TPPで日本の食はアメリカ基準になる。

   

TPPが実施されると、2030年代の日本農業は2極化すると想像している。普通の農家はなくなり、企業農業と自給農業である。そして中山間地の農地は大半は放棄地となる。企業農業の方は労働力を海外の労働力に依存している。農業を行うことをご先祖から受け継ぎ、次世代に引き継ぐ事を役割と考えてきたのが農家である。それが瑞穂の国の文化的伝統であったのだが、この文化は消える。かつては農協を支持母体の一つとしていた、保守政党である自民党がこれを実行しようとしているところに、日本の未来像の大転換がある。あらゆるジャンルで企業こそ効率が良いという見方。大企業をエンジンとすることがアベノミクスである。そのため大企業の権益を守ることが、日本の国際競争力を高めるという読みなのだろう。かなりの国民はそれを支持しているようだ。いわゆる農家は消滅するだろう。その前提で自給農農業のこと考える事が良い。

食生活がさらにアメリカ化されている。食品自体が変わるという事である。アメリカの安全基準を受け入れざる得なくなる。私がおそれるのは遺伝子組み換え食品のアメリカへの同調である。アメリカの農業は企業農業である。利益を上げるためには、特許権というものを重んじている。作物の品種にも特許を課そうとしている。特定の除草剤に耐性のある作物を作り、作物の栽培のシステムを合理化する。その遺伝子組み換え作物の種子と除草剤の組み合わせ販売で利益を上げる。モンサント方式である。殺虫効果のある作物というものもある。いずれにしても、その長期的安全性には疑問があるうえに、自然界にそうした作物が広がった時に、自然がどのような影響を受けるのかも、検証されていない。ヨーロッパでは基本受け入れを拒否している。日本も揺らぎながらも、何とか受け入れないでここまで来た。しかし、TPPが批准されれば遮ることはますます難しくなるだろう。文化を捨てるという事はそういう事なのだろう。

畜産物においては、ホルモン剤や狂牛病の問題がある。今までのところ、かなり杜撰であるし、押し切られてきたのだが、それでも何とか一応の歯止めはある。さすがにアメリカ肉を食べない理由である。しかしこれもTPPが批准されれば、歯止めが利かなくなることは目に見えている。食生活をどうしたらいいかである。自給をするか、アメリカ式にやるしかなくなるのだろう。富裕層の食べ物が別になるのだ。そうした安い危険な食品を富裕層は食べない。いわゆる有機作物に日が当たるのかもしれない。有機作物の生産者は富裕層のための作物を作る農家という形で、存在価値を高めてゆくのかもしれない。私はまっぴら御免である。となるとまともなものを食べたい人は、自分で作るほかなくなるという未来である。自給農業を続ける人こそが、日本文化の継承者という事になる。いつの日かの目覚める日を待つことになる。全体のことはあきらめざる得ない。諦めてはいけないのだが、現状の社会を見れば、正面攻撃よりは当面迂回である。

世界は食糧危機に陥る。これも考えたくもないことだが、2030年には今より20%も増える人口を満たす食料がない。アメリカ様式の食糧が今より20%の人口増加に対応できないだろう。これもまた、貧困層の問題になるだろう。食糧が不足し大飢饉が起こるような事態が確実に待っている。その時になって初めて、食糧が工業製品とは違うものだと気づく。食糧はなければ1か月で人は死ぬ。世界企業の競争に巻き込まれてゆく農業は、人口増加を良しとすることだろう。3%の人間で、次の世界に繋いでゆく農業を継続することではないか。全体のことで、消耗してしまうよりも、心ある者で未来に希望をつなぐことではないだろうか。それが自給農業である。したたかにあらゆる状況を利用して、3%の暮らしの模索である。

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