現実主義と憲法
いよいよ安全保障法制が衆議院で採決されようとしている。安倍氏の分かりやすいビデオレターを希望したら、ネット動画を配信してくれた。これが何と、安倍ちゃんと、やくざっぽい麻生君が、喧嘩に巻き込まれる話で、いよいよ意味不明のたとえ話で、一つも分かり易くない。分かり易く国会で議論をするということだったが、議論を聞けば聞くほど、この法律が分かり易く憲法違反だということが見えてきた。90時間の議論をしたから、通過儀礼はすんだというのが、安倍政権の決まり切った考えである。一体国会の論議とは何なのだろう。だいぶ国会の討議は聞いたが、政府の説明で納得した人は少ないのではないか。聞けば聞くほど、無理な法案だということが見えただけだった。これは私が初めから反対の人間ということもあるのだろうが、自民党支持者ですら疑問を感じた人が増えたと思うがどうなんだろう。憲法違反ではあるが、現実を考えれば仕方がないだろうというのが、自民党系の人の見方の気がする。公明党の人と話したが、憲法違反ではないと信仰していたのでびっくりした。
憲法学者の98%が憲法違反だと言っているのだから、当たり前に解釈すれば無理な法律なのだ。それでもあえてやろうという原因が、憲法改定は当面難しいと考えているからというのだから、ずいぶんひど話ではないか。日本にいまだ進駐軍の司令官がどこかに駐留しているのだろうか。確かに、民主主義では最終的には多数決で決めるしかないから、自民党に投票した。あるいは公明党に投票したという人に、今後の安全保障に対しては責任を持ってもらうしかない。確かに私でも、日本がすぐにでも戦争に巻き込まれるということはないと考える。しかし、日本が完全に中立性を失うということで、様々な影響は出てくる。テロのリスクは明らかに高まる。企業スパイ行為も増加する。サイバー攻撃も頻繁になるのではないか。マイナンバー制度の漏えいなど大丈夫なのだろうか。そういうところらか、破壊しようとするのが、現代の戦争である。今回のアメリカとの軍事同盟の強化は、そのねらわれる国に、日本が名乗りを上げたということになるのだろう。
確かに日本の安全保障は中途半端で、それなりの軍事力があるが、完全ではない。当たり前のことで軍備に完全などない。事故のない原発などあり得ないのと同じことだ。その完全ではないところを強調すれば、アメリカとの同盟強化ということで安心したいということになるのだろう。しかし、アメリカも中国も外国には変わりがない。文化も違えば方向も違う。なぜアメリカならいいのかが私には耐えがたいところだ。大東亜共栄圏とアジア主義を掲げたのは何だったのかと思う。こういう意見はむしろ右翼から出るはずのところなのだが、日本の右翼は旗を掲げない、現実主義というか、政府主義のようで、権威主義ということなのか。お上の言うことはおおむね正しいと考えている人が、軍国的傾向の人に多いい理由が不思議でならない。そうじゃないか、現実主義者は、現金主義者なのか。
安全保障を考えるときに、現実をみるのはいい。しかし、わざわざ現実の緊張感を高めている、政府の行為も考えてみなければならない。つまり、現政権は中国との緊張感をわざわざ高めている。尖閣もそうであるし、70年談話もそうである。中国が日本を攻めてきて、離島の一つも取られれば、目が覚めるであろうなどと、発言する国会議員すらいるのだ。国会議員のそうした、現実離れした発言が、緊張感を高める。こうした積み重ねで、日中関係の現実を変えたのだ。すべては、憲法改定を考えているからだ。国民の目を覚まさなければならないと考えているのだ。今のアジアの緊張の高まりは、中国の拡張主義だけではない。それに対する日本の態度も関係している。日本が韓国のような対応をしていれば、また違うだろう。もちろん、それも嫌だが。今の状況は作られた現実である。