グーグルと中国

   

中国は国家による情報統制が可能だと、本気で考えているのだろうか。インターネットが世界を変えるといわれている。現実世界が動き始めている。日本は既に変わったと見ている。民主党政権も、又その不評もインターネットが影響している。中国のような統制社会でも、その実験は否が応でも始まっている。グーグルを排除した所で、情報の大河の流れをせき止めることは不可能と考えざる得ない。経済と情報は深い繋がりがある。経済の自由化に伴い中国は開放路線を歩んだ。一歩踏み出したと言う事は、世界と同調するまで止まらないのが、経済である。それを否とするなら、国家を完全に閉じるしかない。中国は国家を開いて、経済発展を目指した。しかし、社会や暮らしまで開くことは躊躇いている。人民元の固定化とグーグルの撤退はその象徴である。

もし人民元が自由化されて、強い国際通貨になれば、今中国で想定されるインフレやバブルに対処しやすくなる。大きな破綻を回避できるかもしれない。また、中国国民全体の購買力を高め、中国経済の国際的バランスを是正することに役に立つはずだ。これはどの国も経済発展の経過で体験してきたことだ。結局は国家統制をやめない限り、そのアンバランスが国民の暮らしに溜まってゆく。情報問題も同じ体質がある。中国政府の主張どおり、社会にとって有害な情報を閉じることは、社会にとって直接の様々な場面で有益である。日本でもネット情報が犯罪の温床になっている。しかし、何が有益で何が有害であるか、この価値観は国家がいつまでも決めておけるものでない。遮断ができないで情報が漏れてくる結果、国家のバランスを崩し始めるのが、情報と言う得体の知れないものだ。

人民元を固定相場にして置くことは、為替的に当面有利であるかに見える。1ドル360円時代を思えば、海外製品といえば、高い高級品である。しかし、相場的に4倍に成ると、高いはずの海外ブランド品が、4分の1で買える。今ではシュミンケの水彩絵具だって使おうと思えば使える。ファブリアーノの水彩紙だって使える。日本の農産物だって、為替が360円固定なら輸出が可能かも知れない。だからと言って、固定しておく事では世界経済の輪に入れない。対等でないという事は、一見有利であるが、矛盾を深めてゆく。グーグル排除も中国らしい、経済的利益優先が見える。どこかで開かなければ、結局大きな付けを払わざるえない時が来る。これが今の中国の矛盾だ。国家管理の問題である。情報の自由は、人間というものを信頼できるかにかかっている。人民は怪しげなものであるから、自由にしておけば、とんでもないことになる。と言う発想。

人間にとってあらゆることから自由である価値。人間の一つの目標である。それは、まだ実現されていない理想の話である。今の人間のレベルでは困難な事である。アメリカは自由な国と主張している。他国の人権の抑圧に対して、強く非難をする。最もな場面も多いいと思うのだが、アメリカが完全に自由な国とは思えない。アメリカ人の内面巣食う、差別や暴力の精神の支配はむしろ根深い。自由は大切な目標である。しかし、その自由を確立するためには、人間はまだまだ成長しなければならない。その人間の成長過程では、多くの矛盾に満ちた状況を受け入れながら、妥協的に行くしかない。自由の方角を見定める事。犯罪の温床になる情報と、命が救われるような有益な情報が混在する、情報の混沌。この全てを受け入れながら、手探りで正しい方角を選択的に進むしかない。国が情報を遮断した所で、問題が悪化するとしか思えない。中国ではその実験をしようとしている。どのような過程で失敗してゆくのかは、見ている必要がある。

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