石垣市で住民投票ができない理由

   

 

 石垣市自治基本条例の勉強会があった。講師は島袋純琉球大学教授。場所は石垣市大川公民館。150人くらいの人が集まっていた。夜7時30分から始まり、9時30分を過ぎていた。何故、市民投票ができないのか、理由がやっと分かった。石垣市の市民条例では市民投票が行われる方法として2つの要件がある。ところがこの条例案には不備があるのだそうだ。そして議会ではその不備を理由に住民投票を拒否したというのだ。全く驚くべき理由だった。そもそも市民条例の27条に4分の一の市民の要求があれば、市議会の判断を経ずとも、市長は住民投票をしなければならないとなっている。今回の住民投票請求の署名総数は有権者の4分の一より多い。3分の一である。本来であれば、請求署名が4分の1を超えた段階で、すでに、住民投票は可能になっていたのだ。ところがこの請求の方法に不備があるということで、議会の承認を経なければ、住民投票ができないというおかしな経過をたどることになってしまった。議会は申請の不備を理由に住民投票を拒絶した。

本来であれば、議会にかけずにそのまま市長は住民投票をしなければならなかった。ところが、不備な条例に基づく住民請求を、不備を理由に議会に上程させ、そのうえで不備を理由に住民投票を拒否した。明らかに住民の権利を市長と市議会がはく奪したということになる。市長や議会は自己矛盾をさらけ出したことになった。市民が請求を始めるときにすでに、この住民基本条例の成立の要件とその説明については問題になっていたのだそうだ。昨年12月にこのやりや、議会質問の結果、このやり方で問題はないという、行政の回答があって、住民投票の請求の署名がはじめられた経過があった。ところが、今になって、この枠組み自体がおかしいということを理由にしたのだ。住民投票をさせたくない行政としては、住民の請求が不備になるように、署名活動の開始時点で、議会事務局は認識していたということになる。これは市民の権利をないがしろにした、悪意のある行政の指導だ。たとえ、市民のすべてが住民投票を請求しても、住民投票反対の市議会議員と市長は住民投票を拒否することが可能だと考えていたことになる。これでははじめから住民投票は議会にゆだねられているということになる。こうした経過を経て住民投票を希望する市民をだました結果になった。

このようなばかげたことが何故起きてしまったかと言えば、そもそも住民自治基本条例が不備だったからである。市長と市議会は住民投票請求の署名活動をできなくするために、この不備を理由に挙げたわけだ。そうであれば、そもそも不備な住民基本条例をそのままにしておいた責任は、市長と市議会にあるといえる。今後その責任は、裁判をしてでも追及されなければならない。本来であれば、投票をできる請求を拒絶された市民としては、不当な理由を持って権利をはく奪された結果になっている。この責任は市長と市議会にある。それが住民基本条例にある民主主義であろう。もし、市議会と市長に民主主義の考えがあるのならば、条例に不備があろうとも、行わなければならない住民投票である。市民の3分の一が、署名を持って要求しているのである。市議会も、市長も今からでも住民投票を実施することはできる。過ちをあらたむるに、遅いということはない。是非とも、住民投票を実施してもらいたい。このまま市民請求を無視して進めるということは、住民投票を請求した市民の希望を、ごまかして抑え込んでしまう愚かな行為になる。住民の行政不信につながってゆく。

自衛隊基地問題にはまだまだ先がある。自衛隊基地の予定地の大半は市(私)の土地だそうだ。これを自衛隊に売ってはならないという、市民請求はできるはずだ。今度は条例の不備の盲点を突かれないように、十分練った形で、市民投票を請求すればいい。市民を欺いて、自衛隊を誘致しようとしている誘致派の姿が明らかになった以上。今度の請求は3分の1どころか、2分の1を超えるであろう。健全な民主主義というものはそういうものだと思う。それでも、住民投票をさせないというのであれば、市長をリコールする以外にない。問題は民主主義の根本にかかわる。市長は安全保障に関しては、国の専権事項であるという論理で、問題の本質に応えることから逃れている。明らかに問題に向かい合わない、間違った考え方である。安全保障問題に地域住民が無視されていいなどという考え方は、憲法違反である。第一義的には市民の安全が最優先されるべきである。当然市民の判断がされない限り、自衛隊基地の設置ができるはずもない。原発設置と同じと考えてよい。今回の住民投票拒否は自衛隊推進派が、大失敗をやらかしたと考えたていいのではなかろうか。住民の中には自衛隊推進派はとんでもない、詐欺的行為をしたという意識が高まってきている。まだ先はある。むしろ、自衛隊反対に弾みがついたのかもしれない。

 

 

 - 石垣島