安保法案の採決

   

安保法案は結局歯止めなく衆議院の委員会で採決が行われた。審議すればするほど、この法案の問題点が表面化した。それは国会論議で疑問が生じたというより、憲法学者の違憲判断によるものだ。法律の専門家がこれほどはっきりと違憲と判断した法案が、国会を通過して、最高裁で審議した場合どうなるのだろう。当然、違憲ということになるとなりそうだが、そうでもないと政府も考えているのだと思う。自衛隊ができた時も、当事の憲法学者は違憲と主張した。ところが最高裁が結局政府の圧力に負けたというか、違憲判断を出すことはできなかった。今回も、三権分立と言いながらも、司法が憲法学者の人たちと同様の判断ができるかと言えばそうとばかりは言えないのだと思う。だから平気で違憲の疑いの強い法律を国会で成立させようとしているのだ。それにしても、民主主義と立憲主義などというものは、肝心な時には政府は無視するものだということを、目の当たりにした。今回、国会でおきた事実は忘れる訳にはいかない。

問題は選挙というものが、制度の不備から、おかしなことになっているということになる。小選挙区制というものが、自民党を一辺倒のものに変質させ、議員がまるで個性を失い、自民党の社員化してしまった。。死に票という形で、大切な民意が埋もれることになった。この法案の審議過程で、3つのことが浮かび上がった。政府に反対する報道機関はつぶしてしまえという自民党の議員の暴言である。そんな議員でも自民党では、厳重注意で済ましているので、注意された後からでも、相変わらず報道批判を繰り返している。次に自民党の推薦した憲法学者が違憲を主張した。つまり、安倍氏の言う安全保障論を間違えとは考えていない人たちの多くのひとが、憲法改定が先だということを主張したのだ。こんな無理をしてゆがんだ法律を作れば、肝心の憲法改定ができなくなるという考えである。それは、右翼系の人からも安倍批判として表面化してきた。

アメリカの圧力をどう考えるかである。アメリカは安倍氏を日本の軍国主義者として、要注意人物と判断している節がある。靖国神社に参拝した中曽根氏、小泉氏が、アメリカの議会演説がさせてもらえなかったにもかかわらず、さらに靖国支持者と目された安倍氏を議会演説させ、アメリカへの忠誠を誓わせ、TPPの推進や軍事同盟の強化法を約束させられた。なぜ日本の保守はアメリカ依存になるかである。本来であれば、軍国主義者は自主独立路線で、反アメリカになるはずである。ところが、アメリカ隷属政権が、日本を軍国化させようとする政権なのだから、この矛盾は今後どこかで豹変するのかどうか。大いに注目しておかなければならない点ではないかと思われる。今回の法案に対して、河野太郎氏まで、説明が分かりにくい。たぶんこれが今の自民党の一辺倒化の姿だ。国連で承認されているということが、日本国憲法の上位に来るという説明ではおかしい

いずれにしろ、この流れで安保法案は成立してしまうかもしれない。それでもこうした安倍政権の卑劣な、反民主主義、反立憲主義の本質だけは、忘れないことである。そして次の選挙では、自民と公明には投票しないことである。アベノミクスなど考えないことだ。選挙になると、必ず景気を良くした安倍などというだろうが、次の選挙は今回の暴挙を忘れさせないための選挙にしなければ、日本の政治はおかしくなる。間違ったことを行えば、次の選挙で敗北するという痛い目に合わない限り、いよいよ安倍政権が軍国化の道を駈けのぼることになる。こうしたひどい経験を繰り返しながら、しっかりした野党が育つことを期待するしかない。民主党に政権能力がなかったことが、こんな事態を招いたということを民主党は心底反省すべきだ。そして、前原氏の一派などは、アメリカ隷属意識が強い。安保法案に大賛成に違いないからだ。

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