「小さな田んぼのイネ作り」 アラオコシ ④

   

26日、4時30分の水の溜まり始めた田んぼの写真。
田んぼの準備を始めた。田んぼの直接の作業はアラオコシから始まる。5月22日から25日までの4日間行った。ギリギリまでアラオコシは遅らせるためには3つの理由がある。一つは田んぼに水が入ると、雑草が発芽を始めるからだ。もう一つは緑肥の種が、結実するのを待っている。もう一つはミツバチが可愛そうだから。1日3時間手作業でアラオコシをした。このかん、渡部さん、太田さん、杉山さんが手伝ってくれた。私は半分の1畝半の作業をしたという事になる。25日に水を入れ始めた。連日の作業で翌朝腕が張っていたが、痛いというほどではない。この田んぼは手作業でどのくらいの時間がかかるものかの確認をして行く。アラオコシはなかなかの肉体労働である。昔の屈強の青年は田んぼのアラオコシを一日1反を深くやったと書かれている。信じがたいものがある。オリンピック選手のことで、普通の人のことは歴史に残らない。普通の人はその半分の5畝くらいではなかったのか。私が全体の半分アラオコシしたので、1畝半のアラオコシで、12時間であった。少し衰えに驚いた。昔の70歳ならば、年寄りも良いところで、たぶんアラオコシは出来なかっただろう。アラオコシが出来なくなった時が田んぼ引退の時だと思っている。予定では5日間を見ていたが、5日間一人でやったとして、2畝が限界だった。このくらいが、自給田んぼにはちょうどよいのかもしれない。田んぼ全体のトラックターによるアラオコシは27日までに終わる。終わったところで水を入れる。29日、30日が代掻きになる。苗取りが、30日31日になる。そして、田植えが6月1日2日だ。
苗は例年と同様に順調である。苗が順調に生育するという事が、畝取りへの道である。手前がサトジマンで、奥が喜寿糯。順調で当たり前のことなので、真剣に管理している。1日3回は見に行く。今年は7つのほとんどの田んぼの苗が、直播になっている。セルトレーより直播の方が合理性があるという事が徐々に浸透してきた。良い苗なら、1本植が出来るから、播種量を減らしても収量は減らない。良い苗とは何度も書いているが、5,5葉期で両側に分げつのある苗である。しかも、それを5週間で作らなければならない。イネは種まきから出穂まで、15枚の葉をほぼ1週間に一枚出してゆく。この速度が稲の成長の順調な速度なのだ。苗はすくすくと停滞のない成長速度が必要になる。週一枚よりも遅い苗は何か改善すべき問題点がある。イネの種を直播にしてみればわかることである。最適な環境で直播にすれば、イネの生理が1週間に一枚という事が確認できる。現在4週目で4葉期である。わずかに分げつが見える。
アラオコシを手作業でやるのは、利点もある。やりながら、石やガラスを取り出すことが出来る。とんでもないことだが、田んぼにごみを投げ入れる人がいるので、結構ガラスがある。ガラスを拾う気持ちの情けないこと。道路の脇の田んぼなので、車の窓から飲み終わった瓶や缶を放り投げる人間が居るのだ。高い崖の下なので、そのビンが割れて田んぼに入る。ひどい話だが、現実にあることなのだ。田んぼに対する、敬意のようなものが失われるている。昔なら、そんな罰当たりのことはできなかったのだろう。アラオコシをしながら、土の中の様子を見ることが出来る。土の中は意外に複雑である。鉄分の錆びたような赤い部分と粘土分の塊のようなところが入り組んでいる。水が湧いてくるところもあれば、乾いたところもある。草の根の深さもわかる。この田んぼは去年稲刈りが終わりそのまま、レンゲを蒔いた。秋起こしをしなかった。レンゲはそれなりに覆ったのだが、冬の雑草もサンゴ草やセリ、カラスムギ、ネズミ麦、雀の鉄砲、などが混ざっている。
作業の途中の様子。レンゲの花を長く残した理由がもう一つあった。田んぼで飼っている、ミツバチが可愛そうだからだ。アラオコシを始めて、4日目。蜂が分蜂をした。レンゲが無くなったので怒ったという訳ではない。レンゲの種取りをすればもっと良いのだが、これは意外に大変なので、一度で懲りた。レンゲの草部分も枯れてきている。相当な腐植分がある。レンゲが一番腐植量が多くなる冬の緑肥だ。花盛りがレンゲを刈る適期とする考えもあるようだが、それではまずミツバチが可愛そうだろう。そんな馬鹿なことをした人は江戸時代には居なかったはずだ。田んぼで重要なことは腐植量の増加であって、窒素分は心配いらない。雑草の根は起こすのが大変だった。レンゲはそれほどでもない。レンゲは根が細かく浅い。腐植量は結構ある。地中にはオケラがいる。ミミズだって、アメンボだって、、苗床には居た。やなせたかしさんは凄かったな。などと思いながらアラオコシを続けた。

 - 「ちいさな田んぼのイネづくり」