「小さな田んぼのイネ作り」 代掻き ⑤
代掻きをした。アラオコシが終われば水を入れて、田んぼを水で満杯にする。この時が一番水が一番必要な時になる。地域全体で田んぼの水が必要なる。川の水もぐんと減ってしまう。手順を考えて上手く水を溜めなければならない。アラオコシをした土の塊を徐々に水が濡らしてゆく。初めはなかなか水が溜まらないはずだ。田んぼの周囲を足で踏みながら、穴を埋めてゆく。水を追いながら、穴を埋めれば田んぼ全体に水が広がる。冬の間に、モグラやネズミや沢蟹が畔に穴を空けている。これを塞がないと田んぼには水が溜まらない。周囲の畔際から、代掻きをして行けばいい。スコップでアラオコシをした土の塊も、水で濡れれば、簡単に崩れるようになる。田靴を履いて、土を崩しながら、ぐちゃぐちゃと練りながら、平らにしてゆく。鍬を持ちながら、土を砕き、平らにする。この時田んぼ全体が平らになるように、土を移動させる。普通田んぼの中央が高くなることが多いいはずだ。全体としては、入水口から、排水口に向い、わずかに入水口が高い方がいい。水を止めれば、忽ちに田んぼの水が無くなるという状態が良い代掻きである。
翌朝5時、水が満杯になった田んぼ。
機械で代掻きをすれば、土はシャーベット状になり、トロトロになる。一見細かくて良い代掻きに見える。一般にはタテ浸透が少なくなり、田んぼはよくできると言われるが、考え方を変えて、タテ浸透があるから、良い田んぼになるという耕作が、小さな田んぼの特徴である。シャベルと足でやる代掻きはかなり荒いものになる。この荒さを生かした田んぼ耕作にしなければならない。タテ浸透が大きいという事は、水が沢山必要という事になる。しかし、田んぼの水利が良くなっている。その上田んぼが減少している状況下、水が足りないという事は、まずないだろう。穴をふさぎ、充分に水がある中で代掻きをして行けば作業も楽だ。田んぼも平らになる。代掻き作業をしながら、石を拾い、外に出す。石は出来るだけない方が良いので、どんな作業の時でも気が付いたら田んぼから外に出した方が良い。
朝の苗床
田んぼに緑肥があまりに多く繁茂してくれた時には、アラオコシの前に刈り取った草を一度外に出しておくのも良い。ナイロンカッターのかりばらい機があれば、草は粉々に砕けるので、粉々に砕いておけば、アラオコシ以降の作業は楽になる。刈払い機も使わないで鎌で刈るという事であれば、一度持ち出しておいて、田植え後に草を田んぼに戻すと、水中敷き藁状態になり、雑草が出ることを抑えてくれる。この敷き藁抑草は手間がかかるが、とても良い田んぼになるので、例えば、周囲にススキでもある田んぼなら、全体に敷き詰めてやる手間をかければ、素晴らしい田んぼになる。冬の間に緑肥が充分に育たなければ、大切な腐植不足になる。畔に生えた草は必ず田んぼに入れる。野菜の残渣も田んぼに入れても良い、ジャガイモを入れると草が出ないといって、目の出てしまったジャガイモを大量に田んぼに入れる人もいる。これは本当かどうか経験がないのでわからないが。腐植を増やす意味でも、田面に日に当てないという意味でも、植物残滓を田んぼに入れてゆくことは良いことである。
田んぼ全景
足踏み代かきは子供でもできる。昨日は小さな子供が4人来て、田んぼで遊んだ。10人での代掻きになった。子供がいると作業がはかどる。大人が働く姿は、子供には良いものである。子供が遊ぶ姿は大人には良いものである。楽しい作業にならなければ、自給の田んぼをやる意味がない。農家の親父に、お前たちは田んぼで笑っていて不謹慎だと怒鳴られたことがある。笑いのないような田んぼだから、子供がやらないのだ。そうは言い返さなかったが、自給の田んぼは楽しいから良いのだ。代掻きは3畝の田んぼで12時間である。大勢でやったので、私一人でやった場合の時間を割り出した。私の方がまだ早いようでもあるが、一人でやれば疲れてしまうだろう。12時間というところが良いところである。代掻きが終われば、水をためておく。水柄待ったところで、トンボで均しをするのが次の作業になる。
代掻きを始める前の田んぼ。