農産物の輸出規制
穀物生産国で、輸出規制が始まっている。当然の事だろう。「気候変動とエネルギー資源の制約、新興経済国の急成長、発展途上地域の人口増加、投機資金の流入」どの要因を見ても、食糧を輸入に頼る、日本の方針のあやうさがわかる。今度の洞爺湖サミットでは、日本が主導して、輸出規制解除を話し合うらしい。何を甘いことを言っているのか、先進国のご都合主義が透けて見える。これは消費者の言い分だ。お客さんなのだから、生産者も配慮しなければ、あまったときに買いませんよ。こんな風に主張するのだろうか。しかし、食糧について、そんな枠を作った所で、何の意味もない。敗戦後の日本で強かったのは、農家だ。庶民は闇米でしのいた。自国の食糧が足りないのに、お得意さんにだけは、輸出しろ。などと言うほうがおかしい。何処の国も、自分達の食べるものを自給するというのが、当然の義務なのだ。
穀物の輸出規制解除をサミットの議題にするというのが、そもそも日本のトンチンカンだ。他の出席国は、食糧が足りている。ロシアなど既に輸出規制を始めている。足りない日本一国が、その場でいい議論の誘導など、できるわけがない。足りなく成れば価格が高騰する。高騰して最初に困るのが、貧困層だ。途上国だ。飢餓的状況の国では、足りなくても輸出がされる。穀物相場は、3年前の3倍になっている。ここに投機的要因が加わっている。価格上々の3割の要因が投機的資金の流入だそうだ。バイオエネルギーが引き金になっている。本来人が食べる量は決まっている。安ければ沢山食べると言う事ではない。バイオエネルギーは必要となれば、際限ない量となる。加えて最大の要因が、中国とインドの経済発展だ。余裕が出来ると、畜産品に食の中心が移行する。畜産品は直接食べるより、5倍の穀物量が必要となる。
それでも日本は減反だ。お米を作ってはいけない。政府は今になっても、こう主張している。世界を見渡せば、生産した方がいいのは、普通に予測できる。もう減反政策などとんでもない世界の状況だ。足りなくなって慌てて、作るといっても1年かかるのが、お米だ。今作付け時期だ。ここで政策を転換しないと、遅い。たぶん秋には、お米は上がっているだろう。今年は農家にとってはいい年になるだろう。何を言われても、農協から嫌味を言われても、青刈りされるような不安があっても、まだ間に合う。ここは作付けすべきだ。先見の明があったと、見直されるはずだ。もしかして、お米は日本一国の範囲で見れば、余るかもしれない。しかし、世界の食糧事情から見れば、余るような事はありえない。どこかの国で飢餓が起こる。そのときに役立つ事になる。
政府は国際競争力のある農業を目指せと、主張している。間違っているのは、ここでの生産費の考え方だ。資材や土地費、特に労賃。こういうものが、日本の農産物の国際競争力を下げているだけだ。日本の農業は、既に相当の合理化が進められた産業だ。安易な国際競争力の政治家の発言は、農家を貶める、実にいやらしいものになっている事を自覚すべきだ。他の産業と違い、一次産業は、労力の削減に限界がある。又土地や気候条件も直接的に関係する。その地域での限界ある条件の中で、最善を尽くし、その土地に住める人の数が出るのが自然なのだ。食糧は、90%は自国生産にすべき品目だ。WTOの主張のままに行けば、食糧自由貿易の弊害が、これから途上国の間に広がってゆくだろう。WTOと言っても要するにアメリカの主張の、すり替えだ。もうアメリカの「言いなり便乗」は止めないと、危険水域だ。