石垣島は岩石の博物館と言われている。
こうしてつい石を拾ってきてしまう。又戻さなければと思うのだが、石に吸い寄せられて拾ってしまうのだ。中国の画道は石の素描から始まるそうだ。石には全宇宙が凝縮していると言われている。石の素描を通して、宇宙を感得しようというのだ。
石垣島は世界に類を見ない石の博物館である。地層が実に複雑なことにある。島に落ちている石の中に火成岩、変成岩、堆積岩、とすべての岩石がそろっている。石好きとしてはたまらない魅力の島なのだ。ついついめずらしくて拾ってしまうくらいだ。
中国の絵の修行とされていた。岩を墨一色で描き分けるというのは確かに難しいことである。火成岩と、変成岩を素描で描き分けられるだろうか。ここに世界観の修練がある。ヨーロッパ美術の人体研究よりも、中国の岩石研究の方が私には向いている。
石垣島で絵を描かせて貰っている場所でも石は実に様々である。削られた地層を見ると、見たこともない多様な地層になっている。いろいろ眺めているだけでも尽きないものがある。石に対する知識が不足していることが実に残念だ。石垣島岩石ツアーはないのだろうか。
石垣島は海底噴火で出来た海山がもとになっている。それが太平洋プレートの沈み込みで序じょに沈みながら、又隆起をするを繰返し、珊瑚礁を形成した。だから石灰岩地層も広がっていて、鍾乳洞も多くある。当然火山が元ものとの島なのだから、溶岩地形もある。
だから石垣島では採石場もあれば、コンクリート工場もある。砂も多用に存在する。建築材料が自給可能な島なのだ。この大きさの島でこの多様さはめずらしい限りである。是非ともブラタモリを撮影してもらいたい。
一番有名なものが、琉球石灰岩と呼ばれる、家を取り囲む石垣に使われている石である。琉球石灰岩には硬さが様々なようで、大理石くらいの硬さから、大谷石程度の柔らかさのものまで様々ある。費にも強いからかまど石にもなる石だ。
岩石が多様で、ついつい面白くて拾ってきてしまう。ブロック塀の上に並べてあるのだが、それがまるで岩石標本状態である。好きな石としては柔らかい石よりは硬い石である。理由などなく好みである。大理石よりは御影石の方が好きだ。標本的に言えば、花崗岩が好きだ。
しかし、島の人々の石の好みはむしろ柔らかめの石のようだ。庭石にわざわざ琉球石灰岩を使う。私は庭石としては御影石などの硬めの石の方がいいと思うのだが、どうも感覚の違いがあるらしい。旧家の庭の石がどうも不思議な感触がある。庭の造は京風の庭園を意識していながら、石が珊瑚礁ではどうも違和感がある。
花崗岩というのは溶岩が地中の深いところで冷えて固まって出来たものだ。馴染みの深いものが墓石である。彫刻の材料などでも良く使われる。建築材料としてもよく見かける。堅くてしっかりした石だが、加工はとても大変な石でもある。
これは庭石にもいい。色や形にもよるが、これなら庭石で行けるという石も落ちては居る。しかし、そうした石の庭はホテルで一軒あるだけだ。何故だろうか。
昔の石工さんはこの硬い石を叩いていて見事に割った。しかし石工さんの身体は硬い石からの衝撃の反射を受けて、40歳ぐらいで死んでしまう人が多かったそうだ。そう石工さんから聞いたことがある。
石に関わると言うことは昔からは大変なことだったのだ。ヨーロッパは石の文化だ。ピラミッドなど作るにはどれほどの人間が石に殺されたのであろうか。大理石でできている。内部は粗めの石で、表層は磨き上げられた大理石だったらしい。花崗岩でなければ柔らかさうなので大丈夫かもしれない。
花崗岩が硬く丈夫な石英が主成分になっているのに対して、大理石は石灰石が主成分となっているためかなり柔らかいという特徴がある。ヨーロッパでは過去しやすい大理石がうまく使われている。装飾的な壁面などに美しい模様の花崗岩が使われる。大理石は変成岩と呼ばれる。岩石が熱や圧力で変化して出来た石である。ピラミッドも場合によっては表層には花崗岩が貼られていた可能性はある。見たことがないから分からない。
学生の時の地学の授業で岩石標本を覚えると試験があり、大体石を見ると名前は分かるようになった。名前が分かると興味が深まる。あれから50年も経って、今では名前が思い出せなくなっているが、まだある程度は分かる。
崎枝には粘板岩の地層があり、これも独特である。これは硯などに使う石だから、探せば使えるものがあるのかもしれない。拾ってきて、シーサーの台石として使っている。平らで敷石には向いている。最初の写真の手前の石は粘板岩である。堆積岩が圧力を受けて変性したもの。チャートなどもそばの地層にある。
チャートは堆積岩の中でも堅いもので火打ち石にも使われる石である。子供の頃から一番好きな石だった。今急に思い出したのだが、富士山のそばには岩石博物館という施設がある。ここは一日居ても飽きないくらい面白い場所だ。ここにいろいろなチャートが飾られていた。
不思議な石で様々な色がある。石の中に虫の化石があると言うことも言われるが、余りに堅くて到底そんなタイプの石には見えない。東海地方の石器などではチャートの割れた鋭い断面を利用した石のナイフや矢じりなどがある。黒曜石などより、どこでも出土する石だからかもしれない。
確か石垣島では石器文化は見つかっていないと言うが、材料はかなりあるようだ。石垣島の岩石の研究はかなり深い。独立行政法人 産業技術総合研究所の調査があるが、かなり広範囲の調査がされている。屋良部半島なども岩石的に魅力があると思うが、残念ながらここの調査では島北東部だけである。