床を作って実感した。いつでも田んぼに水が引ける。これは自然の豊かさの象徴だろう。子供の頃境川でも、水争いはあった。あしがら地域でも、水にまつわる諍いがあったという。私の家の脇にも諏訪の原への用水路がある。残念な事に、これは途絶えてしまっている。ひとつ下の集落で利用してきた溜池もあるが、これも充分に整備されている状態でもない。これらの水を考えると、水と繋がった暮らしの、豊かさをもう一度考えてみる必要を、痛感する。水の持つ力を、総合的に見直す必要があるだろう。農産物となって輸入される水の総量は、農業用水に匹敵するすごい量だ。69%の食糧輸入とはそう言う事になる。

使わなくなった農業用水は、輸入農産物におきかわっている。日本に1年間に輸入される主要な農畜産物を生産するために必要な水の量は427億㎥との推計を、国立環境研究所と東京大学生産技術研究所の沖教授が発表した。2003年には640億㎥だったから、考え方の精度が上がり、修正されたと思われる。牛丼1杯は2㎥で、アメリカの292億トンの水を日本が利用していることになるそうだ。将来、バイオエネルギーの利用と成ると、水を燃やすと言う事になる。これは地球環境の新たな、危機となる。水も移動してはいけないもののひとつのはずだ。そこにあり、循環する事で、そこの環境を形成している。アマゾンの水を日本がエネルギーとして消費する事で、新たな地球環境問題が生ずる。

食糧の自由貿易が、各国のバランスの取れた、農業の形成を阻害する。水という視点から見ても、同様の構造が浮かび上がる。食糧の自由貿易が無理な水利用の地域を作る。収奪的農業によって、環境破壊に繋がる。舟原の水が、有効に利用されると言う事は、食糧が自給されることだ。舟原の人口210人が、自給するには、お米は2、5ha田んぼがいる。畑を併せて6ヘクタールの農地が必要となる。充分そのくらいはある。ただし今では、そこまでは耕作されていない。つまり、舟原の自給の姿を想定してみると、豊かな水環境の地域になるかがわかる。73戸の家があるが、これら家も自給する山はある。充分の燃料と成る里山もある。水車も5基あったそうだ。自給の暮らしが立つと言う事は、充分に水利用がされることにによって、人間らしい暮らしが営まれる。水の量だけ人が暮す。そう思うと、いくつもある水神様も、又再評価しなければならないだろう。

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