サトウキビの栽培は独特なものだ。
崎枝のサトウキビ畑。もう少しすると遠くの家がサトウキビで見えなくなる。サトウキビの生育は素早い。手前は刈り取ったまま手を入れていない畑だ。奥の家の手前の畑は手入れの入ったサトウキビ畑。まだ背丈が1メートルぐらいだ。伸びてくると2メートルは超えるから、向こうの家は全く見えなくなる。
宮古島は美しい絵にしたい島なのだが、サトウキビで遠くが見えないというところで困った。島中がサトウキビで埋まっている。サトウキビの刈り取られた後だけが、絵が描ける島になる。沖縄ではサトウキビのことをキビと呼ぶ。粟、きびのキビかと思って聞いていたら、サトウキビのことだった。
サトウキビは沖縄の耕作地の半分を占めている。石垣島でも田んぼよりサトウキビの畑の方が数倍も広い。その一番の理由はサトウキビは手がかからないと言われていた。ではサトウキビはどうやって栽培するのか。これが案外複雑で分からないものだった。実際の畑は状態がバラバラである。
きびというのだから、イネ科のものでトウモロコシなどと近いのかと思えるが、栽培はまるで違う。栽培の個性的な作物と言える。日本独特の栽培法が生まれているのかもしれない。本にあるような手順だけは最近やっと理解は出来るようになったが、畑を見て今がどの状態なのかはまだ分からない。
私の絵の描き方では、サトウキビ畑の栽培状態が分からないと、サトウキビの畑は描けないので困る。描いたとしても何を描いているのか分からないことになってしまう。緑ならば、牧草もサトウキビも同じというわけには行かないのだ。
描く以上サトウキビを知りたい。ざわわ、ざわわと唄うにしてもサトウキビの見た目を唄うだけでは違和感がある。サトウキビと沖縄の風のことをきちっと知りたい。サトウキビがざわわと唄うのはどの季節なのか。やはり穂が出てもう刈り取るという夏の唄のような気がする。6月23日頃の唄と考えればいいのだろうか。
サトウキビ描くためにはすべてを知りたいと思う。畑を見て、春植えか夏植えか。苗を植えたのか、塊根から出てきたものなのか、そういうことが分からないとサトウキビ畑を描く気持ちにならない。すこしづつ畑で作業されている方に栽培を聞いている。
サトウキビの畑をよくよく観ていることになる。農家の方が何をしているかがすこしづつだが分かってきた。栽培には大きく2通りのやり方がある。これは大分前に今帰仁城の入口でサトウキビを売っているおばあさんの言われていた通りのことだった。
私はこのように聞いたのだ。「サトウキビは毎年植えるのですか。あるいは何年間か同じ株からかとれるのですか。」「そうさねぇー、3回はとれるサー。」ところがその意味がよく分からないままだったのだ。毎年完全に刈り取るが、3回ぐらいは再生させて採ると言うことになる。ただこの3回は4年半と言うことになるわけだ。まだ本当にそのことは確認していない。
その最初に聞いたときには理解が出来なかったことがやっと少し分かってきた。差し茎で芽出しをして苗を作る方法が主流である。茎にある芽から苗を作るのだ。もう一つが上を刈り取った後、地下に残った塊根から芽出しをする方法である。この二つが混ざっている。混ざっているというか、4,5年で繰り返されているのではないかと思われる。
種を蒔いて栽培すると言うことはない。品種改良はかなり盛んな作物のようだ。砂糖の含有量が違うらしい。背丈が違う。風に強い品種もある。太さも随分違いがある。石垣島の熱帯研で作出されたものもあるらしい。
簡単に挿し芽ができるから、種を蒔かないというのもあるのだろう。もちろん花も咲くし種も実るから、種から出来ないわけでもない。穂が出てしまうサトウキビはどこか栽培がおかしくなっているのではないか。あるいは、塊根から繰り返して発芽させていると穂が出やすくなるのかもしれない。穂が出ると糖分が少なくなるはずだ。
出くわして驚かされるのは収穫の姿である。巨大な機械とトラックを畑に入れて、一気にコンバインで刈り取る。栽培のサイクルが春植えと夏植えがある。良い芽を付けた茎を圃場に伏せる。そして130センチ前後の畝幅で植えて行く。畝幅が広いのはハーベスターの規格と言うこことがあるのだろう。
そして圃場を整備する際の培土機の幅と言うこともある。サトウキビをまたぐように大きなトラックターが培土機を付けて走って行く。かなり深い土寄せを繰り返して行く。追肥をしては土寄せをするということになる。
畝の高い畑ではこれが80センチの高低差にまでなるところがあった。これが赤土の流出の原因になる。畝間が川のように流れ、畑から土が流れ出て行く。良い土壌が流出することにもなる。土寄せが重要と言うことが農協の指導のようで、熱心な農家ほど土寄せをきちっリと行う。
熱心ではないきび畑は畝間に雑草がかなり生えてくるわけだ。畝溝に追肥をしては土寄せをしながら草を抑える。こうして栽培したきびを1年半栽培して収穫に至る。かなり栽培期間が長い作物である。こうした土寄せが赤土の流出に繋がっている。作土層が流されてしまうのだから、栽培法を考える必要があるとみている。
刈り取り適期がかなり微妙な作物のようで、収穫適期というのは1週間らしい。良い時期に刈らないと糖分の収量が下がるらしい。しかし、畑によってはその頃穂が出ているところもある。穂が出てしまうと品質的に良くないに違いない。
そして刈り取り終わると、しばらくすると芽が出てくる。芽がうまく出るためにはハーベスターで刈ったときの残渣が畑を覆っていると良くないらしい。その新しい芽を守るように又、トラックターで畑に入り土寄せを繰り返して行く。だから夏植えならば、今度は春植えと言うことになるのだろうか。このあたりの実際まではまだ確認していない。
宮古島はサトウキビが盛んだ。石垣島よりも熱心にサトウキビを栽培しているように見えた。石垣島では石垣牛のほうにち力が注がれていて、サトウキビもやっては居るが、どちらかというとサトウキビが草地に変わってきているようにも見える。
サトウキビで砂糖がとれるのは茎の部分である。茎をとるためにはまず上部の歯の部分は刈り取って捨てなくてはならない。このサトウキビの葉を牛はとても好きだ。サトウキビの葉を持って行けば、知らない牧場の牛でも寄ってきて食べてくれる。
サトウキビのことを普通はきびと皆さん呼ぶ。きびモチのきびとは違うのだが、きびと言えばサトウキビのことになる。確かに似ている雰囲気はある。そしてウージとも呼ぶ。島唄の「ウージの森であなたと出会い」はさとうきび畑の話である。
サトウキビの絞りかすはバガスという。これはバイオガスの燃料になる。金沢大学の理学部の方が、宮古島でバガスの堆肥か事業に取り組まれていた。なんとその方の奥さんが水彩人の仲間であった。後で知ったことだ。