中国の旱魃

   

中国南西部で大干ばつが発生しており、数百万人が飲料水不足に直面している。前年9月以降の降雨量は例年の60%を下回り、河川も干上がっており、すでに数か月にわたって貴州(Guizhou)省、雲南(Yunnan)省、四川(Sichuan)省、広西(Guangxi)チワン族自治区の広大な農地と大都市の重慶(Chongqing)が水不足にさらされている。(c)AFP

日本の報道では何故かあまり触れられていないことである。中国の水の状況が年々深刻なことは、農業を視察に行って、それなりにわかっているつもりだ。1、もちろん雨が降らないと言う事が一番の原因。2、そして、工業に優先的に水が使われる。3、しかも、生活水準が上がるに連れて、生活需要も急増しているに違いない。どこの国でも農業は最後の水利用産業。汚染された水を使わざる得ない状況であろう。4、旱魃の原因は世界的な温暖化もあるが、中国自身の行う、環境破壊も原因しているのだろう。

中国の旱魃は実は、毎年言われている。その実態は良くわからない。中国政府の農業関係者から、直接聞いた話では、深刻な旱魃から農業被害は毎年あるが、中国は広いから雨の降る所もあって、全体では問題がない。と言われていた。公式見解のようなものでこれも、本当の所はわからない。私の判断では、その深刻さが年々増してきている。遠からず、農業生産も限界に達し、食糧不足は起こると見たほうが良い。世界の工業製品の生産現場に成ると言う事は、世界に水を輸出すると言う事になる。ユニクロのTシャツ一枚の方が、お米1キロより水がいるだろう。お米の方は水をはぐくみながら使うが、Tシャツの方はただ消耗してゆく。中国はほって置けば草が生えてくるような所は少ない。ドンドン土が固まり、レンガのようになってゆく。ただでさえ農業には大変な土壌だ。化学肥料の農業を続ければ、日本以上に土壌劣化が起こる。雨が少なければミネラルの蓄積アンバランスも、忽ちに起こる。日本ですら、黄砂の農業影響が言われる。中国農業は厳しい状況にある。

中国でも伝統的農業は、日本の江戸時代のような、人糞や蓄ふんを利用した、堆肥を作り農地に入れ続ける、土づくりを基本にした農業であった。見た感じにすぎないが、中国の農業は日本ほど化学肥料も農薬も使っていない。中国人の商人的発想では、植物工場に一気に飛躍する。いよいよ危うい所に中国は上り詰めるだろうと思える。しかし、中国の農民はそうしたこととはまるで異なる。悠然と先祖伝来の農業をしている。前回行った時は丁度、胡麻の収穫期で、どの農家も庭先で胡麻を干している。手作業で、胡麻を作っている。あのめんどくさい作業がまだ普通に行われている農村地帯。鎮江市郊外は、中国では最も豊かな農村地帯の一つである。沢山の水田は無いのだが、いくらかある水田でコシヒカリの栽培が行われていた。じつは一昨年はその村でも、水不足で田植えが出来ない状況があった。草取りはどうしているのですかと伺ったら、どうも日本ほど草は生えないようだ。

日本の農業にどういう影響があるか。中国からの農産物の輸入は野菜はなく成ると言う事である。多くの人が指摘してきたことだが、遅かれ早かれ食糧不足になると言う事である。しかし、日本と同じで農村は空洞化しかかっている。下放と言う言葉が農村と言う僻地へ飛ばされることを意味するように、地方で農業を普通に続ける人が重視されていない。国の基盤が危うくなっている。食糧自給が充分であった時期は、中国では短いかかったのかもしれない。毛沢東は常に食糧増産を第一に掲げ、自力更生を主張した。当時は、中国の伝統的技術が見直され、発酵技術なども国を挙げて研究していたようだ。そうした伝統技術は現状では埋もれている。これを再評価し掘り起こしてゆく。緊急にここ10年の間にこのことを行わないと、中国の農業は危うい。伸び切って倒れることになる。

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