ひこばえ農法は出発点で間違っていた。

   



 インドネシアのスマトラ島で行われていた、ひこばえ農法を世界に紹介された方が山岡和純先生である。その方がなんと石垣島の干川さんの大学の後輩と言うことが分かり、すぐに連絡を取って頂くことが出来た。それで今行っているひこばえ農法が、大切なところで大きな間違いをしていた事を教えて頂くことができた。
 確かに今のやっているやり方でもひこばえは出てくるし、それなりに成長もしている。ただし、今成長しているひこばえはいわば無効分ゲツが稲刈り語に成長している状態で、完全な再生稲とは言えないものである。その様子は明日書いておきたいと思う。

 通常の栽培よりも稲刈りを早めるという考え方を見落としていたのだ。そもそも遅刈りをいつもしていた。少しでも収量を増やしたいという思いが、あったためだ。農総研の久留米の研究の方では、むしろ稲刈りを遅らせてから、ひこばえ農法に入ると説明があったので、ついそちらの考えに影響されてしまった。

 ところが山岡先生の知見によると、稲は登熟期になり、実を充分に実らせると、養分は穂に行くことを止め根元の次の芽に行くことになる。その芽に栄養分が行くことで、その芽は穂を付けるというスイッチになるとみられる。栄養分を蓄えたひこばえは、すでに穂を形成する方向性を持つ無効分ゲツ、あるいは遅れ穂に成るものと言える。

 そのために普通の稲刈り時期に稲刈りをすれば、次に芽生えてくるひこばえは、すぐに穂を付ける性質を受け継いでいるため、15枚葉のそろうような普通の成長をする大きな株にならない。しかし、普通よりも早刈りをすることで、根元の方に養分がまわる前に株を刈り取ることで、次に出てくるひこばえに穂を付けるサインが受け継がれていない。

 結果芽生えてきた新しい芽はまったく種から発芽した苗のような状態にリセットされる、ということだ。確かに一部そういう状態に見える株も無いわけではなかった。これを10月頃に行う2回目の稲刈りの際に、色々挑戦してみるつもりだ。

 現在ひこばえと言っても遅れて出てきた無効分ゲツを大きくしたという成長状態に見える、これではひこばえで、前作と同じ収量を上げることは出来ないだろう。「とよめき」も同じように早刈りで健全な再生苗を生長させる方法を試みてみるつもりだ。

 ひこばえ農法には2つの利点がある。一つは稲刈り作業が分散されていく。のぼたん農園のように10枚に分かれていると、毎月稲刈りが出来るような状態になるだろう。これはお米の保存がいらなくなると言うことになる。毎月どこかの新米が食べられると言うことになる。

 2つめは石垣島でのみ可能な継続稲栽培になる可能性がある。石垣島の冬の最低気温は13度程度である。稲には確かに寒いことではあるが、枯れるほどの寒さでもない。12月に田植えをする人が居るくらいだから、気候的に日本で唯一継続栽培稲になる。

 自給する人にはより狭い田んぼで十分なお米が確保できることになる。年3回お米が収穫できるのであれば、20㎏づつ3回で良い。20㎏のお米なら、10坪の田んぼで取れても不思議はない。10坪の田んぼなら、草取りは完全にこなせるだろう。

 10坪で年60㎏であれば、一反で年1800㎏の収穫という、信じられないほどの収量になる可能性がある。自給農業の労働時間が一気に減ることになる。のぼたん農園の自給体験が画期的な物になる可能性がある。ここは真剣に取り組みたい。
 
 以下は山岡先生から頂いたmailですが、ひこばえ農法を試みようと考えている人には、これほど参考になる文章はないので、ここに載せさせてもらいます。先生は技術をすべて伝えてくれて、のぼたん農園のひこばえ農法を指導してくれているので、掲載を許してくれると思うので。

 ひとめぼれや、他の品種でも同様ですが、通常の収穫の3週間前になりましたら落水し、その後は収穫日(通常の収穫の1週間前)まで次のように水管理を行ってください。

 畦畔で囲まれた各区画の外周(畦畔の内側)に深さ5~10cm程度の溝を切ってください。これは、連続している必要はありません。所々で結構です。土壌水分が十分にあるかどうかを確認するためのものです。十分にあれば、溝の中に少量の水が溜まるはずです。全く溜まらなければ水分が足らないと考えてください。

 一つの区画は、必ず1日おきに見回ってください。もし、(前日の降雨などで)田面に少しでも水溜りがあれば、潅水せず落水したままにしておいてください。もし、田面に水溜りが全くない場合は、田面に走り水を掛けてください。

 走り水とは、用水路から田面に水を掛けて区画全体に行き渡らせますがが、湛水はしないで土壌に浸み込んだら終わりにする水の掛け方です。これを各区画について収穫日まで1日おきに繰り返してください。

 収穫日の1週間前になりましたら、追肥をお願いいたします。収穫日には、コンバインで収穫してください。刈り取り高さは、地上3~5㎝です。刈り取り後1週間は、潅水しません。

 大量の降雨によって湛水すると、稲の切り株の切り口に湿気でカビが生えやすくなります。湛水しないように、排水に気を付けてください。もし、稲株が冠水して水没するようなことがあると、全滅の恐れがあります。水没は絶対に避けるように排水管理をお願いいたします。

 刈り取り後、1週間も致しますと、葉が10~15㎝程度に伸びてきますので、田面に潅水し水深1~3㎝程度に湛水してください。このとき、もし手をかける余裕がありましたら、切り株を見比べて、欠株部や分げつ数が少ない株に、分げつ数が多い株の一部を移植(補植)して、株を平準化します。

 刈り取り後2週間で草丈は20~25㎝になりますので、通常の水深5~10㎝の湛水灌漑を行います。併せて追肥も行い、雑草を抜き取ってください。

 この時の草型は、親イネのそれと全く同じであるはずです。あとは、親イネを育てた時と同じように育ててやれば、日照や気温に問題なければ親イネと同等の収穫量が得られます。

 他のイネと育つ時期が異なるので、病虫害と、鳥害、獣害にご注意ください。
                             山岡和純

 - 楽観農園